1000億円の損害賠償

「想像を絶する価値観の時代に突入。そして、その恐怖。」

クリスマスシーズンを目前とした2022年12月13日、SONPOホールディングスに激震が走った。我が耳を疑うとはこの事か！突然として米国から飛び込んで来たのは訴状だった。訴状によるとSONPOホールディングスが所有するゴッホの「ひまわり」の返還を請求する、または、時価総額1,000億円の賠償請求をしますよと言う喉元に剣を突き付けて来たのだ。青天の霹靂とはまさにこの事かと思える事件だ。

1987年SONPOホールディングスの前身の安田火災海上がバブルの最中に当時の価格で50億円超えで落札し購入した絵画だ。その後、この「ひまわり」は贋作の疑いも掛けられたが、研究調査で本物との鑑定を得た。今回の突然の提訴は、「ひまわり」が本物であるのであれば、元の所有者に返還するべきだと、元の所有者から返還請求が届いたのだ。米国司法制度は日本と異なるので、今回の訴訟で、日本で言う印紙税をどれだけ必要なのかは不知だが、それなりのリスクを掛けてSONPOホールディングスを提訴したに違いない。

これは仏国マクロン大統領による略奪品の返還表明に端を発しているに違いない。EU国内の美術館の展示物は過去の略奪品のオンパレードだと英国のジャーナリストが記事にしているが、正にその通りだ。アフリカや東アジアの国々から略奪した逸品の展示でしかない。筆者は、1988年に、ワシントンのペリー提督の直系子孫の自宅を訪ねた事がある。代々の子孫は自宅への取材は一切断ってきたそうで、日本人を招くのは初めてだと話していた。その前日、旧知のNHKワシントン支局員から是非とも同行させて欲しいとの連絡を受け、一緒に自宅を訪ねた。驚いたのは自宅に飾られる日本の逸品の数々だった。ペリー提督の子孫は私に「これらは全て、時の政府からの貢ぎ物です」と説明してくれたのが印象に残っているが、略奪に近かったのではないかと思った。

今、時代は大きな価値観の変化の最中にいる。過去では、信じれられないような判断基準が横行する。現在、日本の医療過誤の賠償支払い金額平均は400万円以下だ。米国の10分の1、100分の1だ。ゴッホの返還請求の話ではないが、日本の医学医療界にも世界の潮流が押し寄せ、高額な賠償請求が常態化する事を危惧する。日本は全て米国の10年遅れで動いている上に、世界の価値観が大きく変化した結果、弱者と言われた面々に光があたりパワーを得た。高額な医療訴訟で利益を得るのは弁護士と印紙税を受ける国庫だ。急激な時代の変化は過去の判断基準や価値観を変えた。医学医療界はある日、突然として10年前の医療について患者から医療過誤の提訴を受ける可能性も否定出来ない。医学医療界にとって初めて遭遇する事案が増えそうだ。

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