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「第3号被保険者制度」に縮小の動き

「第3号被保険者制度」に縮小の動き

社会保険を個人単位に見直し、扶養優遇を縮小

社会保険を世帯単位から個人単位に見直す——。社会保障制度に詳しくない人が聞いてもピンと来ないかも知れないが、政府・与党内で密かにこうした検討作業が始まっている。端的に言えば、社会保障制度に於ける被扶養者の優遇策を縮小する事に他ならない。推進役となっているのは勿論財務省だが、厚生労働省でも理解を示す向きも有る。其処に新たに登場したのが、昨年秋に連立与党入りした日本維新の会だ。

 「共働き世帯の増加など家族構成や働き方の多様化に適合した、働き方に中立的且つ公平な社会保↘障制度を早期に構築する。この為、第3号被保険者(3号)に係る実態調査を実施し、その結果を勘案しつつ、第3号被保険者制度の縮小に向け、マルチワーカーへの対応等を含めた短時間労働者等への被用者保険の適用拡大や第3号被保険者制度の見直しの加速化について、働き方に対する中立性と公平性の観点から、早急に、検討を進め、2026年末迄に結論を得る」

 今年6月25日に行われた自民党と維新による社会保障制度改革を巡る実務者協議で、維新側が政府、自民に突き付けた要求だ。端的に説明すれば、維↘新は公的年金制度の3号の実態を調査し、制度の縮小に向けた改革等について年末迄に結論を急ぐ様要求したと捉えられよう。この協議は昨年秋に交わされた連立政権合意書に基づき、社会保障制度改革等の各項目について自民と維新で協議するものだ。概算要求を控える夏に一定の方向性を示すべく、当時は詰めの協議を行っていた。

国民年金の第3号被保険者とは

 改めて制度を説明する。3号は年金保険料を納めずとも国民年金(基礎年金)が貰える制度で、20歳↖以上60歳未満の人で会社員や公務員の扶養に入り、年収が原則130万円未満なら加入出来る。専業主婦の年金加入は元々任意で、一部の専業主婦が老後に無年金に陥ってしまうという問題が発生した為、その対策として1985年に創設されたものだ。「男は外で働き、女が家庭を守る」という時代を反映した制度で、ピーク時の95年には約1220万人が加入していた。

 只、共働き世帯の増加に伴って徐々に減っていき、昨年6月末時点の加入者は約630万人と凡そ半減している。維新には改革志向の若手国会議員が多く、こうした時代的な背景が維新の改革マインドを刺激している。勿論、こうした姿勢に乗じて財務省が維新を踊らせている。6月の要求はマイルドに抑えられているが、維新の本音は財務省と同様に3号の廃止に在る。連立を組む前の昨年6月に参院選向けに公表した政党公約には「段階的な廃止」を打ち出しているからだ。

 これに対し、自民党や厚労省は慎重な立場だ。3号の見直しに全面的に反対している訳ではないが、廃止せずに徐々に縮小させていきたい考えだ。昨年に成立した公的年金制度改革法では、パート労働者ら向けに社会保険の加入が義務付けられる106万円以上の年収要件を撤廃。これが適用される企業規模要件も2035年10月迄に段階的に廃止する方針を盛り込んだ。老後に厚生年金が受け取れる事で所得保障が手厚くなり、公的な医療保障も充実する。こうした内容を喧伝することで、専業主婦を徐々に働かせて、3号から移させる狙いが有る。

 只、厚労省幹部は「廃止という点では一致出来ないが、縮小する方向性については概ね一致している。3号の加入者を少なくしていく方向には変わりは無い」と述べる。

 7月に自民と維新の内容実務者が纏めた社会保障改革の骨子では、「共働き世帯の増加など家族構成や働き方の多様化に適合した、働き方に中立的かつ公平な社会保障制度を早期に構築する。このため、第3号被保険者制度については、その縮小に向け、マルチワーカーへの対応等を含めた短時間労働者等への被用者保険適用拡大を早期に進展させるとともに、第3号被保険者に係る実態調査を実施し、令和8年度中にその結果をとりまとめ、課題の整理を行う。同整理及びそれに関する具体的施策の企画立案等のため、第3号被保険者制度に関する検討会を令和8年夏頃を目途に立ち上げ、政策を推進する」と、維新の要求よりやや後退した様な書きぶりに落ち着いた。特に、改革の時間軸は大幅にずれ込んだが、公的年金制度は5年に1回のサイクルで法改正しており、次は30年が1つの目途になる。維新はこのサイクルを見直す様求めていたが、この点は現状維持となり、合意は容易では無かったものの、改革の方向性についてはさほどずれていない。

連合と経団連も廃止や見直しに賛同

維新よりも慎重ではあるものの、厚労省には突っぱねられない事情が有る。日本労働組合総連合会(連合)や日本経済団体連合会(経団連)も3号については廃止や大幅な見直しを求めているからだ。連合も3号の将来的な廃止を求め、代替案まで提示している。そこで厚労省内で検討の遡上に上がっているのが、所得制限案や育児・介護をしている人の除外案だ。

 所得制限とは、3号を含む世帯の年収が一定以上ならば1号に移したり、保険料を納めて貰ったりしようという内容だ。維新は嘗て世帯年収が3000万円以上ならば除外する案を公表。連合は「年収850万円未満又は所得が655万円5000円未満」とした。このラインの線引き次第で影響は大きくなる。厚労省幹部は「所得制限も1つの案かも知れない。只、線引きを何処にするかは相当悩ましい」とこぼす。

 一方で、育児や介護など様々な事情で働けない人を除外する案は一見公平そうに見える。只、育児の定義や介護はどのレベルに線引きするのか等、こちらも難しい線引きが待っている。これらの人のセーフティーネットになっている側面も有る事から、線引きから漏れると影響は甚大だ。先述の幹部は「線引きはこちらの方が難しいかも知れない」と声を潜める。

 只、何らかの見直しは迫られている様な状況の為、年度いっぱい掛けて3号の実態調査に乗り出す方針だ。性別や年齢、居住地域、収入、公的年金の加入状況、現在の働き方を選んだ理由等の本人情報に加え、配偶者の就業状況、収入、親や子供の年齢、数、見守りの必要性等も調べる。具体的な検討は来年度以降に始まりそうだ。

健康保険の被扶養者制度にも見直しの機運

 3号程ではないが、見直しの機運が出始めているのが、健康保険の被扶養者制度だ。健康保険に入るサラリーマンや公務員の配偶者や子供、親等が対象だが、保険料を負担しなくても2〜3割負担で公的医療保険のサービスを受けられる。年収130万円未満という条件が付いているが、被扶養者を含めた加入者は2800万人に上る。自営業者等の配偶者や子供等は入れない為、常に不公平だとの批判が付きまとう。

 見直しに向けた口火を切ったのは、財務省の財政制度等審議会だ。4月に「家族形態や働き方の変化など時代に合わせて、被扶養者の在り方についても見直しを検討すべきだ」等と提案した。その後、3号ほど具体的な検討は進んでいないが、厚労省内でも同調する意見も出始めており、或る幹部は「見直すなら配偶者から保険料を取る制度もあり得る」と漏らす。

 被扶養者制度についても3号と同様に様々な見直し案が考えられる。「少子化対策に逆行しない様に子供は被扶養に残した方が良い」との意見も根強い。年金制度の様に見直しのサイクルが無いが、負担が重くなり過ぎる為、セットでの見直しは無さそうだ。

 時代の変化に合わせて社会保障制度も変化する。社会保険の個人単位化は、それを体現したものだ。多くの人に影響する為、改革の行方を注視したいところだ。

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