
「全力で空振り出来る社会」にしなければイノベーションは生まれない——こう語るのは、衆議院議員で元法務大臣の鈴木馨祐氏だ。20代で財務省を辞し、28歳で衆院初当選。47歳で第2次石破内閣の法務大臣として初入閣した。人口減少や国際秩序の変化、産業構造の転換が進む日本が国際社会に於いて不可欠な存在で有り続け、持続的な成長を実現する為には何が必要なのか。政治家を志した原点から、外国人政策、安全保障、社会保障制度改革、そして次世代のイノベーションに至る迄、忌憚無く聞いた。
——20代で財務省を辞し政治の世界へ進んだ決断と、現在の政治家としての姿勢についてお聞かせ下さい。
鈴木 東京大学に在籍中はボート競技に打ち込み、練習漬けの毎日でした。大学卒業後は大蔵省(現財務省)に入省しましたが、政治の道を志すきっかけの1つになったのは、米国滞在中に遭遇した2001年の「9・11同時多発テロ」です。丁度、ジョージタウン大学外交大学院フェローとして6月からペンタゴン付近に住んでいた時期で、正に現場に近い場所でテロの衝撃を経験しました。その際、経済や財政といったものは「日常の継続」と「安全保障」という土台があって初めて成り立つものだと痛感し、政治の世界に進む事を考える様になったのです。官僚を辞める際は誰にも相談せず、自ら決断して辞表を出しました。元々政治家一家でもなく、最初から政治家を目指していた訳ではありません。官僚として仕事をする中で、政治という選択肢が必然的に生まれた、というのが率直なところです。私の信条は「変える事こそが政治」です。国民一人ひとりの力を信じ、時代に合わせた変化を創り出し続ける事が大切だと考えています。
独自の社会統合モデルで「秩序有る共生社会」へ
——元法務大臣として外国人政策にも取り組まれました。人口減少が進む中、今後の外国人受け入れをどの様に考えていますか。
鈴木 日本の人口減少と少子高齢化は想像以上のスピードで進んでいます。出生数は予想より15年早く70万人を割り込み、67万人台まで落ち込みました。将来に亘って活力の有る強い日本を維持する為には、海外の優秀な人材を日本に取り込み、力を発揮して貰う事も重要です。しかし、十分な制度設計を伴わないままの受け入れ拡大には慎重でなければなりません。足元のペースが続けば、40年頃に外国人比率が10%を超える可能性が指摘されています。ヨーロッパの事例でも、社会の許容度を超えた急速な受け入れは地域との融和を難しくし、治安への懸念や文化的摩擦を生じさせます。実際、外国人を巡る問題は、他国に於いても、ともすれば論理より感情で受け取られ易く分断を生み易いという現実が有ります。だからこそ、国民の不安や不満を直視し、政府が受け入れの「ペース」と「量」をマネジメントする必要が有ります。外国人は、労働力であると同時に、地域社会で日本人と共に暮らす「生活者」でもあります。日本語教育や生活ルールの周知を徹底し、地域社会に定着して貰う為の「社会統合」が不可欠です。
——そうした考えの下で、日本独自の外国人受け入れモデルをどの様に構築していくのでしょうか。
鈴木 受け入れのペースや社会との調和を踏まえ、日本に合った受け入れの形を構築する必要が有ります。日本は、移民政策を採り、広く扉を開くのではなく、特定技能制度や新設する「育成就労制度」を始め、能力や日本語力、地域社会との関わり等も踏まえ、日本に合った社会統合モデルを深化させていかなければなりません。大前提は、国民の「安全・安心の確保」です。その為、法務大臣在任中に「不法滞在者ゼロプラン」を推進し、長期ビジョンを作成すると共に、短期滞在を偽った不法就労を防ぐ事前審査「JESTA(日本版事前渡航認証システム)」についても28年度中の導入を決めました。法令を守らない者には毅然と対応し、日本国民と適法な外国人が共に安心して暮らせる「秩序有る共生社会」を実現する事が重要です。



LEAVE A REPLY