
豊富なアートで育む「あたたかな医療」
272 組合立諏訪中央病院(長野県茅野市)
八ヶ岳連峰等の山々に囲まれた諏訪盆地の中央に位置する茅野市は、古くから交通の要衝だった。この地に「ちの町国保直営諏訪中央病院」が開設されたのは、終戦から間もない1950年。その後、近隣自治体が共同で運営する組合立病院となり、「あたたかな急性期病院」を掲げながら、住民が安心して暮らせる地域づくりに貢献してきた。現在は高齢者施設や看護専門学校も経営している。
同院では、86年に病院が新築移転した時から絵画等の作品展示による患者や家族の癒やしに取り組んでおり、2002年には第1回「癒しと安らぎの環境賞」で病院部門最優秀賞を受賞した。地域の住民や患者、家族らから寄せられた200点を超える芸術作品を収蔵し、その一部を院内に展示している。
絵画は100号を超える力作も多く、1階総合受付カウンターの後方の壁一面には、蓼科高原にアトリエを構えていた洋画家の中尾彰、妻の吉浦摩耶の両氏により1993年に寄贈されたパステル調の壁画「高原の楽しき日」が飾られている。500号の大作で、清々しい初夏の高原に人々が集う様子が描かれている。
他にも、地元彫刻家の作品や版画、書、陶芸、刺繍、写真といった様々な作品が継続して展示され、訪れた人の目を楽しませると共に、来院者に癒やしと安らぎを与えている。
又、中庭に在るハーブガーデンも、98年の増改築を機に地元のハーバリストの萩尾エリ子さんを中心としたボランティアの手で整備された。30年近く経った今も継続する活動によって育てられた草花が訪れた人達を出迎え、患者や市民、医療スタッフの憩いの場となっている。他にもコンサートや病院祭等のイベントを開催して、地域に開かれた病院を運営し続けてきた。
そうした病院の理念を揺るがしたのが、2020年の新型コロナウイルス感染症の流行だった。非常事態が宣言され、人々は外出を控える一方、病院は治療や感染予防対策に追われ、病院と住民の交流も途絶えた。
こうして薄れてしまった地域との絆を再び繋ごうと考えたのが参加型のホスピタルアート。病院スタッフや患者、住民が協力して壁画を制作する事になった。
制作は22年12月から始まり、協力を依頼したイベント会社と共に座談会を開いてテーマや制作物を決定した。パーツとなる花や蝶、昆虫のステッカーに自由な色が塗られ、実際の壁の絵の中に重ね貼りをするワークショップを実施。地元住民や患者、病院スタッフ合わせて約110人が作品制作に参加し、翌年3月に完成した。デジタル化した上で大型ウォールステッカーにして、1階レントゲン・CT室前の壁に掲出。以前の外来フロアは照明が暗く不安を感じ易いという問題が有ったが、色とりどりの花が咲き誇る作品によって温もりが感じられる場所となり、診察・検査前の患者や家族の気持ちを和らげている。
人々の安寧と平穏を願うアートへの思いは、「やさしく、あたたかい、たしかな医療」を目指す理念と共に息づき、院内に溢れている。



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