SHUCHU PUBLISHING

病院経営者のための会員制情報紙/集中出版株式会社

未来の会

【「集中」の是々非々 ㊷ 】

【「集中」の是々非々 ㊷ 】

【日本の国際社会から乖離の一例】

「お役所仕事の典型の一例」

「お役所仕事」を久し振りに経験した。弊社の関係会社を英国で法人登記するにあたり必要書類を用意する事になった。その一つに法人代表者の日本での住所証明書と書かれていた。ここから弊社の迷走が始まった。直ぐさま、英文の住民証明書を準備するために住居地の管轄である東京都港区役所に「英文の住民証明書が欲しい」と問い合わせた。区役所からの回答は、英文の住民票は発行していないと言う。瞬間、意味が分からなかった。今の時代に住民票の英語版が存在しないと知り唖然呆然とした。港区役所から、外務省に問合せをせよとのアドバイスを頂き、外務省に問合せをした。窓口は「外務省領事局領事サービスセンター・証明班」だった。コロナ渦で郵送のみ受け付けるとの事。政府はコロナ後の生活に入るよう繰り返しアナウンスしているが、外務省ではコロナ禍を継続していた。そこで英文の証明書を発行して頂きたいと住民票を郵送したが、その考えも甘かった。何故ならば、外務省でも英文の証明書は発行していないと言う。彼等の仕事は、その書類が確かに日本の公的機関から認証されて発行された公文書であることを証明する付箋に外務省の印鑑を押すだけ。港区役所が発行する住民票が正しいと二重の証明を求める人がいるのか?英文の証明書を求めている事に対する解決には全くならない。鎖国時代の役所のやり方が未だに継承されていた。

日本がエコノミックアニマルと言われた時代、日本経済が世界を席巻し、多くのビジネスマンが海外に出向き外貨を稼いでいた。そんな時代、山ほどの英文の証明書が求められていたはずだし、必要だったに違いない。そんな時代を経ても未だに英文の証明書を発行しない事は驚きの一語だ。ついに悪戦苦闘の中で知った事は、日本には英文の住所証明書という公的文書は存在しない事だった。やっとの事で解決方法を知り当てた。それは住民票の英語版を自分で作れと言う。作成した私文書を、住民票と一緒に公証役場へ持参せよと言う。公証人はその英文の私文書を確認し、この私文書に記載された住所は住民票に記載されている内容と一致している事を証明するという認証を発行してくれる。これを海外で住民票の変わりとして使用せよと言う。公証役場に出向き、書類を提出するとあっという間に認証を発行してくれた。滞在時間は10分ほどだった。その認証はAPOSTILLEと言うのだが、証書には英文の住所記載は一切無い。自分で作成した私文書にある英語表記だけだ。実に不思議な書類が存在していた。

今回の件で一番の問題点は公文書の翻訳を自分でやれと言う事だ。複雑な公文書となれば、その翻訳だけでも大変な作業になる。その翻訳の間違いを公証役場なり外務省が指摘してくれるとは思えない。
日本企業が海外進出を行う際のサポート体制が不十分であり、海外が求める公的書面を自らが作成しなければならないのかと日本のお役所の構造を嘆かわしく感じた、日本沈没の一因が見えた様に感じる弊社での出来事だった。

今、アジアや中東で日本の医療ベンチャー企業を求めているが、立候補するベンチャー企業が殆どいない。こんな所にもその一因があるのかと考えた。

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