
自然とアートが彩る「いのち」の空間
277 東京都立府中療育センター(東京都府中市)
豊かな自然環境に囲まれた多摩メディカルキャンパス内に位置する東京都立府中療育センターは、重症心身障害児の療育を担う施設として1968年に開設、2020年6月に同じメディカルキャンパス内の旧府中病院跡地に移転・新築した。移転に伴い重症心身障害児、肢体不自由児等の外来を担っていた多摩療育園と統合し、都内最大規模の総合療育施設となった。
地上3階建ての建物は、「利用者の視点に立った施設づくり」という理念の下、障害の有る人達とその家族、支援する職員の誰もが安心して過ごせる様に施設全体をデザインした。アースカラーを基調とした外観は、隣接する武蔵台公園の豊かな緑と調和し、周囲の景観に溶け込んでおり、穏やかな存在感を生み出している。
館内は、「いのちの森」をテーマにしたアートワークを導入。エントランスや共用部には、樹木や動植物をモチーフに、生命の繋がりや成長を表現したアートが随所に配され、利用者や来訪者を温かく迎え入れる。訪れる人に無機質な印象を与えず、施設自体が安らぎの空間をもたらす設えとなっている。
「さくら」「わかば」「もみじ」「ぎんが」と名付けられた4つの病棟は、それぞれテーマに沿った色彩やデザインで特色を持たせている。病室や待合空間の内装には多摩産スギ・ヒノキを活用。四季の変化や木の温もりを取り入れる事で、療育の場であると同時に、利用者一人ひとりの生活を大切にする「暮らしの場」を実現している。
又、外来では、窓口を駅に、通路を鉄道路線に見立て、壁面に線路のモチーフを施した。診察に訪れる利用者や家族が、遊び心の有る空間で過ごせる様工夫が施されている。加えて、通園エリアには専用庭を設け、利用者が身近に自然と触れ合える環境を整えている。
防災と生活の質を両立した建築計画も大きな特長だ。病棟を取り囲む様に設置されたバルコニーは、避難スペースとして機能すると共に、日常では散歩や憩いの場として活用されている。安全性を確保しながら、利用者が外気や緑に触れる事が出来る貴重な生活空間となっている。
こうした施設のアートワークに加え、日々の活動から生まれた作品も館内を彩る。職員が製作した木の飾りに利用者や来訪者が花や葉等を足して完成させる作品や、地域のボランティアが提供したタペストリー等、手作りの作品が随所に展示されている。更に、利用者の家族が診察や来所の際に一緒に参加出来る遊具も数多く用意されており、多くの人達を楽しませている。この他、秋には利用者も参加出来るゲームコーナー等が並ぶセンター祭もこれ迄に17回開催、地域の人達も加わって盛り上がりを見せている。
建築とアートによる心地良い環境に、職員や地域の人々による手作りの作品やイベントが彩りを添え、利用者一人ひとりの「その人らしい生活を支える」という療育の理念を支えている。同センターは今後も、利用者や家族、支援者が楽しく安心して過ごせる環境を通じ、これからの福祉の在り方を示す施設として存在し続けていく。
































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