
随所に在るアートが親子を見守る
275 大阪母子医療センター(大阪府和泉市)
大阪府南部の丘陵地に整備された泉北ニュータウンに、周産期医療の専門的な基幹施設として大阪府立母子保健総合医療センター(当時)が開設されたのは1981年。その後2006年に大阪府立病院機構に運営主体が変わり、17年には大阪母子医療センターに改称する等の変遷は有ったが、45年に亘り府内の周産期・小児医療と疾病研究の中核を担い続けている。
センターでは04年からホスピタルアートの取り組みを開始。ホスピタルアートの普及に取り組む近畿大学文芸学部教授の森口ゆたか氏が、非常勤講師を務める京都造形芸術大学(現京都芸術大学)の学生に参加を呼び掛けた。
数多くの子供が治療や検査の為に訪れるものの、当時の院内には子供の目を楽しませる様な絵画等が無く、大人向けの絵画が有るだけだった。そこで、様々な検査や手術等を受ける子供達の気持ちを少しでも和ませ、不安が取り除かれる様にと、子供向けのアートを取り入れる事にした。
最初の試みでは、学生ら27人の参加者が院内を見学し、センターの要望も聞きながら制作内容を検討。4期に分けて、廊下や処置室、病棟等の壁や天井に絵やオブジェ等の作品を取り入れた。
この内、2階に在る手術室へ向かう廊下の壁には「森」をテーマにした絵を描いた。絵本の様にストーリー性の有る絵が続いており、手術を前に不安を抱く子供や家族の気持ちを和らげているだけでなく、実習生や見学者にも好評を得ている。又、出産前後の母親らが入院する母性病棟にも「夢の扉」等をテーマにした壁画を設置した。
加えて、外来から検査室へ向かう廊下には星やプレゼントを積んだトロッコが描かれている他、診療科や検査室等の案内板にはキリンやゾウなど可愛らしい動物のイラストが掲げられ、小さな子供でも場所を覚えやすい様工夫されている。大型の検査機器にも、動物を象ったペイントを施した。
又、センター内でのボランティア活動も盛んで、10代から70代までのメンバーが、子供達の遊び相手になったりイベントを手掛けたりする他、季節毎に手作りの作品を壁面に飾る活動も行っている。
センターは長期に亘って通院する子供が多く、親子共々各季節の作品や行事を楽しみにしているという。1階アトリウムには、センターのキャラクター「モコニャン」が微笑むオブジェの下に、季節に合わせボランティアが制作した作品を装飾するスペースが備わり、見る人達を楽しませている。
加えて、小児外来の壁面も季節毎のモチーフで彩られる。春には桜の装飾が飾られ、桜の後は鯉のぼりに入れ替わり、各装飾を背景に子供の成長を祝い記念撮影が行われる。こうして、屋内の展示作品から季節や時間の移ろいが感じられる様になっている。
センターでは現在、建て替え計画を進めている。全国トップクラスの周産期・小児の高度医療、研究機関を目指して整備される他、これ迄と同様に子供達が不安無く治療を受けられる様、ホスピタルアートの理念や作品は継承する事で進められている。



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