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未来の会

【「集中」の是々非々 ㉟ 】

【「集中」の是々非々 ㉟ 】

「東京工業大学と日本医科歯科大学の統合協議開始」

【生き残りを懸けた統合が成功する事を期待したい】

東京工業大学と東京医科歯科大学が統合するための協議を開始したニュースは海外でもちょっとした話題になったようだ。複数の海外の教育研究所などから弊社への問合せが入った。東京工業大学は理学部や工学部を持ち、一方の東京医科歯科大学は医科と歯科を持ち、両大学は日本を代表する国立大学だが、共に近未来の経営に不安を抱えている。それはどこの大学でも同じで、この2校がより積極的に動いていると言う事だ。今の大学経営者には計り知れないほどの危機感がある。それは日本の少子化問題だ。この問題が解決する事はない。この少子化問題は近い将来、あっと言う間に大学経営を直撃する。先進国の中で、カナダは移民政策で人口を増加させている唯一の国かと思うが、日本で移民政策の導入を強く推進するには無理がある。この少子化問題は津波のように日本の政治や経済に襲い掛かる。複数の地方の町は消えて行くか、それこそ統廃合で生き残るしか道はない。大学も同様だ。いずれ日本の大学は統計的に見れば全入になる。入学試験で学生を振るい落とす時代は終わり、大学側からお願いをして高校の進学指導で1人でも多くの生徒を廻して貰う、そうした時代は目前だ。大学の経営問題解決のカギは高校側に握られる。高校側から見て、魅力有る大学の条件は当然ながら医学部があるか否かだ。やはり医学部はいつでも一番魅力的なのだ。

日本の大学の収入は学生の受験料と学費の2つしかない。「日本の」と書いたのは海外の有名大学には巨額の寄付金収入と企業からの研究費収入があるからだ。ハーバード大学は毎年4000億円を超える寄付金収入が計上され、数兆円の基金を持ち運用専門の部署がある。経営は盤石だ。驚く事にケンブリッジ大学も2015年に、何と小学校を併設した。この小学生が卒業する頃には、彼らを受け皿とするケンブリッジ大学の中学校もオープンする。この開かれた新しい教育改革に、時のメイ首相から絶賛の言葉を受けた。

閑話休題。

日本の大学でも例外はある。医学部を持つ大学だ。学費収入と授業料収入以外に医学部附属病院の医療収入がある。この収入が経営には大きい。

東京工業大学は理工系のトップでありながら、医学部を持たない事で危機感は強い。

今、振り返れば笑い話のような事実がある。2000年頃、国立大学の一橋大学・東京外語大学・東京芸術大学と今回の東京工業大学と東京医科歯科大学の5大学による大同合併話は有った。真剣な話し合いもあったようだが、まだ少子化問題も現実味を帯びてはいない時でもあり、今ほどの危機感が無く、その話は自然と消えた。

しかし、今回の両大学の経営統合は真剣度が違う。時代背景も雲泥の差がある。生き残るために最高の方法なのかも知れない。早稲田大学も医学部を持つ事を悲願としているが道のりは遠い。その実現に向けた第一歩として東京女医科大学との医工連携をしたものの東京女子医科大学がトラブル続きで残念ながら苦戦中だ。

文科省の高等教育局長OBは「日本の中で生き残るためにはアジアの富裕層にも目を向けなければならない。海外の優秀な生徒を如何に取り込むかが必要となる。医学部というだけでは不十分で如何に国際性、開かれた大学であるかが評価の対象になる」と語っていたが、今回の両大学の統合話は、名門大学と言う今までの評価では生き残れない事を実感しているからに違いない。生き残りを懸けた統合が成功し、この後に続く多くの大学の統廃合のお手本になる事を期待したい。

 

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2024年3月8日
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