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未来の会

【「集中」の是々非々 80」】

【「集中」の是々非々 80」】

ハラスメントに時効がないのであれば、医療現場も反撃すべき

「無謀な攻撃は他者の医療の侵害行為」

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日本経済新聞(6月8日付)に「ハラスメントに時効は」という記事が掲載されていた。「過去の被害申告でも不対応はリスク」とある。記事の中で、毎日新聞社が、今年4月に「約10年前に当時取締役から同社社員への不適切な性的接触があった」と公表し、「当時、女性の訴えに適切な対応がなされていなかった」として女性に謝罪したとある。たとえ10年以上前の出来事であっても、被害者が声を上げれば、社会的責任を問われる時代になったという内容である。恐ろしい話ではないか?例えば、10年でも、20年でも、長期間、不祥事を隠蔽し続けて来たとしても、今、告発があれば、謝罪をする必要が生じると言う話だ。近年ではテレビ局、大学、大企業、官公庁など、あらゆる組織で過去のハラスメント事案が掘り起こされている。法を執行する側である検察庁においても、組織内で発生した不祥事の反省を込めて、職場環境改善のためハラスメント実態調査を行うと、平口洋法務大臣が記者会見で述べている。

もはやハラスメントは一部組織の特殊な問題ではなくなった。日本社会全体が抱える構造的課題である。被害者が泣き寝入りを強いられた時代は終わった。しかし、ハラスメント問題を論じる時に忘れてはならないテーマがある。それがカスタマーハラスメントやモンスターペイシェントである。

先日開催した第98回「日本の医療の未来を考える会」の勉強会でも、この問題について専門家を講師に招いて議論した。医療機関で起きている現実は深刻である。

医師や看護師への暴言。執拗な謝罪要求。長時間の居座り。録音や録画による威圧。SNSでの誹謗中傷。そして医療上の必要性を超えた理不尽な要求。こうした行為が日常的に発生している。「攻撃する人は、攻撃しやすい相手しか攻撃しない」これが現実である。理不尽な要求を繰り返す人々は、相手を見ている。例えば、退学処分のある私立の学校には乗り込む親はいない。暴力団の事務所に怒鳴り込む人もいない。しかし、公立学校には怒鳴り込み、役所には何時間も居座り、病院には理不尽な要求を突き付ける。なぜか。反撃されないと知っているからである。医療機関は長年、「患者第一」の名の下に耐え続けてきた。しかし、その結果どうなったか。一部の悪質な患者や家族が、病院は何をしても受け入れてくれる場所だと誤解しているのであれば、これは極めて危険な状況である。

なぜなら、カスハラの被害者は医療従事者だけではないからだ。本当の被害者は他の患者でもある。医師がクレーム対応に1時間拘束されれば、その間に診察を受けられた患者が何人いたか。救急外来で暴言騒ぎが起きれば、その間にどれだけの医療資源が失われるか。看護師が精神的疲弊から退職すれば、その病院で診療を受ける患者全員が影響を受ける。つまり患者や家族によるハラスメントは、他の患者の医療機会を奪う行為なのである。この視点が日本ではあまりにも軽視されている。医療機関は慈善事業ではない。社会インフラである。社会インフラを守るためにはルールが必要だ。

暴力行為を行う者には警察対応。執拗な迷惑行為を行う者には、法的助言を踏まえ、診療継続の可否を判断する必要がある。悪質なケースについては医療機関同士での情報共有も議論されるべき時期に来ている。「患者だから守られる」のではない。「良識ある患者を守るためにルールが必要」なのである。

ハラスメントに時効がない時代になった。それならば医療従事者へのハラスメントについても、社会は同じ熱量で向き合わなければならない。耐えることが美徳だった時代は終わった。毅然と対応することこそが、患者を守り、医療を守り、社会を守ることにつながる。理不尽な要求に対しては、明確に「ノー」と言う。その覚悟を持つ医療機関が増えた時、日本の医療は初めて本当の意味で守られるのではないだろうか。

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