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未来の会

第65回「精神医療ダークサイト」最新事情
駅前の利益優先クリニックを淘汰せよ

第65回「精神医療ダークサイト」最新事情駅前の利益優先クリニックを淘汰せよ
非指定医の精神療法は報酬4割減に

「駅前クリニックは下手な医者が多いですか?」

AIに尋ねるとこんな答えが返ってきた。

「『下手』な医者が多いわけではありませんが、患者数が多いため、1人ひとりの診察時間を短くして回転率を上げる特徴があります」

このAIによると、駅前とそれ以外のクリニックの診察時間は、予約システム会社の診療圏調査や医療経営データなどから推定、比較できるという。診察時間の目安は、駅前クリニックで1〜3分、住宅街のクリニックや専門性の高いクリニックは5〜10分だそうだ。

この比較が乱暴であることは、筆者も受診経験から分かる。だが、ヤブ医者や悪徳経営者が賑やかな駅前に寄って来やすい傾向はありそうだ。実際、質の低いメンタルクリニックが都市部の駅前で増殖する問題が近年生じていた。

銀座泰明クリニック院長の茅野さん(筆者撮影)

このため、厚生労働省は今年度の診療報酬改定で大鉈を振るった。厚労相が指定する国家資格「精神保健指定医」を持たない医師による通院・在宅精神療法の点数を、今年6月から4割減としたのだ。これほど減るとメンタルクリニックを続けられない。

駅前の悪徳メンタルクリニックでは、精神医療の経験がろくにない内科系の若い医者や、初期臨床研修を終えて間もない新米医者を安く雇い、患者を多くさばいて利益を上げていた。「直美」ならぬ「直精」問題を速やかに解消するには、悪徳経営者に金銭的な大ダメージを与える必要があったのだろう。

精神科で働く医師数は約1万9000人(診療科複数回答。主たる診療科では約1万7000人)。精神保健指定医は約1万6500人いるので、第一線の精神科医が次々と廃業する事態にはならない。指定医の資格を持たなくても、精神医療に20年以上従事し、保健所や児童相談所の嘱託医、医療観察法対象者の診察などを行っていると減額されない。勤務先の医療機関が常時対応型の精神科救急医療などを行っている場合も減算にならない。

ただし、発達障害などに詳しい小児科系のメンタルクリニックでは、指定医資格を持たない医師が少なくない。資格を得るには強制入院のケースレポート提出などが必要で、病院の精神科に勤務しないと取得が困難なためだ。

東京都内の小児神経専門医は「『精神科にしてやられた』という怒りの声が身近でも多く上がっている」と指摘する。筆者の取材経験からみても、子どものメンタル不調に対応する小児科医の中には、すぐに薬を出したがる精神科医よりも頼りになる人がいる。悪徳経営者を排除する強硬手段の余波で、有能な医師を追い込むことがあってはならない。

駅前にも頼れるメンタルクリニックはある。銀座泰明クリニック院長の茅野分さんは、東京の有楽町駅前で18年前に開業した。在籍医師全員が精神保健指定医で、21時までの夜間診療や土日の休日診療も続けている。周辺の大企業や官公庁で働く患者だけでなく、新幹線などを使って遠方から通う患者もいる。

茅野さんは「診療報酬の算定では、強制入院や隔離・抑制を指示する精神保健指定医よりも、取得が難しい精神科専門医を評価して欲しい気持ちはありますが、目先の利益ばかりを優先するクリニックが淘汰されるのは良いこと。指定医と専門医、2つとも取得してこその精神科医だと思う」と語る。


ジャーナリスト:佐藤 光展

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