
自民国会議員の8割参加「国力研究会」発足の狙いとは
高市早苗首相を支持する議員連盟「国力研究会」が発足し、自民党国会議員の8割以上が参加する事態となり、話題を呼んでいる。高市首相を支持する山田宏参院議員が設立に向けて水面下で動いていた為、「高市派の結成か」との声も上がる。この巨大議連の狙いは何処に有るのか。
「この研究会では中長期的な視点に立ちつつ、大きな課題をしっかり議論し、国力を増やしていく時に一体何が足りないのか、それを妨げているものは何なのか、それらについて共通の認識を持ちながら、大きな政策、その転換の実現を皆さんとしていきたい」
5月21日に開かれた国力研究会の第1回勉強会で、会長に就任した加藤勝信元官房長官がこの様に強調した。昨年秋の自民党総裁選では、高市首相の有力なライバルだった小泉進次郎防衛相の選対本部長を務めた加藤氏。閣僚にもなれずに政権から干され気味だったが、挨拶の中で「高市総理、政権を支える」と明言した。
加藤氏らの挨拶に続き、昨年4月に赴任したジョージ・エドワード・グラス駐日米国大使が「トランプ大統領・高市首相による日米黄金時代のビジョン」と題した記念講演を行い、初会合は40分程度で閉会した。
不参加者リストも出回る程の挙党一致体制
国力研究会には多くの自民党国会議員が参加し、民放各社が当日昼のニュースで国力研究会が開催される事を盛んに報じる等、大きな注目を集めた。5月末時点で参加者は衆院議員と参院議員の計417人中347人に上り、80%を超える。参加しない議員リストが出回る程で、「踏み絵を踏まされている様だ」(自民若手)との声も漏れた。
会長は加藤氏で、最高顧問には麻生太郎元首相、幹事長に萩生田光一元政調会長、事務総長に木原稔官房長官、事務局長に山田氏が就いた。
発起人は、麻生、加藤、萩生田各氏の他、茂木敏充外相、西村康稔選対委員長、小泉防衛相、小林鷹之政調会長、中曽根弘文元外相、松山政司参院議員会長、有村治子総務会長、山谷えり子元拉致問題担当相の11人に上る。
加えて、厚労関係議員も挙って参加しており、初会合には田村憲久政調会長代行、後藤茂之元厚労相、渡嘉敷奈緒美衆院議員、三ッ林裕巳衆院議員らも顔を見せた。
議連の略称は「JiB」で、これは高市首相が総裁選で語った「ジャパン・イズ・バック」に由来しているという。依然として高水準の内閣支持率を維持する高市首相にあやかろうと、挙党一致体制が構築されたといっても過言ではない。
只、設立迄には紆余曲折があった様だ。5月29日にウェブサイト上で公開された時事通信による山田氏へのインタビュー記事では、2023年11月に国力増強をテーマとした「日本のチカラ研究会」が発足していたが、研究の内容を纏めた書籍が出版されて一旦一区切りになった昨年12月頃に、山田氏が勉強会を継続すべきだと高市首相に進言したという。
山田氏は「特に、憲法改正、皇室典範改正、対中戦略、核抑止の問題等、こういった大きなテーマについて議論する場が自民党の中に少し足りない。大きなテーマについて、高市政権と党の間に、認識のギャップが無い様にしようと話をして、改めて研究会を作る事にした」と、研究会発足の狙いについてこう答えている。
衆院選前に麻生派に加入した山田氏は、麻生氏に研究会発足を相談し、「なるべく広く参加しやすい様にすべきだ」と助言を受けた事も明かしている。
一方で、山田氏がインタビューの中でも明かしているが、木原氏は保守系の議員を集めた議連「創生日本」を作る様なイメージだったらしく、発起人の中でも思惑がずれていたと言えよう。
山田氏は各メディアに首相の了承を得たと伝えているが、高市首相を支えてきた保守系の或る国会議員は別の見方を提示する。
この国会議員は「首相は研究会発足にそこ迄前のめりではない筈だ。少なくとも私はそう感じた。本来は保守系議員を集めてやるべきだが、会の趣旨がよく分からなくなってしまった。選対委員長だった古屋圭司氏は衆院憲法審査会長である事を理由に積極的に参加していないが、それは表向きに過ぎず、参加しないのは麻生派の勢力拡大に過ぎない様に映るからだ」と不満を漏らす。
別の自民党秘書も「次の内閣改造でポストが欲しい人がこぞって参加した為巨大議連となった。悪目立ちしたくない人が入った一方で、猟官運動の一環で参加する議員も多い」と指摘する。
4月に結成された「派閥」メンバーも次々と合流
更に、国力研究会には、「政治とカネ」の問題で解散したにも拘わらず復活の兆しを見せる「派閥」のメンバーらも、続々と加入している。
旧二階派の武田良太元総務相もその1人だ。4月に自らをトップとする「総合安全保障研究会」の初会合を開き、同じく旧二階派の平沢勝栄元復興相ら約20人が参加した。派閥と一線を画すとし、政治団体の届け出は行わないというが、派閥内に選挙対策委員会を設け、選挙応援にも力を入れる。
国力研究会への合流について、武田氏側近の1人は「武田氏は人気の高い高市政権とやり合う気は無い様だ。それと犬猿の仲である麻生氏の好きな様にはさせたくないという意図もある。『派閥』のメンバーを組閣人事等で押し込みたいという思惑もちらついている」と明かし、旧来の派閥的な行動の一環との見方を否定しない。
小林政調会長の後見人を自認する石井準一参院幹事長も、国力研究会へ加入した。4月に「自由民主党参議院クラブ」を設立し、麻生派以外の参院議員に呼び掛け40人超が参加した。政策実現の為には参院の安定的な運営が必要不可欠とし、石井氏は設立した際の記者会見で「高市政権を支えていく」と述べた。こうした背景が合流に結び付いた形だ。
党人事への関与や総裁選での統一行動は否定したが、参院での勢力を拡大する事で、政権への影響力を強めたいとの思惑が透けて見える。国力研究会への参加も「入らない事で悪目立ちしない為」とも囁かれている。
この他、「派閥」復活の動きに関しては、旧茂木派の茂木氏や旧岸田派の岸田文雄元首相も若手議員らとの会合を重ねており、グループ自体は残っている様な形だ。更に、萩生田氏も近しい議員を集めた懇親会を定期的に開いている様だ。実際、昨年秋の総裁選でも旧茂木派や旧岸田派の一部は統一的な行動を取っており、国力研究会にも同様のスタンスで参加しているとみられる。
一方、石破茂前首相や岩屋毅前外相、村上誠一郎前総務相、森山裕前幹事長ら石破政権の中枢にいた人物は皆国力研究会への不参加を表明している。
5月22日配信のデイリー新潮によれば、石破氏は「私みたいな立場でそんなものに関与すべきではないし、関与する気もない。何を目指しているのかも分からない。この国をどうする、というのを本当に真剣に考えるなら話は分かるけど」と心中を明かしている。高市首相とは思想信条が異なり、この政権が続く限り要職に就く事がないメンバーの参加はないとみられる。
国力研究会は初回の会合を終えたものの、その役割自体は未だに見えてこない。関係者の間からは「初会合を開けば役割は終えた」という声が出る一方で、「定期的に政策を勉強するべきだ」という主張も聞こえる。
議連幹部は「今後の事はゆっくり考える」と述べるに留めているが、現状で347人が参加する巨大議連発足という事実は、党内基盤が弱いとされた高市首相の力をまざまざと見せ付けた形になった。
内閣支持率が高い水準を維持し続ける事で求心力を保つ高市首相だが、国力研究会の発足は党内基盤を強化する切っ掛けになりこそすれ、参加する議員の思惑はそれぞれ。党内基盤を盤石にするにはまだまだ時間が掛かりそうだ。



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