
「米国医師はカルテと処方箋の記載に全精力を傾ける」
【米国の訴訟社会では「Micromedex with Watson」は必須の道具】
2017年5月、弊誌はアメリカ・サンディエゴで開催された「全米精神科医学学会」の取材のために渡米した。同時に米国の医療過誤の訴訟社会の実情を取材した。紹介された取材先はニューヨーク市の大手弁護士事務所で、対応してくれたのは在籍8年目の医療担当部門責任者の弁護士だった。見るからにやり手そうな弁護士だったが、彼自身は医師の免許も持つと言う。この弁護士事務所では大手保険会社と契約をしており、十数人の医療担当弁護士が「医療機関が提供した医療の内容を精査する」ために活動をしていた。チーフだという彼は「米国の医療過誤訴訟社会が医療の質を高めている」と胸を張る。立場を代えるとそのようなコメントになるのかと驚いた記憶がある。
取材を総括すると「医師または医療機関は患者へ最高で最適な医療を提供する義務があり、その対価として高額な医療費を得る。最高で最適な医療が患者へ提供されたか否かを調査するのが我々弁護士であり、保険会社へ支払いの許可を出す重い役割を担っている」だった。彼らがNOと言うと医療機関への医療費の支払いがなされないと言う。取材の中で、日本の医療を取り巻く環境は実に緩いと感じた。
医療機関は保険会社からの支払い不可の通知が届くと、それに対して医療法人側の弁護士が反論を行う必要性が生じ、高額な弁護士費用が発生する。その上、高度で最適な医療の提供が出来ていなかった事にもなり、今度は患者側から「医療過誤訴訟」が起きるなどダブル、トリプルで被害を受けることになると言う。
背筋が寒くなる話が現実にアメリカで起きていた。こんな悲劇を防ぐために医療法人側も様々な対策がなされていると言う。それは、高度なチーム医療の構築であり、患者及びその家族とのコミュニケーションの充実であり、担当医への強力なサポート体制であり、医療情報収集方法の限定など実の多くの規則を設けていた。
弊社は、この時の取材で米国IBMの「Micromedex with Watson」が圧倒的な存在だと知った。実に90%を超える医師が医療情報を得る時に「Micromedex with Watson」を使用していると言う。理由は3つあった。1つ目は「日々、最新の情報が更新され、エビデンスのある医療情報しか掲載されていない事」。2つ目は「目の前の患者の状況を入力すると最適な複数の医療方法の提示がある事」で、医師はその情報を基にこれまでの経験を加味して診断を下す事が可能になる。3つ目は「弁護士が医療の質を調査をする際、カルテや処方箋を作成した医師が「Micromedex with Watson」の情報を用いた上で判断したか否かが重要なポイントになる」だ。医療過誤訴訟でもこの点が重要視されていると言う。
この「Micromedex with Watson」のレンタル料はなんと年間で概算1億円(IDは5アクセス・よって一人あたり2000万円)にもなるが、訴訟社会のアメリカでは優先順位の高い必要経費になっていると言う。
弊社はその後「Micromedex with Watson」の日本版を是非とも作りたいと米国IBMを訪問している。日本の医療界が米国のような訴訟社会になる事は望まないが、医師が最新の医療情報を入手するツールを持って欲しいとタフな交渉を続けている。「Micromedex with Watson」導入で、日本において、地方と都市間での医療の質の格差は無くなると考えている。そのためにも一日も早い契約締結が待たれる。
(2021年3月9日)
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