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未来の会

「リベラルな皇室」から「家父長制の皇室」へ

「リベラルな皇室」から「家父長制の皇室」へ

自民・維新の国家主義政権が露骨に画策する戦前回帰

中国が我が国に「新型軍国主義」との批判を浴びせている。核兵器を大量に保有し、米国に対抗する為の軍拡に血道を上げ、「中華民族の偉大な復興」を掲げて周辺国を威圧する覇権主義・権威主義国家に言われる筋合いは無い。日本の防衛力強化は、中国・ロシア・北朝鮮という権威主義国家に囲まれた厳しい安全保障環境故であり、米国や東南アジア等の同盟国・同志国との協力を強化するのも権威主義国家の覇権に対抗する為であり、日本が他国を軍事的に威圧する目的は有していない。

 一方で、今年2月の衆院選で大勝した自民党と日本維新の会の連立政権が、国民より国家を優先するかの様な国家主義的色彩を強めているのは間違いない。そもそも、国民が主権を有する民主主義国家に於いて国民と国家は対立する概念ではない。国民の利益と国家の利益が対立するとすれば、国民の間に大きな利害対立が広がり、国家がその調整に失敗した政情の不安定期か、又は、国家が国民主権を離れた権威主義体制を指向する時だ。

「愛子天皇」待望論を恐れ、人権侵害発言も

 公明党がこの四半世紀の間、旧民主党政権の3年余を除いて自民党と連立を組んできた最大の目的は「政治の安定」だと説明されてきた。その公明党が昨年、自民党の「政治とカネ」問題を理由に連立を解消した結果として誕生したのが自民党と日本維新の会の連立政権である。その連立合意書には「国家観を共有」する事が明記され、①安定的な皇位継承のため男系男子の養子縁組案を第一優先とする皇室典範改正②国旗損壊罪の制定③スパイ防止法の制定等の国家主義的政策がズラリと並んだ。

 これ等の政策が何故、国家主義的と言えるのか。この議論は、正に天皇を元首とする国家主義・軍国主義体制の下、亡国の敗戦に突き進んだ我が国の近代史をどう評価するかに遡る。高市氏等、自民党内の右派や維新の幹部等は、日本の戦争指導者を断罪した「東京裁判史観」を否定する愛国運動団体「日本会議」と連携し、皇室を中心に歴史、文化、伝統を共有してきた民族としての「国柄=国家観」を重視する。

 戦後の新憲法下、国民主権の民主主義体制に移行した中で皇室は「主権の存する日本国民の総意に基づく」象徴天皇制の形で存続したが、皇室を中心とする戦前・戦中の国家観を是とする国家主義者達は其処が気に入らない。天皇を家父長とし、日本民族をその家族とする国家観からは、上皇陛下と今上陛下が象徴天皇として体現してこられた「国民に寄り添う皇室」像は反りが合わない。

 戦後の民主主義憲法下で80年が経過しようとしている。天皇は民族の家父長ではないのだから、何が何でも男性でなければならない訳ではなく、「国民に寄り添う皇室」に生まれ育った愛子様こそが象徴天皇の継承者に相応しいという待望論が出てくるのも理解出来る。それに対し、天皇は民族の家父長でなければならないと考える国家主義者達が危機感を募らせ、自民・維新の連立合意書に「男系男子の養子縁組案を第一優先」と明記されるに至った。

 戦後の皇室は国民を従える権威ではなく、国民1人1人に寄り添うリベラルな存在だ。国家主義者達の主張には、戦後に皇籍を離れた旧宮家から、「リベラルな皇室」を知らない男系男子を養子に迎える事によって、「家父長制の皇室」に戻したい思惑もちらつく。戦後の「リベラルな皇室」を敬愛する側は其処に違和感を持ち、何故そこ迄して男系男子に拘るのかと考える。

 「リベラルな皇室」を体現されてきた今上陛下が6月11日に「皇室の在り方や活動の基本は、国民の幸福を常に願い、国民と苦楽を共にする事だと考えており、こうした皇族数の確保のあり方についての議論に於いても国民の皆さんの理解が得られるものとなる事を望んでおります」と述べられたのは、家父長制を指向する国家主義的な政権の動きに対する、政治的権能を有しない象徴天皇としての精一杯の苦言と受け止められた。

 これに対する国家主義者側の回答が、自民党の中曽根弘文憲法改正実現本部長が6月28日の講演で語った「(愛子様の皇位継承は)あり得ない。愛子様が天皇になったら、結婚する人もいない。男子を産まないといけないという、凄いプレッシャーが有る」との発言だ。

 衆参両院議長の下の与野党協議で纏められた「立法府の総意」には、女性皇族が結婚後も皇室に残る「女性宮家」の創設と、「男系男子の養子縁組」の両案が盛り込まれた。愛子様がご結婚後も女性宮家を興されたら、将来的に「愛子天皇」待望論が国民の間で盛り上がらないとも限らないとの警戒感が国家主義者側には燻り続けている。その焦りが1人の女性の結婚を否定する人権侵害発言に繋がる所が、個人より国家を優先する国家主義者たる所以か。男系男子に拘る結果、男子を産まないといけないプレッシャーが伸し掛かるのは愛子様ではなく悠仁様だという現実認識に欠けるのは、旧宮家の男系男子を第一優先に考えているからか。

 養子縁組で皇族となった旧宮家の男子に生まれた男子が皇位継承権を持つか、又、女性宮家として皇室に残った女性皇族の配偶者と子供も皇族となるかについては、立法府の総意では結論を先送りした。にも拘わらず、政府が国会に提出した皇室典範改正案では、国家主義者側の主張を入れて「養子の子に皇位継承権」「女性宮家の配偶者と子は皇族とせず」と結論付けた。立憲民主党等が反発した所で万事休す。立法府の総意の纏め役を担った森英介衆院議長も「男の子が生まれれば、その子は皇位継承権を持つ事になる」との見解を表明。「リベラルな皇室」から「家父長制の皇室」へと歴史の歯車を戦前に巻き戻す高市政権の画策は成功したかに見える。

 高市首相が年初の衆院解散に踏み切った際に宣言した通り、「国論を二分する様な大胆な政策」を実行に移した形だが、高市首相が声高に叫ぶ「国益」とは国民全体の為か、それとも高市首相を応援する特定の人達の為なのか。「リベラルな皇室」を敬愛する国民の心情を切り捨て、国家主義者側に一方的に加担する高市政権の判断は、衆院選で自民党を大勝させた「高市人気」の行方に影を落とすかも知れない。

男系男子の養子縁組で麻生氏が皇統の外戚に

この間、「養子の子に皇位継承権」を実現すべく、政権内で暗躍したのが自民党の麻生太郎副総裁で、森衆院議長は麻生氏の側近中の側近だ。自民と維新の与党協議で政府の皇室典範改正案の国会提出を了承するに当たり、維新幹部に「伏してお願い」して見せた麻生氏の行状が異彩を放った。

 伏線は高市政権の誕生前に張られていた。自民党総裁選の投開票を4日後に控えた昨年9月30日、三笠宮寛仁親王(2012年死去)の妃信子様が三笠宮家を離れ、新たな宮家「三笠宮寛仁親王妃家」を創設。信子様は麻生氏の実妹で、民間から皇室に入った女性が新たな宮家を創設するのは異例の事だ。新宮家が旧宮家の男系男子を養子に迎えて男子が生まれたら、麻生氏は皇位継承権者を持つ宮家の外戚となる。平安時代に栄華を誇った藤原氏の摂関政治を思わせる時代錯誤な策略か。「家父長制の皇室」回帰が麻生氏の政治力を強める構図に国民が気付く時、高市政権の国家主義政策が高市氏の応援団に向けられたものである実態が浮き彫りになるだろう。

 自民・維新の連立合意書には自衛隊の階級等の「国際標準化」も盛り込まれ、高市政権は「将」「1佐」「2尉」等の呼称を旧軍の「大将」「大佐」「中尉」等に戻そうとしている。少し考えれば分かる事だが、日本語で「大佐」と呼ぼうが「1佐」と呼ぼうが、英語の表記を国際標準に合わせれば済む話。旧軍回帰のノスタルジーを「国際標準化」という目眩ましの言葉で誤魔化す底の浅さも指摘しておきたい。

新年の一般参賀に出席された皇族方(宮内庁HPより)

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