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未来の会

【「集中」の是々非々 84】

【「集中」の是々非々 84】

信頼関係の崩壊の言葉で全てを誤魔化す音楽ホール

「まだ、障害者差別を続ける? 有名企業」

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音楽に感動した障害のある子供が、思わず大きな声を上げた。その喜びに、来場者の一人が苦情を申し立てたという。舞台となったのは、日本の著名な音楽ホールで長年続けられてきた音楽会である。しかし、この催しは、単に名演奏を静かに鑑賞するためだけのものではない。障害のある人々も運営に携わり、多くの障害者が一般の来場者と共に音楽を楽しむことを、開催趣旨の一つとしてきた。誰もが参加出来る機会を広げ、その理念を社会に伝えるため、入場は全員無料である。障害者を招待するだけでなく、共に催しを作り、共に感動を分かち合う。共生社会を実践する音楽会なのである。主催者は、苦情を申し立てた来場者が、こうした趣旨を理解していなかった可能性を指摘する。静かに演奏を聴きたいという希望は尊重されるべきだ。しかし、その希望だけで、催しが大切にしている理念まで否定してよいはずはない。趣旨の周知に不足があったなら、案内を改善すればよい。座席や動線に課題があったなら、主催者と協議すればよい。ホールがまず果たすべき役割は、苦情を契機に共生の場を閉ざすことではなく、その場をどう守り、より良くするかを考えることである。

ところが、ホール側は、長年続いてきた催しの会場使用を翌年から認めないとした。障害者の参加や来場が理由であることは明確に否定し、代わりにあげたのが「主催者との信頼関係の崩壊」だった。しかし、主催者によれば、いつ、何が原因で信頼関係が崩壊したのか、具体的な説明を求めても、回答は示されていないという。「信頼関係」という言葉は、説明を省略するための免罪符ではない。いつ、誰が、何を行い、それがなぜ会場使用を拒むほどの問題となったのか。判断に根拠があるなら、それを具体的に説明すべきである。苦情と使用拒否との因果関係や、拒否の真の理由は、現段階で断定出来ない。しかし、障害者の参加が理由ではないと言いながら、具体的に説明しないのであれば、その言葉をもって障害者差別を覆い隠しているのではないかとの疑念を、自ら深めていることになる。差別は、露骨な言葉で語られるとは限らない。「総合的な判断」「信頼関係」「諸般の事情」。こうした曖昧な表現によって、排除の実態を覆い隠すこともある。だからこそ、誰の参加機会に、どのような影響を及ぼす判断なのか、検証出来る説明が求められる。

日本は、障害のある人もない人も、互いの人格と個性を尊重する共生社会を目指している。民間事業者にも、過重な負担とならない範囲で合理的配慮を提供する義務がある。その社会で、障害者が運営に参加し、一般の来場者と音楽を楽しむ催しの会場使用を、具体的な理由も示さず拒む判断は、余りに重い。社会貢献を語る企業が、長年に亘り社会貢献を実践してきた活動の扉を閉ざす。その矛盾を、企業自身はどう説明するのか。

顧問弁護士の役割も厳しく問われる。主催者によれば、今回の判断は顧問弁護士の独断によるものだったとの情報が内部から寄せられていると言う。また、企業側からは弁護士の判断に従うほかなかったと説明も受けたという。これらが事実であれば、法律の専門家が問題の解決を支えるどころか、企業の判断を支配し、その助言や判断が企業と主催者との対話を閉ざす一因となった可能性がある。依頼企業を守るはずの助言が、長年の文化活動を断ち切り、企業の社会的信用を損なうのであれば、その妥当性は検証されるべきだ。一方、企業側も「弁護士に従った」という説明で責任を免れることは出来ない。最終的な判断の責任を負うのは、企業自身である。

さらに、主催者によれば、この問題への対応の中で、不可解な説明が届いたと言う。突然、障害のある音楽家の名前が持ち出され、「当弁護士事務所のクライアントである事を申し添えます」と伝えられたというのである。いかなる趣旨で名前を挙げたにせよ、一人の障害のある音楽家の活躍や弁護士事務所との関係は、今回の使用拒否の正当性を証明するものではない。それを障害者側の抗議への反論に用いたのであれば、論点のすり替えである。そもそも、今回の会場使用拒否とは直接関係のない音楽家の名前を、なぜ持ち出す必要があったのか。この実名の開示は弁護士事務所としても守秘義務違反に相当するのではないだろうか。弁護士事務所として、その対応の妥当性が問われるのではないだろうか。問われるに違いない。

障害のある子供が声を上げることを恐れ、親が外出を諦める社会を作ってはならない。障害者が働き、文化を楽しみ、社会の一員として参加する。その機会を守ることこそ、文化施設の責任である。仮に差別的な排除を曖昧な理由で隠したのであれば、それは排除に不誠実な対応を重ねることになる。名門の看板も、企業の規模も、その責任を軽くしない。

企業の社会的責任は、華やかな広告や文化支援の看板ではなく、弱い立場にある人々にどう向き合うかによって測られる。「信頼関係の崩壊」を理由に掲げながら、その具体的な根拠を説明しない。その姿勢こそ、社会との信頼関係を損なうものではないか。文化活動であれ、スポーツ事業であれ、社会への貢献を掲げる企業には、その理念に相応しい行動が求められる。障害者と共に築いてきた文化の場を閉ざす判断について、運営企業は自らの名と責任に於いて説明を尽くすべきである。果たして社会の理解を得られるだろうか。厳しい結果が待っているに違いない。

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