
受動喫煙防止に向けて加熱式たばこへの規制を強化する対応案について、厚生労働省は7月、見送る方針を決めた。副流煙に有害物質が含まれる事は分かっていても、健康被害を引き起こす事の根拠迄は示せずにいる為だ。但し、同省の「有害である点で、紙巻きたばこと変わりは無い」(幹部)との認識は一貫しており、捲土重来を期す意向だ。
7月9日に開かれた厚労省の「受動喫煙対策専門委員会」。これ迄、委員からは「一部の有害物質は紙巻きより加熱式の方がより多く含まれる」「健康被害が出てからでは手遅れだ」等々、加熱式たばこへの規制強化を求める声が相次いでいた。が、同省は「現時点では健康への影響について科学的知見が十分に蓄積されていない」として、改正健康増進法の見直しによる規制強化は断念する方針を示した。新たな施策は、バー等の「喫煙目的施設」を自治体への届け出制とする事等、法改正によらないものに止めた。
2024年の喫煙率は14・8%と政府目標の12%を上回る。加熱式たばこのシェアは全体の約5割を占める。たばこの受動喫煙防止策に関しては、20年の改正健康増進法の施行で飲食店やホテルは建物内を原則禁煙とした。但し、加熱式たばこは健康への影響が立証されていないとして、専用室を設けた飲食店等では、専用室内に限り、喫煙しながらの飲食を認めた。
この他、法施行時に既に営業していた小規模飲食店は、経過措置として加熱式、紙巻きとも飲食しながらの喫煙を可能とした。又、バー等を想定し、酒中心で主食は提供しない事等を要件とした「喫煙目的施設」も新たに設けた。
それでも加熱式たばこに関しては内外の研究で、▽副流煙からも発がん物質が検出▽喫煙者の周囲にいた人の尿からたばこ由来の発がん物質が検出——等の知見が示されるようになり、同省は昨年11月から専門委員会で規制強化に関する議論を始めた。医療系学会で作る禁煙推進学術ネットワークは今年1月、厚労省に加熱式たばこにも紙巻きたばこ同様の規制を課す様、受動喫煙対策の見直しを求めた。
更に超党派の「受動喫煙防止対策を推進する議員連盟」(会長・三原じゅん子前こども政策担当相=自民)は7月、規制強化を求める提言書を上野賢一郎厚労相に提出した。たばこの害に関する研究継続を要請した上で、▽学校や病院等は敷地内を原則完全禁煙とし、周辺の路上喫煙も制限▽将来的には小規模飲食店等への特例を廃止▽「喫煙目的施設」に届け出制の新設と将来の廃止——等を迫った。
バーやスナックを想定した「喫煙目的施設」は主食の提供をしない事が要件なのに、麺類や丼等を出す店は少なくない。この為、今回の見直しでは省令を改正し、「喫煙目的施設」を届け出制にして行政による実態把握をし易くする様にした。しかし、規制強化が客足の減少に直結し兼ねないと懸念する飲食業界の反発は強く、小規模飲食店等への経過措置は続ける事にした。厚労省幹部は「科学的な裏付けが弱い段階で、法律の全面改正には踏み込めなかった」と振り返る。
加熱式たばこが普及して未だ10年程。がんが発症する迄の長期的な疫学データが乏しい面は否めない。それでも同省は健康リスクを確信している。現に加熱式たばこも禁煙治療の対象とし、健康保険を適用している。同省の医系技官は、「ニコチン依存症対策という事だが、個人的には心臓等への悪影響が懸念されるという点で紙巻きたばこと変わりないと思う」と見解を示している。
次の規制の要件等の見直し時期は、「喫煙目的施設」に届け出制を導入してから3年後が目処となる。同省幹部は「健康被害のデータが積み上がれば、いつでも規制を再検討する」と話す。


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