SHUCHU PUBLISHING

病院経営者のための会員制情報紙/集中出版株式会社

未来の会
【「集中」の是々非々 13 】

「変わらない厚労省と変われない医師」

「コロナ禍は変化への最大のチャンス」

新型コロナの感染拡大の中で安倍晋三総理が去り、厚労省の鈴木康裕医務技監も去った。コロナ禍で人生を賭した戦いが至るところで起きていた。過去形ではなく今も起きつづけている。先日、邉見公雄先生から「是非読んで欲しい」と本が送られて来た。タイトルは「新型コロナウイルスとの戦い」・・・現場医師120日の記録だ。著者は「特定非営利活動法人 地域医療・介護研究所JAPAN」だ。この会長は邉見公雄先生だ。

前書きには「新型コロナウイルスと対峙した地域の医療・介護の現場の状況について実際に危機対応で陣頭指揮をした院長先生・医師をはじめとする医療従事者の方々の寄稿を編集し、生きた記録として残そうというもの」とある。

寄稿された先生一人一人の戦場記録になっていて、後世に残すべき貴重な資料になっている。是非とも多くの先生方に読んで頂きたい。

これを読んで思い出した本がある。「さらば厚労省」だ。著者は村重直子氏。東京大学医学部卒後にアメリカ医療を勉強したいと横須賀アメリカ海軍病院で医師として勤務し、その後はニューヨークのベラ・イスラエル・メディカル・センターで内科医をし、その後は国立がんセンター勤務を経て、厚労省の医系技官となった。そして、内閣府特命大臣担当付きとして出向した人物だ。

ここに書かれている内容は今日の医療行政と全く変わる事がない。進歩がない世界が描かれている。この本の「終わりに」を抜粋する。

「まさか、厚労省に入るとは思わなかった。まさか、大臣直属の政務官になるとは思わなかった。責任の大きさを感じながら、可能な限りの多様な視点からの情報、厚労省の役人とは別ルートからの現場の情報をひたすら集めた。バランスの取れた状況判断が出来るかどうかは、その前段階でどれだけ多様な情報を集められるかに掛かっている事を痛感した。知らない情報に関しては当然、判断のしようもない。厚労省では、役人に都合の悪い情報を排除し、ごく一部の偏った情報に基づいて役人が判断している。これは厚労省には、国民の多様なニーズに応える医療を実現出来るはずがない事を意味する。(略)舛添大臣の下で、自らの信念を貫き思う存分働かせて頂いた経験を通して、私がするべき事を以前にもまして明確に意識するようになった。行政の立場からではなく、先ずは一人の医師として患者さんやその家族をはじめ医療に関わる皆さんに伝えなければならない事があると強く感じている。それが本書のテーマである『厚労省からの独立』である。『日本の医療はお上に任せておけば大丈夫』と言えるのか。(略)医療の現実や厚労省の限界を皆さんに知って頂きたい。その上でさらに広く議論していく事が、真に患者や国民のための医療の実現につながると信じている。2010年夏」

10年前の本だが、あの時から厚労省と現場医師の距離感は全く変わる事がない。あの頃、日本の新型インフルエンザ対策は後進国並との国民からの激しい批判を受けた。多くの現場の医師も医療行政の脆弱化を指摘した。名前こそ新型コロナウイルスに変わったが、今回も全く同じく「後進国並」の現象が起きている。

日本は歴史から教訓を得る事を苦手としている見事なまでのお手本だ。

日本には30数万人の医師がいる。しかし、まとまった団体が存在しない。ここが一番の弱点だ。公認会計士や弁護士は強制加入が原則だ。例え国家試験に合格しても日本公認会計協会や日本弁護士連合会に加入しなければ、営業が出来ない。変われない医師を返上するために、これを習い呉越同舟ながら一つの組織を作り、政府や厚労省へ物申す事が必要だ。これが患者満足度を高める医療につながる。

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