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物価高は続くのか? ポイントは日銀の利上げと円高反転に

物価高は続くのか? ポイントは日銀の利上げと円高反転に

原油高と円安のダブルパンチ 物価鎮静の鍵は停戦と日米金利差

イラン戦争による中東緊迫が収まらない。急騰した原油価格は高止まりし、世界的にインフレ懸念が広がる。国内の物価高も変わらず、そこへ円安が追い打ちを掛ける。果たして物価上昇はまだ続くのか。鍵を握るのは金利の引き上げと円高反転だが、その行方も含め、今後の展開を考察したい。

戦争長期化懸念も停戦で原油価格下落を期待

2026年2月28日の米国とイスラエルの共同による奇襲空爆で始まったイラン戦争では、最高指導者アリ・ハメネイ師を含む政権中枢が打撃を受けた。当初は短期決着との見方も有ったが、後継に次男モジタバ・ハメネイ師が選出され、革命防衛隊が主導権を強める形で体制は存続。米国の攻撃に対し、イランはホルムズ海峡を事実上封鎖する等強硬姿勢を示した。さらに、ペルシャ湾岸諸国の米軍施設や石油施設にも矛先が向かい、中東情勢は一気に緊迫。原油価格が急騰したのは記憶に新しい。

WTI原油先物は、4月7日に一時1バレル117ドル台、終値ベースでも約113ドルと22年以来の高値を付けた。だが翌8日に米・イランが2週間の停戦で合意し、イランもホルムズ海峡の封鎖解除を表明した為、原油は一気に80ドル台へ急落、市場は落ち着きを取り戻すかに見えた。ところが停戦は長続きせず、4月下旬には封鎖を巡る応酬が再燃して原油は106ドル台へ反発する等、相場は停戦と再緊迫の間で振れ続けている。米国も当初の体制転換という目的から、ホルムズ海峡の封鎖解除へと力点を移しており、長期化が懸念される中、これ以上世界経済を悪化させまいとしている。

というのも、中東石油の玄関口であるホルムズ海峡の封鎖が続けば、エネルギー供給不安が高まり、世界的にインフレ圧力が強まってしまう。トランプ大統領としても、原油価格の沈静化を重視するのは当然だろう。このまま米国内の物価上昇が続けば、本年秋の中間選挙に悪影響を及ぼすのは必至だ。

日本経済は原油高だけではなく円安でダブルパンチ

原油高は米国だけでなく、他の先進国にとっても大きなリスクである。最悪なのは、物価高と不景気が同時に起きるスタグフレーションだ。米国の同盟国を含め、各国指導者は早期停戦を望んでいる。高市早苗首相にとっても、原油価格の高止まりは望ましくない。

原油高の沈静化には、何よりも停戦が不可欠である。日経平均が6万5000円を超す等、イラン情勢緊迫化で急落した一時の混乱を克服したのは、停戦による原油価格の落ち着きを期待しての事だ。

ここまで見た物価上昇の引き金がイラン情勢にあるとすれば、日本の場合はもう1つ、円安が追い打ちを掛ける。原油価格が落ち着いても、円安に歯止めが掛からなければ、原油等エネルギーの他、農産物など一次産品を輸入に頼る日本にとって円安がマイナスなのは言う迄も無い。

勿論、貿易上は多くの工業製品を輸出している為、円安メリットは大きい。イラン戦争開始前ではあるが、高市首相の「円安でホクホク」発言が批判を浴びた様に、外為特会の含み益など国家財政にもプラスは働く。

物価上昇に苦しむ庶民の生活を考えると、足元の円安は明らかに困る事象である。原油価格が安値で落ち着いている場合はその限りではないものの、庶民の生活に原油高と円安はダブルパンチとなってダメージをもたらす。

円安の背景には大きく3つある。第1に、原油高への対応が財政悪化の懸念を強めている事。第2に、日米の金利差を背景とするキャリートレード。第3に、輸入品価格の上昇に伴う実需のドル買いだ。

例えば、原油高への対応として、政府は電気・ガス代等を引き下げる為に補助金を出すが、その財源を国債発行に頼れば、財政悪化の懸念が高まり、円への信認低下を招き兼ねない。つまり、「原油高→財政負担を伴う政策→円への信認低下→円売り圧力」という構図になる。

もう1つは日本の財政が良好とは言えない一方で、米国の金利水準が相対的に高く、キャリートレードが行われ易い状況にある為だ。金利の安い円で調達し高いドルで運用する動きで、この投機的取引が続く限り、円安トレンドは変わらない。

他方、中東情勢の緊迫化を背景に、米国でも物価急騰が止まらず、トランプ大統領は金利抑制に努めようとしながらも、中央銀行である米連邦準備制度(FRB)が金融引き締め策に傾き、これもドル買い要因だ。更に、輸入品の価格高騰で「実需のドル買い」の資金も円売り圧力になる。

日本政府も、こうした円安を傍観している訳ではない。1ドル=160円の水準を大きく上回ろうとすると、巨額のドル売り介入を実施する。ドル/円相場は円高に振れる場面もあるが、一時的に留まり、根本解決にはならない。

景気と物価抑制両にらみで日銀は難しい舵取りに

原油価格の高止まりには、停戦という明確な処方箋が有る。一方、円安は構造的な側面も大きく、より厄介だ。しかし、経済は生き物であり、投機等によって行き過ぎた場合、反動が起きるのも相場の性質だ。

先述した様に、足元の円安は、輸入コスト増という実需と、円キャリートレードという投機の両面が支えている。つまり、これらの状況が逆転すれば、円安に歯止めが掛かるどころか、円高に急反転する可能性も出てくるのだ。ここでは、原油価格は勿論、日米金利差の推移が大きなポイントになる。

米国の引き締め観測が円売り/ドル買い要因と記したが、そうならずFRBが金利を据え置き、反対に、日銀が昨年末に続いて追加利上げに動いた場合はどうなるのか──日米間の大きな金利差は残るものの、金利差は縮小に向かう。仮に金利差の縮小まで至らなくても、少なくともこれ以上は拡大しないとの見方が強まれば、ドル買いが止まり円高に振れる事になりそうだ。

そこでは、円キャリーの巻き戻しが活発化するのを始め、投機的な円売りポジションが解消される。更に、イラン情勢が停戦等で落ち着き、急騰していた原油価格が下落に転じれば、米国で引き締め論が後退すると共に、利下げ再開の期待が高まれば、日本の引き締めと相俟って、今度はドル安/円高が加速する事も有り得るだろう。

又、イラン情勢と共に注目したいのが日銀のスタンスだ。高市首相を始め政府は、円安の輸出面でのメリットも意識し、この局面での金利上昇が企業活動を委縮させ兼ねないとして、利上げにはなお慎重だ。とはいえ、物価を抑えるには、円高を促す利上げも避けて通れない。政府も日銀も物価高を抑えたい点では一致しているが、景気と物価のどちらを優先するかを巡り、綱引きが続いている。日銀は難しい舵取りを迫られている。

足元の動きを見る限り、長期国債の利回りは30年振りの水準まで上昇しており、ゼロ金利は遠い昔の様になった。既に世の中は「金利の有る時代」に変化している。考え得るシナリオはこうだ。イラン情勢が落ち着けば、中間選挙を控えるトランプ米大統領はFRBに利下げ圧力を掛ける。一方、日本では物価を抑える為の利上げが進む。両者が相俟って日米の金利差は縮み、為替相場は円高へと反転する。そうなれば、原油価格の落ち着きと円高で輸入価格が低下し、物価高に歯止めが掛かり、景気が上向く展開も見えてくる。インフレ圧力が最も強い今が正念場であり、利上げで一時の苦しさは増すかも知れない。だが、そこを乗り切れるなら、今は正に夜明け前の一番暗い時間帯にあると言えよう。

勿論、この楽観的なシナリオは、あくまでもイラン情勢の解決が前提だ。戦闘が泥沼化し、ホルムズ海峡の封鎖が解けない状況が続けば話は逆。原油の一段高だけではなく、物価高から米金利は上昇、更なる円安進行といった日本にとって悪夢のシナリオが避けられなくなる。

だが、足元の株式市場では、日米共に最高値圏で推移している。リスクは依然小さくないものの、市場は既に停戦と金利差縮小の織り込みを進めており、先行きに関しては楽観的な見方が勝っている状況だ。

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