
「沈黙は誰のため? 顧問弁護士や社外取締役の責任を問う」
「不祥事も皆んなで渡れば怖くない?」
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企業不祥事が発覚するたびに、いつも同じ問いに突き当たる。なぜ防げなかったのか? 止める人間はいなかったのか? 何故、誰もが沈黙していたのか――である。企業は不祥事を隠す。それが発覚するのは多くの場合、内部告発による。
最近の例を見ると、ジャニーズ事務所問題では、長年にわたり内部で共有されていたとされる事実が、組織として是正されることなく放置された。マスコミも見て見ぬ振りを続けた。しかし、世界のメディアはこれを許さなかった。転機となったのは日本外国特派員協会(通称・外国人記者クラブ)でのジャニーズタレントによる告発だった。日本のメディアは沈黙を続けたが、英国国営放送BBCによる報道で一気に火が噴いた。国内では可視化されなかった問題が、国外からの視点によって一気に表面化したのだ。この過程で、長くジャニーズの顧問弁護士を務めた有名弁護士の責任も問われた。法の専門家として、どこまで踏み込めたのか。それとも踏み込まなかったのか。この問いは、個人の資質を超え、日本型ガバナンスの限界を映し出している。
同様の構図は、ニデックの会計不正問題にも通底する。不正や疑義が生じた際、経営陣の責任は当然である。しかし、それだけでは不十分だ。社外取締役は何を見ていたのか。監査法人はどこまで機能していたのか。顧問弁護士は、どの段階で警鐘を鳴らしたのか。あるいは、鳴らさなかったのか。皆、等しく沈黙を続けた。見て見ぬ振りをし、顧問職に伴う経済的メリットを選んだのではないか。
フジテレビの事案は内部調査の杜撰さが際立った。内部調査報告書も実にいい加減だった。内部調査を行ったプロアクト法律事務所は、高額な調査費用をフジテレビから受け取った影響もあってか、調査で得られた本来記載すべき経営トップの行状を霧散させたと指摘されている。プロアクト法律事務所は経済的利益を追求してしまったに違いない。残念だ。
サントリーの一件も実に興味深い。長く「名経営者」として評価され、いわば「スター経営者」として君臨してきた人物が、ある日を境に突然、組織から退場を余儀なくされた経営トップ交代劇である。実に不可解な事件だ。その後、福岡県警の捜査はない。ガサ入れの続報もない。一体、サントリーに何が起きたのか?その後、このスター経営者はどうなったのか?この出来事を単なる「人事問題」として片付けることは容易である。しかし、本質はそこにはない。むしろ問われるべきは、その過程で企業統治はどこまで機能していたのかという点だ。長年にわたり経営を担ってきた人物に関して、組織内で問題の兆候は全く認識されていなかったのか。それとも、認識されながらも共有されなかったのか。あるいは、共有されていたが是正に至らなかったのか。
非上場企業であることは、説明責任の軽減を意味しない。むしろ市場の監視が及ばない分、内部統治の厳格さがより求められる。社外取締役は本当に独立していたのか。経営トップに対して異議を唱える機能を果たしていたのか。形式的な承認機関にとどまってはいなかったか。
顧問弁護士の責任もまた看過出来ない。サントリーの顧問弁護士事務所は六本木ヒルズに拠点を置く四大法律事務所に準ずる大手の弁護士事務所だ。企業の意思決定に深く関与し、法的リスクを事前に察知しうる立場にありながら、その役割は十分に果たされていたのか。問題が顕在化する前に、どれだけの助言がなされていたのか。あるいは、経営側の意向を優先するあまり、本来なされるべき厳しい指摘が控えられてはいなかったか。経済的利益を追い求めてしまっていたのか?
重要なのは、違法性の有無だけではない。企業倫理や社会的責任の観点から、どのような判断がなされていたのかである。仮に明確な違法行為が存在しなかったとしても、「それに近いリスク」や「不適切と評価され得る行為」が見過ごされていたのであれば、それはガバナンスの不全と言わざるを得ない。
こうした構造の中で、不祥事は「誰にも止められないもの」として進行する。そして最終局面で突然、表面化する。だが、その「突然」は本当に突然だったのか。多くの場合、それは長い時間をかけて積み重ねられた沈黙の結果である。
是々非々の立場から言えば、責任は一点に集中するものではない。経営者、取締役、社外取締役、顧問弁護士、監査法人――それぞれが本来果たすべき役割を全うしていたのかが問われる。
沈黙は中立ではない。沈黙は同罪を意味する。それは時に組織を内側から蝕む最大のリスクである。
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