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自身の党内基盤脆弱化で浮上する「高市降ろし」

自身の党内基盤脆弱化で浮上する「高市降ろし」

頻繁なSNS発信と高支持率の陰で露呈する官邸内不和

高市早苗政権が昨年10月21日に発足してから半年以上が経過した。女性初の首相で歯に衣着せぬ物言いが人気を博し、X(旧ツイッター)等のSNSでの発信を駆使して、高い内閣支持率を誇っている。

 その一方で、麻生太郎元首相など党内有力者との意思疎通は今一つで、首相の党内基盤は脆弱とも言える。ひと度内閣支持率が下落に転じれば、「高市降ろし」も起き兼ねない。

 「職権ばっかりだったね」。4月21日夜、首相公邸で衆院予算委員会の与党メンバーと会食した首相は上機嫌だった。首相の拘った今年度予算の年度内成立に向け、審議を職権で進めた経緯を冗談めかし、会合は和やかな雰囲気で進んだ。健康不安を指摘されている首相だが、提供された懐石料理をぺろりと平らげたという。

 参加した予算委メンバーの1人は、「総理は無用な国会審議が嫌い。昨年秋の臨時国会では衆院の予算委員長は立憲民主党の枝野(幸男)さんで、当時はとにかく総理答弁を要求された。野党側の質問通告が遅く、前日の準備は大変だったらしい」と明かす。首相の国会への「トラウマ」は枝野氏が植え付けたとも言っていいかも知れない。

 このメンバーによれば、予算委員会の答弁書は午前0時、午前2時、午前4時に役所から送られ、時間が経つにつれてアップデートされてその量が増えていき、最後の時間帯には「電話帳」の様な量になるという。

 当初は石破茂前首相の影響を受けた答弁書の内容となっており、首相自ら赤ペン先生の如く朱色の直しを入れ、「高市カラー」を出していったとの事だ。首相は会合で「最近は漸く自分の考えが反映されてきた」と語っていたという。

 只、こうした首相の肉声を聞く機会は乏しい。首相が参加する夜の会合は少なく、4月23日付の朝日新聞によれば、半年間の首相の平均帰宅時刻は午後7時21分で、夜に官邸外で会食・懇談に参加したのは僅か9回だったという。

 更に、首相官邸での記者会見はこの半年で8回。通例であれば今年度当初予算の成立を受けて記者会見を開くところだが、今年度は記者が参加した簡易的な形式の「インタビュー」のみだった。

記者会見は少ない一方で、高頻度なXの投稿

 飽く迄発信の中心はSNSで、特にXが活用されている。フォロワーは政界屈指の286・4万(4月下旬時点)を誇り、記者のぶら下がり取材は受けずとも毎日の様に更新している。

 だが、或る大手紙記者は「情報発信の頻度は高いが、記者会見の様に質問が出来ない為、内容が深まったり、検証したりする事が出来ない。国民にとって真に必要な情報が発信されているとは言えない。トランプ米大統領の発信方法を真似ているだけだ」と指摘する。 投稿の中には役所の文書をなぞったものも有り、X上では「役所の文章をそのまま使ったコピペだ。一方的に発信し、その内容も自分で考えていなかったという呆れた話だ」と批判する投稿も目立ってきた。

  しかし、それでも内閣支持率は高止まりしている。読売新聞が4月17〜19日に実施した全国世論調査では、内閣支持率は66%に上る。前回(3月20〜22日)よりも5ポイント下落しているものの、依然として高い水準だ。4月18、19日に調査した朝日新聞では64%で、前月より3ポイント上がっている。

 少し毛色が異なるのが毎日新聞だ。4月18、19日の全国世論調査では、53%と前月より5ポイント下がり、2カ月連続で下落した。世論調査報道に詳しいマスコミ関係者は「世論調査は長期的なトレンドで見るべき。高市内閣は依然として支持率は高いが、変化の兆しが出てくるかも知れない」と解説する。

 とは言え、首相の党内基盤は盤石とは言えない。嘗ては安倍派に所属していたが、長らく無派閥を貫いている。その後、自民党派閥裏金事件の影響で麻生派を除く派閥は解散したが、最近は復活の兆しも有る。加えて、派閥ではないが、首相の思想信条に近いグループとしては、古屋圭司前選挙対策委員長や高鳥修一元自民党総裁特別補佐らが集まる「保守団結の会」が挙げられる。首相が顧問を務め、メンバーは80人を超える。月1回の頻度で勉強会を開いており、4月上旬に有った夜の懇親会には首相も顔を出した。

 2月の衆院選で初当選した約60人も4月下旬に同期会を開催し、「鹿鳴会」という名称で首相を支えていく事を決めた。首相も出席し、会の幹部は「高市チルドレン」という事を強調した。衆院選で復活当選を果たした或る衆院議員は「高市さんとは元々思想信条は異なるが、高市旋風のお陰で当選出来たところも有る。そういう状況を考えると、高市さんのやりたい事を支持しない訳にはいかない」と漏らす。

 只、そうは言っても、人付き合いが上手くない事で知られる首相が、こうしたグループを上手く活用出来るかは不透明だ。

 保守団結の会の幹部は声を潜めて明かす。「一昨年の総裁選で高市さんが石破さんに負けた時、もっと会に顔を出すよう苦言を呈した事が有る。その後、高市さんからメールの返信がなくなった。自分の都合の悪い事を言う人を遠ざけようという考えが彼女の根底に有るので、やはり人付き合いが上手くないと思った。師と仰ぐ安倍さんとは正反対だ」。こうした首相の気質が党内基盤の強化を遠ざけている様にも映る。

参院では「ポスト高市」を見越した動きも

一方で、看過出来ない動きも出てきている。自民党参院の実力者、石井準一参院幹事長が新たなグループ「自由民主党参議院クラブ」を立ち上げたからだ。野党にも気脈を通じる石井氏は首相と距離を置いており、予算の年度内成立よりも参院の与野党秩序維持を優先させた。グループには自民党参院議員101人の内40人超が参加し、その影響力を内外に見せ付けた形となった。

 参院では依然として少数与党が続いており、参院の動向次第で法案成立の成否が決まり兼ねない。石井氏は「高市政権を支えていく事を約束する」と強調しているが、石井氏は小林鷹之政調会長の後見人としても知られており、「ポスト高市」を睨んだ行動であるのは明白だ。石井氏も周辺に首相とは反りが合わない趣旨の発言を繰り返しており、内閣支持率が下がってくれば無視出来ない存在になり兼ねない。

 政権中枢での「すれ違い」も表面化しつつ有る。首相が三顧の礼で迎え入れた今井尚哉内閣官房参与との関係だ。経済産業省出身の今井氏は、安倍元首相の政務秘書官として長く政権を支えてきた。今井氏は衆院解散を巡り、昨年末もしくは年頭での実施を模索し、かねてから首相にも進言していた様だ。

 しかし、首相が決め切れず、衆院解散が1月23日にずれ込み、予算の年度内成立も果たせなかった。「完全な誤報」と首相は答弁したが、自衛隊のホルムズ海峡派遣を巡って今井氏から強く反対されたと、月刊誌『選択』で報じられた。

 今や首相が官邸で信頼を寄せるのは、木原稔官房長官と、尾崎正直、佐藤啓の両官房副長官だけ。麻生氏を始めとする党幹部とは没交渉で、各省から集めた首相秘書官ですら信用されていない状況の様だ。

 中東情勢の緊迫化による石油危機で物価が更に高騰し始めている。当面、石油危機は収まりそうもなく、このまま物価が高騰し続けて国民生活に大きな影響を及ぼせば、高止まりしている内閣支持率が下落に転じるかも知れない。

 更に、その時点で党内基盤が脆弱であれば政権を延命させる事は難しく、首相官邸も機能不全に陥るかも知れない。健康不安説も時折流布される首相だが、政治家としての真価が問われる時がいずれ来るだろう。

今年度予算成立後、取材に応じる高市首相(首相官邸HPより)

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