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未来の会

第123回 COVIDを悪化させる降圧剤

第123回 COVIDを悪化させる降圧剤

 新型コロナウイルス(SARS-CoV2)による感染症(COVID-19)の蔓延に歯止めがかからない。

 SARS-CoV2は感染に際して、アンジオテンシン変換酵素-2(ACE2)を受容体として体細胞に侵入する。薬のチェック89号1)と速報版No1852)では、このACE2がどのようにして増加するのか、ACE2を増加させる降圧剤にはどのようなものがあるのかについて詳しく述べた。

 また、免疫抑制作用を有する薬剤は一般的に感染症を増悪させるが、免疫抑制作用を有する降圧剤も含めてその概要を紹介する。

酵素ACE2は免疫抑制物質を産生

 SARS-CoV2に限らず、コロナウイルスは酵素ACE2を受容体として細胞に感染する。過剰なストレスが持続するとカテコラミンやアンジオテンシンⅡ(Ang II)などの昇圧物質によって虚血となり組織損傷を起こすが、損傷が過剰にならないように拮抗する抗炎症物質であるアンジオテンシン1-7 (Ang 1-7)も産生される。

 ACE2はAng IIからAng 1-7を産生する酵素で、組織損傷のある部位で高発現するので、慢性疾患をもっている人には高発現している。

 高血圧や糖尿病、心疾患など慢性疾患がある人は大なり小なり過剰なストレスが持続した結果として発病している。そのために、ACE2が各組織で高発現している。COVID-19の重症化の危険度がおおむね3〜4倍、脳卒中があれば危険度は8倍であったが、そのためと考えられる。

ACE阻害剤とARBはACE2を増やす

 ACE阻害剤やARBを服用すると、ACE2をより多く発現させることが、人でも動物実験でも確かめられている。

 その増加程度は、ACE阻害剤の方がARBよりも著しい。これは、ACE阻害剤ではAng IIが減少し、それに伴いAng IIを原料とするAng1-7の産生も減少するため、ACE2が代償的に過剰に産生されるからだと推察できる。Ang1-7がACE阻害剤を使わない時よりも過剰に産生されることはなさそうである。

 一方ARBは、アンジオテンシンIIのタイプ1受容体(AT1R)のみを抑制し、抗炎症的に働くタイプ2受容体(AT2R)は抑制しない。また、ACE2を増加させるためにAng1-7が増加する。従ってARBによるACE2の増加程度はACE阻害剤よりも少ないが、全体として免疫抑制状態は過剰となる。

カルシウム拮抗剤も隠れ免疫抑制剤

 カルシウム拮抗剤は、リンパ球やマスト細胞の活性化に必要なカルシウムチャネルを阻害し、免疫を抑制する。そのため、移植にシクロスポリンと併用して拒絶反応を減少させることも報告されている。免疫抑制作用は一般には認識されていないが、ARB同様、「隠れ免疫抑制剤」である。

実地診療では

 これを機会に、高血圧に限らず、ストレスの原因を今一度見直し、中止できる薬剤はないかどうか、見つめ直すことを提案する。

 ただし、急に中断すると危険を伴うものもある。薬のチェック89号1)では、降圧剤や前号で述べた解熱剤やステロイド剤以外についても詳しく述べたので、参考にしていただきたい。

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