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第195回 ◉ 浜六郎の臨床副作用ノート
薬物治療は骨折を減らしたか①

第195回 ◉ 浜六郎の臨床副作用ノート薬物治療は骨折を減らしたか①

 薬のチェック125号1)では、日本骨粗鬆症学会等による「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025年版」(以下GL)2)を批判的に吟味した。その概略を紹介する。

骨折は減少したがGLは検診と薬物を推奨

 50〜60年前には、腰が曲がった高齢者、つまり脊椎圧迫骨折は多かった。栄養の改善とともに腰が曲がった人が急速に少なくなったことは、調査で確認できる。しかし、骨密度が測定できるようになり、ビスホスホネートが骨粗鬆症用剤として利用できるようになった頃から、骨折が増えたので骨密度検診で発見し薬物治療を、と骨粗鬆症関連ガイドラインは推奨し始めた。

骨折率は、2002年以降増加に転じる

 GLでは、年齢別の大腿骨頸部骨折罹患率を1992年から2017年まで5年毎に調査した結果3)を紹介。男女とも70代では低下傾向、90歳以上では上昇傾向がある。女性の大腿骨近位部骨折の発生率(年齢調整なし)が増加していることをもって、骨折が増加していることから検診をし、治療を推奨している。

 しかし、元文献3)のデータを詳細に検討すると、40代、50代は男女ともに、02年を谷として、その後顕著に増えている。60代は07年が谷で、その後増えてきている。これは、その前5年間の50代の人が60代に移行したためと考えられる。70代は、男性は一時停滞しているが全体としては減少傾向、女性は一貫して減少傾向で、むしろ例外的なほどであった。

骨折防止の重要な4本柱

人の体を支える丈夫な骨は20歳頃までにできあがる。特に、胎児期から乳幼児期、女性の初潮前後、20歳前後は重要な時期である2)。GLでは、いずれの時期にも十分な、①栄養(タンパク質とカルシウム、ビタミンD)の摂取、②日光に当たること、③適度な運動の重要性——を述べており、評価できる。

逆境-ストレスー虚血は骨粗鬆症の重大因子

 しかし、④番目の柱としての、ストレス回避による十分な血流の確保、の視点が全く欠落している。会社の倒産などによる失業は、配偶者喪失とともに最大級のストレスであり、社会的孤立・孤独が強いほど骨粗しょう症のリスクが大きいとの報告がある。

 この観点から社会的状況と骨折との関係をみると、1998年以降の大型倒産による40代、50代の自殺者の激増から少し遅れて、骨折も40代、

50代を中心に増加し始めている。企業倒産や、それを回避するためのリストラは、定年前の40代から65歳までに集中する。孤立と経済的疲弊で、強いストレスの上に貧しい食事、運動不足で骨の貯金を使い果たし、骨粗しょう症になり骨折が増加した、と考えれば、説明がつく。

 80代、90代は、戦中、戦後の逆境を幼小児期から思春期を過ごした世代に相当する。70代はその狭間で大型倒産期にはすでに定年を迎え、年金もはじまり、著しいストレスを免れたと考えると説明がつく。

2001年以降導入の骨粗鬆症用剤は貢献?

 01 年のアレンドロン酸に始まるビスホスホネート剤、エストロゲン部分アゴニストのラロキシフェン(04 年)、テリパラチド(10、11 年)、RANK/RANKL システム阻害剤のデノスマブ(13年)、抗スクレロスチン抗体のロモソズマブ(19年)など5種類の骨粗鬆症用剤が00 年以降に導入されたが、00 年前後の骨折率の推移を見る限り、これら薬剤が骨折減少に貢献した形跡は見られない。

参考文献

1)薬のチェック2026:26(125):52-57.
2)骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025年版
3)Takusari E et al. JBMR Plus. 2020;5(2):e10428.9

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