SHUCHU PUBLISHING

病院経営者のための会員制情報紙/集中出版株式会社

未来の会

【「集中」の是々非々 ㊿ 】

【「集中」の是々非々 ㊿ 】

【海外臓器移植斡旋に実刑判決】

「この判決で50年前?に逆戻り・日本のお寒い臓器移植の現状」

海外での臓器移植を国の許可無く斡旋したとした「臓器移植法違反」に問われたNPO法人難病患者支援の会・理事長への判決が懲役8ヶ月の実刑だったのには驚いた。判決の中に「移植を受ける機会の公平性が損なわれる」とあるが、この指摘がなかなか理解出来ない。当然、控訴するだろうから次の裁判を注視したい。

1968年和田寿郎札幌医科大学胸部外科チームでの日本初の心臓移植から1999年に行った大阪大学の2例目の心臓移植まで実に31年を要した。1997年に脳死後の臓器提供が可能となる「臓器移植法」が成立したが、社会風土、倫理、宗教などの世界からの専門家が会議を主導し、この重要な意思決定に医師からの発言は押さえ込まれていた。

2010年の改正では、本人の意思について書面による確認は不要で家族の承諾だけで臓器提供が可能になり、大きく踏み出した。日進月歩の医学の世界で、臓器移植だけが取り残された格好で、患者やその家族には気の遠くなるような40年だった。大きく踏み出したとは言え、2017年の脳死臓器移植は僅か年間56例だ。韓国の10分の1という数字だ。移植の待機患者で一番多いのは腎臓で約14千人、心臓も1千人いる。脳死後の臓器提供者数は年間70〜80人。これにより移植を受けられる患者は年間400人前後だ。

待機する期間は、肝臓で約470日、肺は約900日、心臓は約1200日、肝臓は約15年という数字(出典IRODat 2018年)がある。海外の年間臓器提供者数(100万人当たりのドナー数)と比較しても、スペイン48人、米国34人、フランス27人 イギリス24人、オーストリア23人、韓国9人、そして日本は0.8人となる。上位のスペインやフランス、オーストリアは臓器提供を表明するのではなく、提供を拒否する人だけが表明する。米国や英国は小学校時代からドナー教育がなされている。日本はそんな努力もせず、募金を集めて海外に出る。バブルの頃、米国から「日本人は我々の命も買いに来る」と言う記事が送られて来た。募金を募り、米国へ渡る事を美談と捉えて報道していたが、米国の見方は厳しいものだった。世界共通の認識として「移植は自国で」だ。今からでも遅くはない。日本でも小学校・中学校で是非とも臓器移植についての授業を行い、臓器提供の重要性を教えて欲しい。その中から臓器提供を是とする子供も育つかも知れないし、臓器移植に啓発され、外科医を目差す子供がいるかも知れない。

しかしながら、沈んだままの日本経済と同じく、臓器移植法も「動かざること山の如し」で遅々として動かない。当てにしていた募金もバブル崩壊後は満足に集まらない。移植待ちの患者から見れば「八方塞がり」状態だ。もう国際基準に照らし合わせるべきだ。臓器移植に関する様々な意見がある事は承知するが、患者の声を蔑ろにしていると感じるのは筆者だけか。有識者だけの会議には限界がある。そこに賢者の思考が必要だ。

日本の臓器移植の術後10年の生存率は、95%と世界平均51%と比較してもずば抜けて高く、日本が世界トップクラスの高度な医療を有する事が証明されている。和田心臓移植をトラウマとするのではなく、患者本位を掲げ、世界のトップレベルの臓器移植技術を患者に提供して頂きたい。

Return Top