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未来の会

コロナ禍で崖っぷち「労働弱者」への対策が進まない

コロナ禍で崖っぷち「労働弱者」への対策が進まない
一律10万円給付、中小企業の持続化給付金も1回きり

日本経済は日々、新型コロナウイルスによって危機的様相を深めつつある。既に昨年後半から落ち込み始め、10〜12月期の対前年度GDP(国内総生産)成長率(前期比年率)がマイナス7・1%を記録していたが、そこにコロナ危機が加わって更に見通しが暗澹たるものとなりそうだ。

 ゴールドマン・サックス証券の馬場直彦チーフエコノミストらが4月7日付の同社の「Economics Research」で発表した試算では、20年4〜6月期の実質GDP成長率はマイナス25%と、「GDPデータを遡れる1955年以降で最大の落ち 込み」となるという。

 また、第一生命経済研究所経済調査部の永濱利廣首席エコノミストも、「2020年4〜6月期が最悪となり同7〜9月期以降は回復に転じても、2020年度の実質GDPは前年から▲15兆円程度減少し、経済成長率は▲3・1%となる。さらに、リーマンショック並みに今後のGDPが落ち込むと仮定すれば、今年度の実質GDPは前年から▲29兆円程度減少し、経済成長率は▲5・4%となる」と試算している(「Business Journal」5月1日付)。

宣言延長で新たな失業者は約77万人

 しかも、「緊急事態宣言」が5月31日まで約1カ月延長された結果、新たな失業者は今後約77万人に達すると見なしている。

 ただ、今後の予測で最も厄介なのが、コロナ危機がいつ終息するか見当もつかない点だ。何しろ政府専門家会議の尾身茂副座長ですら、コロナ対策の期間について「半年か1年か誰も分からない」と語っているほど。「緊急事態宣言」を延長しながらも、6月1日以降の事は全く予測不可能だ。再延長という事態になっても不思議ではない。

 当然、GDPの落ち込みが「マイナス5・4%」、失業者数が「約77万人」といった現状では最悪ながら、そのレベルで収まるのかどうか、これも「誰も分からない」。一方で確実に言えるのは、今年前半いっぱいまで経営や生活が持ちこたえられないと悲鳴を上げている層が、膨大に存在するという事実だろう。

 エヌエヌ生命保険が「緊急事態宣言」発令前の3月27〜31日、中小企業経営者7228人に実施した「新型コロナウイルスの感染拡大がいつまでに終息すれば経営的に乗り切れるか」というアンケート調査によれば、「3月末」から「6月末」までが実に59・5%に達した。つまり終息が遠のけば、2度目の「緊急事態宣言」の期日が切れた1カ月後に、日本の全企業数の99・7%を占める中小企業の約6割が消滅しかねない可能性が否定出来なくなっている。

 それでも、いくら大企業と比較して雲泥の差ではあれ、ともかくも中小企業は平均で約2カ月程度「持ちこたえられる」手元資金を何とか確保しているとされる。だがより深刻なのは、2カ月どころか今日明日の食費、家賃すらままならなくなっている、非正規労働者やフリーランスを始めとする雇用保障の極めて弱い働き手の急増にある。

 「コロナウイルスに感染し入院していたが、退院したら雇い止めになった。最後の給与が手取り7万円しかなく支払いが出来ない。昨日も食べてなく、栄養失調になる」

 「ダブルワーク(1つは病院内の保育)をしているが、収入減。貯蓄がないので、来月は家賃の支払いが出来なくなる」

 「自動車関連工場の派遣社員だが、操業停止で自宅待機中。家賃が払えない」

 「昼と夜に飲食店でパートをしている。夜の日本料理店はもう予約がないので休んでほしいと言われ、夜の飲食店のパートも週2回に減らされた。休業手当の話もなく、このままでは家賃の支払いも出来ない」

 これは、労働組合ら約39団体と弁護士や社会福祉士らで構成する「コロナ災害を乗り越える いのちとくらしを守る なんでも電話相談会 実行委員会」が4月18日から2日間に開催した電話相談会に寄せられた、悲痛な声のごく一部だ。両日に寄せられた電話は約5000件あったが、フリーダイヤルには42万件のアクセスが記録されており、相談出来たのはわずか1・2%程度という。

 このため同実行委員会は4月23日、政府に対して「緊急要望書」を提出した。こうした人々の「崖っぷち状態」は「生活や事業の維持のための『補償』が全くなされないまま、外出・業務の自粛要請だけがなされていることの当然の帰結」だとして、「外出自粛・休業要請をするのであれば、『借金』が残るだけの融資や貸付ではなく、安心して休める『補償』(現金給付)がセットで行われるべき」と申し入れた。

切迫感のない「緊急経済対策」の中身

 既に安倍晋三政権は4月30日、参議院で新型コロナウィルスの「緊急経済対策」を盛り込んだ20年度補正予算を成立させたが、「補償」という点では問題だらけだ。確かに「一律10万円給付」がようやく盛り込まれたが、終息の見通しが全く立たないのに1回きり。しかも、実際に国民の手に届くのは5月下旬から6月下旬になるという。生活資金が尽き、「10万円」を一刻も早く「命綱」としたい人々にとってどれほどむごい仕打ちとなる事か。

 ドイツでは、5人以下の事業所・個人事業主に加え、フリーランスの働き手に約104万円、10人までの事業所には約175万円を一括支給しているが(5月11日時点の換算)、額のみならず支給を申請してから数日で現金が振り込まれるスピード感からして、日本とあまりにも隔絶している。

 収入が半減した中小企業に最大200万円、個人事業主に最大100万円を支給する「持続化給付金」も同様だ。既に役所への申請手続きの問い合わせが殺到し、申請者にとって面談出来るのが6月になるケースも珍しくないという。これにしても申請者が1回の支給で乗り切るのは困難で、2次補正が必要となるはずだが、予算成立見込みは6月中旬と遅い。

 そもそも「緊急経済対策」とはいえ、事業規模約117兆円のうち、国民に渡る一律10万円給付の金額はわずか12兆円程度。中にはコロナの「収束後」に行う「Go Toキャンペーン」なるものが今から1・7兆円も計上されており、これが差し迫っているはずの「対策」に値するのか。

 今や全労働者中、非正規が4割にも達し、実質賃金が90年代後半から低迷しているように、歴代自民党政権と財界はこれまで意図的に国民の貧困化を推進してきた。その結果、経済に変動が生じると真っ先に「派遣切り」等で生活に極度の困難を来す膨大な層を生み出してしまった実態が08年のリーマンショックで露呈したのは、記憶に新しい。

 だがそれ以降、19年度の段階で非正規労働者は428万人増大し、フリーランスは300万人以上に上る。こうした「労働弱者」への対策が進んだ形跡は極めて乏しい。現在、社会の隅々から聞こえてくる悲鳴に近い声は、その証明のように思える。

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