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未来の会

第78回 厚労省人事ウォッチング

第78回 厚労省人事ウォッチング

 世界各国の首都に置かれ、相手国政府の窓口や情報収集の拠点となる日本国大使館。大使や防衛駐在官、書記官らとして派遣されるのは何も外務官僚や防衛官僚だけではない。厚生労働官僚も赴任を命じられる事が有る。

 厚労省から派遣されるのは主に事務系キャリアで、現在はアメリカやイギリス、ドイツ、フランス、スウェーデン、中国、タイ等の日本国大使館に勤務している。ノンキャリアや技官系の職種でも僅かながらポストが有る。キャリアなら1等書記官、キャリア以外なら2等書記官として派遣されるのが一般的で、赴任期間は3年だ。

 更に、大使館ではないが、WHO(世界保健機関)やOECD(経済協力開発機構)、ILO(国際労働機関)、JICA(国際協力機構)等に派遣されるケースも有る。

 基本的な任務は、日本政府と各国政府との繋ぎ役になる事だ。厚労大臣が国際会議に出席する際に準備したり、派遣先の社会保障政策や労働政策を調べて本省に報告したりする。海外視察に来た国会議員をアテンドする事も有る。

 基本的に希望者の中から派遣される様だ。中堅職員は「30代半ばから後半の課長補佐クラスで派遣される事が多い。希望する国は聞かれるが、年次のタイミング等も有り、必ずしも希望通りには行かない」と述べる。

 特にアメリカやイギリスが人気で、アメリカにはエース級の職員が派遣されるという。厚労事務次官に迄昇り詰めた樽見英樹・日本年金機構副理事長もアメリカ経験者だ。留学経験が有ればアメリカやフランス等に派遣され、留学経験が無いとタイやインド等に赴任する傾向に有るという。家族が帯同する事も有る為か、治安の悪いブラジル等は人気が無↘いという。

 先述の中堅職員は「希望して派遣される人もいるが、法令改正など激務が続き、ご褒美の様な形で大使館に赴任するパターンも有る」と明かす。準備期間が必要な為、1年半前迄に赴任を言い渡されるというが、「その後は大抵、忙しい部署に放り込まれる」(中堅職員)という。

 事前に外務省で外交官のイロハを叩き込まれる。他省庁の職員だが、過去に中国でハニートラップ↖に掛かった書記官がいた為、語学以外にも研修内容は多岐に及ぶ様だ。

 全体として厚労官僚が赴任する日本国大使館のポストは増えているという。只、人気の無いブラジルの様にポストが途絶えたりするケースも有る。厚労省の幹部経験者は「比較的栄えている国の1等書記官ポストを得た代わりに、外務省から辺ぴな国に2等書記官を派遣しろと言われた事が有る」と証言する。ごく稀に大使になる厚労官僚もいる。女性初の事務次官に就任した松原亘子氏は駐イタリア兼アルバニア兼サンマリノ特命全権大使、香取照幸・元雇用均等・児童家庭局長は駐アゼルバイジャン共和国特命全権大使を務めた。最後の社会保険庁長官だった渡邉芳樹氏も駐スウェーデン特命全権大使に任命された。只、松原氏の場合は、外務省の不祥事による影響で政権与党が赴任を命じる等、特別なケースと言える。大使ポストを増やそうという動きも有るが、外務省が簡単に手放すとは考え難く、時の運という要素も有る。海外志向の有る官僚にとっては、魅力的なポストだ。

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