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中外製薬の抗がん剤臨床試験で「利益相反」

中外製薬の抗がん剤臨床試験で「利益相反」
新専門医制度や日本専門医機構の問題点も浮上

療関係者らが発起人となって組織している「現場からの医療改革推進協議会」のシンポジウムが12月2〜3日、都内で開かれ、登壇した医療人によって製薬企業と研究者間の利益相反や新専門医制度の問題点が指摘された。

 利益相反の問題に関して、南相馬市立総合病院の外科医師である尾崎章彦氏が発表した。尾崎氏が問題視したのは、中外製薬の抗がん剤「カペシタビン」の効果に関する研究だ。

 京都大学教授を中心とした日韓の共同研究グループによる乳がんの臨床試験で、研究成果をまとめた論文は世界最高峰の医学誌『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』に掲載された。論文には、臨床試験の資金提供元である一般社団法人JBCRGとNPO法人先端医療研究支援機構が「研究計画やデータ収集、解析、結果の解釈には関わっていない」とわざわざ明記されていた。しかし、論文の大多数の日本人著者はJBCRG関係者であり、また、論文と併せて掲載された試験プロトコールには、JBCRGが唯一の試験実施主体として記載されていた。

 しかも、中外製薬は2012〜14年度に、明らかになっているだけで、JBCRGに1億円、先端医療研究支援機構に12〜15年度に2億円超の計3億円以上を寄付。両団体という第三者機関を介して、カペシタビンの臨床研究と研究者に中外製薬のカネが流れた可能性があるが、現在の公開データから全貌を明らかにすることは困難だ。さらに、カペシタビンの適応外使用の費用は公的医療保険に不正請求されていた。

 現在、製薬企業から医療者や研究者に直接支払われた資金には公表義務はあるが、資金提供を仲介した第三者機関や医療機関外の臨床試験グループには公表義務がない。尾崎氏はそのことが「利益相反隠蔽の温床になり得る」として、「透明性の確保が喫緊の課題」と述べた。

 尾崎氏が現場の医師の立場で深刻な問題として挙げたのは、国立病院機構や国立病院など62カ所の医療機関で行われた同臨床試験に対して、各施設の倫理委員会がチェック機構の役割を果たしていなかった点である。倫理委は試験参加者の健康や権利を守ることを主目的としているが、企業と研究者・医療者の関係が適正かどうか評価することも役割に追加すべきと提案した。

 また、仙台厚生病院の遠藤希之・医学教育支援室室長兼臨床検査センターセンター長は、新専門医制度が医師偏在を悪化させると指摘。内科と外科の登録状況を集計・分析したところ、過去の認定数と比べ内科は21%、外科は5.9%減少。人口10万人当たりの内科の登録者数は最多の東京都が3.83人、最少の高知県が0.70人と5倍以上、人口100万人当たりの外科の登録者数は最多の東京都が12.86人、最少の群馬県が0.51人と25倍の開きがあった。

 日本専門医機構の在り方も批判。専門医の認定や更新資格判定は各学会に丸投げされるが、更新者は同機構に1万円を支払わなければならない。今後の収入を推定すると年間8億円、これに研修施設認定料収入1億5000万円なども加わり、「お免状ビジネスだ」と批判。累積債務1億4000万円超の背景に、年間1500万円の事務所賃貸料、年間4000万円近い旅費など贅沢三昧ぶりを挙げた。制度が欠陥だらけでもスタートを急ぐのは、「日本医師会が8000万円、日本内科学会が2280万円など各学会も機構に貸し付けている。早くスタートしないと、機構は無収入で貸し倒れになる。そうなれば、債権団体幹部の責任問題になりかねない」と指摘した。

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