【新たなアインファーマシーズ事件】

この記事（1,058文字）は140秒でお読み頂けます。

「東京地検の捜査が始まる地方都市の大学病院？」

その日の気温が34.1度を超えた8月31日、東京の医学･医療界に熱波が走った。

北海道警察が、KKR札幌医療センターが発注した「敷地内薬局の整備事業」を巡り、アインファーマシーズが受注出来るように便宜を図った入札妨害として、札幌医療センター元部長とアインファーマシーズ社長を「偽計入札妨害罪」と「公契約関係競売等妨害罪」でそれぞれ逮捕・起訴した事件。来週11月13日には初公判だ。

そもそもこの事件、入札に参加したアインファーマシーズを除く4社の内の1社からの持ち込み（たれ込み）案件だ。どの会社が最初に持ち込んだのかはいずれ判明するだろうが、4社は当然ながら北海道警察から任意での取り調べを受けていた。並行して相当数の病院関係者も任意での取り調べが続いていた。本来、北海道警察は何としても贈収賄で事件にしたかったが、無理だったのか、今回の罪状となった。贈収賄と今回の罪状とでは、残念ながら事件のランクと言う意味では格段の差がある。

医学医療関係者であれば、この入札の内容を理解されていると思うが、簡単に説明すると「病院の敷地内に調剤薬局を置き患者の利便性を高める」と言う趣旨で、「敷地内薬局の整備事業」の名称で始まった事業だ。患者は、病院の敷地内で処方薬が受け取れる。調剤薬局は患者の獲得が出来、敷地の所有者である病院へ借地分の家賃を支払う。病院側には家賃収入となる。患者良し、病院良し、調剤薬局良しの「3方良し」の構図だ。ただ、一般入札と違い、金額だけでなく、病院側に対する企画提案のプレゼンなども含まれる入札となる。入札の金額は、調剤薬局が病院側へ支払う家賃の額となる。入札日までの数カ月の間に、病院側は入札参加会社から様々な提案を受ける。この間に便宜を図るような話が出ても不思議ではない。営業力のある会社であれば、当然ながら「美味しいささやき」もするだろう。医療センター元部長はそのささやきに負け、アインファーマシーズの担当者らに他社情報を提供し、今回の事件となった。

表題の話はここからだ。今回の事件となった「敷地内薬局の整備事業」の入札は全国各地で行われ、地方の大学病院でも入札を行っている。それらの入札は正しく行われたのか？ 今回の事件と同じ構図があるのではないか？ 北海道警察はアインファーマシーズの本社などへガサ入れをした。多くの社内情報が警察の手の内にある。そして今、東京地検が地方都市の大学病院に狙いを付けているという情報がある。次の事件は「贈収賄」の様相だ。戦々恐々が続く。