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相次ぐ芸能人自殺と「コロナ鬱」の関係

相次ぐ芸能人自殺と「コロナ鬱」の関係
三浦春馬、芦名星、竹内結子らはなぜ死んだのか

7月の三浦春馬さん(享年30歳)、9月の竹内結子さん(享年40歳)、と著名な芸能人の自殺が相次いでいる。

 芸能人に限らず国内の自殺者の数は増加傾向にある。自ら死を選んだ理由はそれぞれだろうが、新型コロナウイルスの影響が影を落としているのは間違いないだろう。

 元々、日本人の自殺率は世界的にみても高い。コロナの影響は長期化が予想され、積極的に自殺を防ぐ取り組みが求められる。

 「三浦さんの一報を聞いて、まさかと思った。連続ドラマの撮影も進んでいたし、公開予定の映画もあった。コロナで収録が止まった番組や舞台等も再開され始めていた時期で、原因に思い当たる節がない」と語るのは、あるテレビ局関係者だ。

 三浦さんは7月18日午後、自宅でぐったりしているのを所属事務所のマネージャーに発見された。同日午後から、TBS系ドラマ「おカネの切れ目が恋のはじまり」(9月放送)の撮影が行われる予定だったという。

 「出演した映画『コンフィデンスマンJP プリンセス編』の公開を控え、亡くなった当日にはフジテレビが前作映画の地上波初放送を予定していた。結局、冒頭に三浦さんを悼むテロップを入れて予定通り放送したが、同日生配信予定だった映画の宣伝番組は中止になった」(芸能担当記者)。

 三浦さんは「せかほし」の愛称で人気だったNHKの「世界はほしいモノにあふれてる〜旅するバイヤー極上リスト〜」のMC等、継続した仕事にも恵まれていた。

 「昨年1月の舞台『罪と罰』では、頬がこけ、無精ひげを生やした青年を熱演した。役作りにかける情熱は並々ならぬものがあった」(同)と仕事に対する責任感の強さを指摘する関係者は多く、それだけに仕事を前にした突然の死の衝撃は大きかった。

経済的家庭的しわ寄せで女性自殺増

 この死が引き金になったかは分からないが、芸能人の自殺は続く。9月14日には女優の芦名星さん(享年36歳)が、20日には藤木孝さん(享年80歳)が、そして、その1週間後には竹内結子さん(享年40歳)が命を絶った。

 一部報道では、藤木さんは「役者として続けていく自信がない」と書かれた遺書を残していたといい、所属事務所も「3月以降は新型コロナウイルスの影響で仕事が少なくなり、また、80歳という年齢もあって外出を控えていて、自宅で過ごす事が多かったようです」と明かした。ただ、来年1月の舞台への出演が決まっていて、全く仕事がなかったわけでもない。

 今年1月に第2子を出産した竹内さんも仕事をセーブしていたものの、テレビ局関係者によると、継続していたCMで新作の露出があった他、配信ドラマの企画も持ち込まれていたという。

 コロナの影響で様々なエンターテインメントが中止や延期を余儀なくされる中、予定に変更はあったにせよ、いずれも芸能活動が全くストップしてしまった状況ではなかったのである。

 全国紙の社会部記者は「芸能人ではない人の自殺は自殺者数の1つとしてしか報じられないが、コロナ禍で国内の自殺者が増加しているのは事実だ」と明かす。

 日本の自殺者数は、1998年に急増して年間3万人を超えたが、2003年をピークに緩やかに減少してきた。ここのところは月1600人前後で推移していたが、今年7月には1818人と急増。8月も1854人と、昨年同月比251人も増えたのである。

 中でも特徴といえるのが、女性の増加だ。男性の増加は約6%だったが、女性は約40%増。40代未満の若い女性の死亡が目立った。

 「一般的に自殺者の多くは男性で、女性は少ない。母数が少ないため増加率が目立つ側面はあるが、若い女性の自殺が増えている事は間違いない」と社会部記者は解説する。この記者によると、遺族への調査や遺書の内容等から、自殺の原因とされるもっとも大きな要因は病気への不安、鬱病等の「健康問題」だという。生活苦や借金等の「経済・生活問題」、夫婦や親子間の不和等の「家庭問題」も多い。

 ではなぜ、ここへきて自殺が増えたのか。その理由の1つと指摘されているのが、「コロナ鬱」だ。

 世界保健機関(WHO)によると、自殺者の97%には、鬱病等の気分障害や統合失調症、アルコール依存等の精神疾患が認められたという。つまり、そうした精神症状を把握し、適切に対処する事で自殺は防げるという事だ。

 しかし、新型コロナウイルスの流行は自殺リスクを高め、助けの手すら届かなくなってしまった。

鬱病リスクを高めたステイホーム

 「コロナ禍で私達の生活は大きく変わった。気晴らしに外食や旅行に行く事が難しくなり、ひたすら自粛の日々。精神的に追い詰められている人からの相談は増えている」と都内の精神科医は話す。

 鬱病の原因の1つとして知られる脳内物質『セロトニン』は日に当たらない事で分泌が減少するとされ、運動すると増えるという。

 つまり、コロナ禍のキーワード「ステイホーム」は、鬱病のリスクを上昇させるのだ。人と会えない、他者との繋がりが実感出来ない環境になった事で、孤独感も深まっていく。自宅で酒を飲んでストレスを発散しようとして、アルコール依存に陥るリスクもある。

 前出の精神科医によると、脳内のバランスが崩れてから鬱病を発症するまでには2〜3カ月かかるとされ、自粛期間が明けて少したってから自殺者が増えた事と重なる。

 また、自殺の最多原因である「健康問題」に加え、「経済問題」も影を落とす。飲食店等の倒産が増えており、経済的に追い込まれる人も増えているのだ。ここに「家庭問題」も加わる。

 自殺予防に取り組むジャーナリストは、「リモートワークを導入する企業が増えたが、男性からは通勤の苦痛から解放されたと好意的な声が聞かれたが、女性からは休校等により子どもの世話の必要性が増えた、1人になる時間がなく夫婦や親子のいさかいが増えた、といった否定的な声が聞かれた」と語る。

 そもそも不安定な雇用で働くのは女性の方が多く、経済的にも家庭的にも、しわ寄せは女性に行きがちだ。こうした背景が女性の自殺が増えた理由とも考えられる。

 予防薬や特効薬がない中、コロナの影響はまだまだ続く。「3密」を回避しながらも、人と人が繋がり、励まし合っていく事で、救える命があると信じたい。

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