SHUCHU PUBLISHING

病院経営者のための会員制情報紙/集中出版株式会社

未来の会

コロナ禍での五輪開催を通して 明らかになった「根深い問題」

コロナ禍での五輪開催を通して 明らかになった「根深い問題」
後藤 逸郎(ごとう・いつろう)1965年富山県生まれ。金沢大学法学部卒業後、90年に毎日新聞社入社。姫路支局、和歌山支局、大阪本社経済部、東京本社経済部、大阪本社経済部次長、週刊エコノミスト編集次長、特別報道グループ編集委員等を経て、地方部エリア編集委員を最後に退職。著書に『亡国の東京オリンピック』『オリンピック・マネー』。

新型コロナウイルス感染症の影響から開催が先送りにされて1年、一時は中止・延期すべきという意見が多数を占めた東京五輪・パラリンピックが開催された。開催期間中はメダルラッシュに沸いたが、一方で500人超の関係者がコロナに感染した。あれほどまで中止論が高まった一大スポーツイベントが、緊急事態宣言の最中にもかかわらず、なぜ開催されたのか。その裏ではどのような力関係が働き、お金が動いたのか。そして、東京五輪から私達は何を学ぶべきなのか。五輪の背景に詳しいジャーナリストの後藤逸郎氏に話を聞いた。

——中止論もあった東京五輪でしたが、結果としてメダルを多数獲得出来、開催して良かったという雰囲気があります。

後藤 コロナが収束していく局面での開催なら納得出来ました。しかし、いつ収束するのかも分からず、ワクチン接種者が半数にも達していない段階で開催したのは非学的で常軌を逸しています。コロナが重症化して亡くなった選手や大会関係者がいなかったのは、たまたま出なかっただけで、絶対出ないという読みがあったわけではありません。世界規模で400万人以上が亡くなっている感染症の流行の中、イベントが成功したから良かったと総括をするものではないと思います。

——あの程度の感染者数なら想定内という意見もあります。

後藤 組織委員会の武藤敏郎事務総長が、開催直前の会見で500人未満の感染者は想定内と発言しました。しかし、事前にその想定を公表していたわけではありません。20人も30人も重体になれば「想定内」とは言わないと思いますが、1人ぐらい重体化するという想定はなかったのかと思います。組織委が細かいデータを公表しないので、重体化しなかったのはワクチンを打っていたからなのか、たまたま誰も感染しなかったのか分かりません。終わり良ければ全て良しではなく、後遺症まで含めてきちんとデータを公表すべきです。

——コロナ対策で導入された「バブル方式」の効果をどう評価しますか。

後藤 あれは自称で、五輪をやるための方便にすぎないと思っていました。500人超の感染者が出た事からも、それは明らかです。本当のバブル方式は、米プロバスケットボールが米フロリダ州のディズニーランドのような場所を丸ごと借り切って、誰もそこに寄せ付けない状態を作り出してやりました。ところが、東京五輪は外部の人の出入りが基本的に自由で、選手村に滞在しない選手団もいました。メディアはバブル方式の崩壊と表現しましたが、最初からそもそもバブル方式ではないのです。

——マスコミの姿勢も腰が据わってないイメージを受けました

後藤 大きな理由は、民放がテレビ放送権を買い、電通等の広告代理店から広告枠を売ってもらう仕組みにあります。共同体のようなもので、「いち抜けた」と言わない限り、五輪を中止しろという話はしぼんでしまいます。民放は自力経営なので、広告主は大切です。しかし、報道機関である以上、広告主に経営を左右される事をはっきり表明すべきです。そうすれば、受け取る方も割り引いて判断出来ます。新聞についても、今回は6社が組織委のスポンサーになっています。つまり、新聞社も当事者、主催者側という事です。

続きを読むには購読が必要です。

 

LEAVE A REPLY

*
*
* (公開されません)

COMMENT ON FACEBOOK

Return Top