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未来の会

【「集中」の是々非々 09 】

【「集中」の是々非々 09 】

「地に落ちた権威・WHO」 

「日本政府も同様の危機にある」

2週間前の旧聞。旧知のフランスの大学法学部教授よりWHOは嘆かわしいとメールが届く。新型コロナウイルスでWHOテドロス事務局長のコメントが世界中の注目を集めているが、彼のコメントはそれこそフェイクだと言う。60を超える世界の国や地域が中国からの入国制限をした事について「世界的なパンデミックにはなっていない」「渡航や貿易を制限するのは不必要であり早計だ」とコメントし同時に「中国政府の取っている対策は高く評価出来る」とWHO執行理事会で発言した。これに対しフランス人記者から「中国に配慮し過ぎているのはないか」「中国を庇う理由はなにか?」と言う質問が飛び交い、テドロス事務局長は強い口調で「良い手段を良い手段と評価して何が問題なのか?」と反論。後味の悪い会見だった、日本で言う忖度をするようなWHO事務局長は意味を成さないという厳しい内容のメールだった。
 各国は得体の知れない新型コロナウイルスに健康的不安とその後に続く経済的不安の二つの理由で怯えている。2003年、中国から発生したSARSが世界経済を大混乱に陥れたが、今回はその比ではない事を知っているからだ。中国が世界経済に与える影響力は20年前とは比較にならない程に巨大だ。新型コロナウイルスが世界経済に与える影響は計り知れない。だから世界の多くの国は用心に用心を重ね、渡航や貿易の制限を掛け始めた。過去のSARSに学んでいる。
 しかし、筆者はこのSARSに最も学んだのは中国だと気付かされた。この時に世界中とWHOから袋叩きにあった中国。そのWHOを牛耳ってしまえば、世界の世論を操作出来ると考えたに違いない。テドロス事務局長がWHOの事務局長選挙に出た時に中国は一気呵成に応援を始めている。今、テドロス事務局長が中国の支援を受けている事は周知の事実だが、彼の母国エチオピアも中国から巨額の投資を受けている。因みに、最近は新型コロナウイルスを取り上げるテレビ番組に登場し解説に忙しい「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」副座長の尾身茂氏は2006年にWHOの事務局長選挙に立候補している。残念ながら中国の圧倒的な支援を受けた香港のマーガレット・チャン氏に破れている。この時、尾身茂氏の選挙応援演説をスイス・ジュネーブで行ったのは当時、厚生労働大臣政務官だった前環境大臣原田義昭氏だ。
閑話休題。
 テドロス事務局長は「全ての国々が証拠に基づいた適切で正しい対応を取るべきで有り、WHOは助言もする」と力説し、渡航や貿易の制限をする必要は無いとの認識を強調したが、彼としては中国の習近平主席に恩返し出来る絶好の機会と捉えたに違いない。しなしながら、ついに3月11日に「パンデミック」を表明した。世界的感染が12万人を超え、死者は4600人を超えた今、当然の事だ。テドロス事務局長の発言でWHOの信用は失墜した。これは罪深い。しかし、今、心配なのは日本の信用失墜だ。それは日本が公表する感染者数にある。イタリアのメディアは日本が感染者数をコントロールしていると書く。スイスの医療関係者もPCR検査キットの提供を日本政府から断られたと話す。感染者数に隠蔽や操作があると疑われれば日本政府の国際的信用度は一瞬で落ちる。海外は「アンフェア」を最も忌み嫌う。日本がアンフェアな国だと見なされた瞬間に全てが終わる。その時にいくら日本は安心安全だと叫んでも、時既に遅しだ。オリンピック開催を目前にして世界中が日本を見ている。我々が抱く「なぜ、PCR検査を受けられないのか?」と言う疑問を世界中の人々も感じている。今、安倍政権の言葉に寸分の隠蔽もあってはならないし、この後に及んで中国やアメリカを忖度する必要はない。「頑張れ!日本!」と叫びたい。(2020/03/16)

 

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