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未来の会

第222回 厚労省ウォッチング
高額療養費制度の負担上限額引き上げ、再見直しか

第222回 厚労省ウォッチング高額療養費制度の負担上限額引き上げ、再見直しか

医療費の窓口負担を抑える高額療養費制度の月の負担上限額が8月より引き上げられた。基準額は4〜7%増となり、更に来年8月には最大38%アップする。上野賢一郎厚生労働相は「制度の持続可能性確保とセーフティネット強化の両立を図った」と語る。だが、患者への打撃は大きく、同省内からは「再見直しを余儀無くされるかも」と見立てる声も聞こえてくる。

     心疾患と肺炎で関西の公立病院に入院中の母親(87)を介護してきた女性保育士(59)は同月からの高額療養費制度見直しに納得がいかない。7月迄2万5000円弱だった月額負担は8月から1000円ほど増えた。「入院すると、おしめ代、パジャマのレンタル、棚やテレビの使用料等、保険外の負担が月に数万円にも上る事を思い知りました。保険料を払ってきたのだから、せめて高額療養費は抑えて貰わないと入院出来ない人も出てきてしまう」と訴える。

 高額療養費は年収別に、医療費の窓口負担について月々の上限額を定めている制度だ。現役世代と70歳以上では異なるが、年収約370万〜約770万円の現役の場合、7月迄の月額上限(基準額)は8万100円だった。それが制度見直しにより、8月からの基準額は7%増の8万5800円に引き上げられた。

 引き上げは2026年度、27年度の2段階となっており、来年8月からは年収区分が細分化された上で再び上限額がアップする。最も影響を受ける年収約650万〜約770万円の中堅所得層は、基準額(現行8万5800円)が11万400円に跳ね上がる。今年7月以前からすると38%もの負担増だ。24年12月に示された当初案では、この年収区分の基準額は13万8600円(73%増)とされていたが、患者団体等の反発を受けて撤回され、現行策に落ち着いた経緯が有る。

 高額療養費制度の上限額アップは、現役世代の保険料軽減が主目的だった。但し、新たに年間上限額(年収により18万〜168万円)を設定する等の負担緩和策も導入しており、長期療養を要する人の中には負担が下がる人も出てくる見込みだ。それでも患者団体からは「負担増により必要な治療を控える人が出てくる恐れがある」と懸念する声が上がっている。

 世界保健機関(WHO)は、可処分所得から住居費や食費等を引いた金額に対する医療費支出の割合が40%を超えると、貧困に陥る「破滅的医療支出」に該当すると定義している。日本の低所得層では4割程度の人が該当する、との試算も有った。厚労省は今回の年間上限額設定で年間所得200万円以上の人の医療費(年間)は破滅的医療支出を下回る、と説明しているものの、患者の不安は拭えていない。乳がん治療中の横浜市の30代女性は「私は38%の負担増になる年収層。医療費だけでなく、月々1〜2万円のウィッグのメンテナンス料金等の出費も重いのに」と話す。

 高額療養費の割合は国民医療費(約48兆円)全体の7%弱と低く、見直しによる医療費抑制効果は2450億円に止まる。元々、厚労省は高額療養費制度を「日本の医療保険制度の根幹」と位置付け、「窓口負担3割と言いながら、制度によって実効負担率を2割に抑えてこられた」(幹部)と誇ってきた。高額療養費は命に関わる重病患者を支える制度でもあり、治療を控える人が出る影響は大きい。にも拘らず、見直しによる保険料軽減効果は1人当たり月額約117円(本人負担分)に過ぎない。

 「メリットとデメリットを比べると、デメリットがやや目立つのは確か」と厚労省幹部。同省内では見直しを求める声の高まりに備え、軽症での受診機会が多い高齢者について、3割負担の対象を広げる事で負担を求めていく等の代替案も練られている。

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