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未来の会

第220回 厚労省人事ウォッチング
社会保障負担率引き下げの先に未来は在るか

第220回 厚労省人事ウォッチング社会保障負担率引き下げの先に未来は在るか

高市早苗政権は7月に策定する経済財政運営の指針「骨太の方針」原案に、国民所得に占める社会保険料の割合を示す「社会保障負担率」の目標について検討を進めると表記した。医療や介護に切り込んで同負担率を引き下げ、現役世代の「手取り増」に繋げる狙いだ。「ハードルは高い」と見つつ、警戒感を隠さない厚生労働省に対し、同会議の民間議員は「重要なのはその数字を本当に引き下げる事」と迫っている。

 「『現役世代の保険料率の上昇を止め、引き下げていく』との方針を実現する為、マクロ的な社会保障負担率の目標について検討を進め、社会保障改革について2026年度中に改革の具体化と工程の明確化を図り、順次実施すべきだ」

 高市首相は5月22日の経済財政諮問会議をこう締め括った。この日の民間議員の提案をなぞった指示で、会議では「負担を増やさなければ支えられない社会保障から脱却するべきだ」(南場智子ディー・エヌ・エー会長)といった意見が出されていた。骨太の方針の原案には首相発言通りの文言が記された。

 社会保障負担率は、2000年度(12・9%)から20年度(19・4%)に掛けて、ほぼ伸び続けてきたが、21〜︎23年度は3年連続で減少、民間議員の試算では25、26年度も前年度を下回る見込みだ。民間議員は減少に転じた理由に関し「国民所得の増加や制度改革等が背景」としつつ、更なる引き下げを求めている。首相が消費税減税を「悲願」とする高市政権では、与党の日本維新の会が「保険料負担軽減」を強く訴え、又野党側も国民民主党が「手取り増」を掲げる等、与野党で「現役の負担軽減」を競い合っている。

 しかし、厚労省幹部は「マクロで言えば、日本の社会保障負担率は重い方ではない」と言う。仏、独等負担率20%超の国が居並ぶ中、日本は23年度18・1%である。税と社会保険料を合わせた国民負担率で国際比較をすると、OECD(経済協力開発機構)加盟の35カ国中、日本は26位と中低位に在る。

 日本総合研究所シニアフェローの翁百合氏による「翁カーブ」が可視化させた日本の低所得世帯の税・保険料負担率が国際的に高い問題は残る。但し、厚労省OBは「当該の低年収世帯に別途手当をすれば良く、マクロで負担率を下げるのは別の話」と言う。

 そもそも社会保障負担率を引き下げるのは困難、との指摘も有る。ニッセイ基礎研究所の野村彰宏主任研究員の試算に拠ると、高齢者の医療費窓口負担について3割負担を74歳迄、2割負担を79歳迄、引き上げると、高齢者の自己負担は5000億円程度増す。只その分を全て保険料引き下げに充てても社会保障負担率、現役の保険料率(使用者負担分を除く)の引き下げ幅は各0・1ポイント程度に留まり、低所得者への負担軽減策も勘案すれば、更に引き下げ幅は小さくなるという。つまり医療、介護、年金等に相当の大なたを振るうか、分母の国民所得を大きく伸ばさない限り、多くの国民が納得する負担軽減には結び付かない。

 25年の合計特殊出生率は1・14と10年連続で過去最低を更新した。片や、高齢化率は年々伸び続け30%に近付いている。支え手となる現役世代が減る中、医療や介護を必要とする人は今後も増えていく。にも拘わらず、高市政権は飲食料品の消費税率を27年度から2年間に限り1%に下げ、税率を戻す際には新たな給付制度を始めるとしている。社会保険料も税も引き下げておいて本当にこの先社会保障制度は成り立つのか。高市政権のスタンスに危機感を抱く厚労省OBは、口の重い現役職員の思いを代弁する。

 「月の保険料が数百円安くなる代わりに、医療や介護を安心して受けられなくなる社会、その安心をもっと高い民間の保険料で買う社会になってもいいのか」

6月の諮問会議での高市首相(首相官邸HPより)

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