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未来の会

「社会保障制度改革」議論で対立する自民と維新

「社会保障制度改革」議論で対立する自民と維新

70歳以上の高齢者の3割負担は現実的か

「社会保障政策の方向性を決める上で、今、最も重要な会議」とされるのが、自民党と日本維新の会の実務者が参加する「社会保障制度改革協議体」だ。

 同協議体は昨年秋の連立政権発足後、連立政権合意書に基づいて設立された。維新が求める13項目について協議しているが、高齢者の窓口負担の見直し等3項目だけは最後迄もつれた。実務者達によってどの様に議論は推移していったのか。証言等を基に振り返る。

 協議体は昨年末から議論を重ねており、 先ずOTC類似薬の追加負担等の改革案を纏めた。そして今回は、政府の最重要課題や予算編成の方向性を示す「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」への記載に向けた議論がテーマとなっていた。会議は衆院選後に再開され、開催は月に1回程度だったが、議論が煮詰まってきた6月以降は、頻度を上げて開催されてきた。

 自民党側の実務者は、田村憲久政調会長代行、後藤茂之元厚生労働大臣、鬼木誠厚労部会長、勝目康衆院議員、星北斗参院議員の5人。対する維新側は、梅村聡元厚労政務官、阿部圭史衆院議員、伊東信久衆院議員、新実彰平参院議員が出席。この他、財務省や厚労省、文科省の担当部局等も陪席している。

思想が異なる両党が真っ向から対立

 両党による議論の中で最も対立したのが、高齢者の窓口負担の見直しだ。昨秋の連立政権合意書には「医療費窓口負担に関する年齢によらない真に公平な応能負担の実現」と書かれており、これをどう具体的に見直していくかは協議の最大テーマだ。

 維新側は高齢者の窓口負担を増やし、現役世代の負担を軽減したいのに対し、自民側は将来的な負担増は避けられないとしつつも、来るべき国政選挙等を考慮すれば、改革のスピードを緩めたい意向だ。

 4月以来、久方ぶりに開かれた6月9日の会議︎では、社保に対する思想の異なる両党が正面から︎ぶ︎つかり合った格好となった。

 維新は、「年齢により一律に区分する現行の仕組みを見直す」「所得、資産等の負担能力に応じた公平な負担の在り方を検討する」「金融所得の反映、マイナンバー制度を活用した所得、資産情報の把握基盤の整備を進める」「低所得者等に配慮する」「後期高齢者は原則3割負担。公費負担を確実に組み入れる」と主張した。

 この主張に、自民側の出席者は「とにかく3割負担とするのは乱暴」「1割負担、2割負担の方々をいきなり3割負担にしたら負担増となる。そうそう簡単な話ではない」等と反論が相次いだ。

 そうした中で田村氏は「80歳を超えると100万円近く医療費が掛かる。疾病リスクの違いが有り、加齢に伴うリスクも有る。3割を負担する人はどういう人達か。支出行動等も含めて、検討すべき。原則3割とは大方3割であり、一部そうでない人達、という事を本当に出来るのか」と慎重な見方を示し、次回に持ち越した。

  18日を挟み、具体的な動きが有ったのが25日の会合だ。自民党側から高齢者の窓口負担に関する在り方について考え方が示されたからだ。それによれば、「年齢によらない真に公平な応能負担を実現する為、70歳以上の高齢者の医療費窓口負担割合について、原則3割となっている現役世代との負担の公平性の観点から見直しを行う。その改革工程表を令和8年度末迄に策定する」等と記した。

維新が譲らない高齢者3割負担化

 これに対し、維新は席上、「原則3割となっている現役世代と同様とする為の」と修文を要求。期限も「令和8年末」を求め、高齢者の原則3割負担を譲る気配を見せなかった。維新の阿部議員は「OTC類似薬同様、制度設計について年末迄に合意すれば、次の通常国会、予算編成に反映可能だ。年度末だと1年改革が遅れる」と主張した。

 整理すると、維新の主張した案文は以下の通りだ。「年齢によらない真に公平な応能負担を実現する為、70歳以上の高齢者の医療費窓口負担割合について、原則3割となっている現役世代と同様にする為の改革工程表を令和8年末迄に策定する。その際、高齢者の就業率の上昇や健康寿命の延伸、医療費水準や受診状況の動向、家計の状況等も踏まえ、必要な受診が確保される様、適切な配慮措置を講じつつ、外来特例の廃止を含めた抜本的な見直しや、前期高齢者(70歳から74歳)及び一定以上の所得の有る後期高齢者3割負担化については、現役世代の負担軽減の観点からの公費負担の在り方と共に早急に検討を行い、その速やかな実現について令和8年末迄に結論を得る。又、低所得者への適切な配慮措置を講じる為に、マイナンバー制度を活用した所得・資産情報の把握基盤の整備を早急に進め、制度への反映を進める」

埋まらぬ自民と維新の溝

この様な維新の案文に対し、自民側からは「自民から押し返したつもりが、更に大きな押し返しが有った」といった不満が漏れた。更に「収入、貯蓄も無い人達を3割負担にするのは問題だ」「負担能力を超えた部分は子供が負担する。それは現役世代支援になるのか」「来年、再来年の選挙への影響も考える必要が有る。高齢者は猛反発する」等と反発する意見も相次いだ。

 締めの挨拶で、阿部議員が「中々、両党の溝が埋まらない。厚労省、財務省からはこれ迄こういう風にやってきたので、という意見を頂いているが、それがまかり通るのであれば、政権交代不要ではないか」と不満を吐露する場面もあった。これに対し、田村氏は「今日はバチバチだったが良い議論になった。維新イズムも理解する。双方のいい所を出し合って良いものにしていきたい」とフォローした。

平行線の維新と自民には内情有り

 平行線を辿っているかの様に見える自民と維新の協議だが、実は維新内でも一枚岩ではないという内情が在る。自民との協議をする前に、維新内の議員でインナー(中枢幹部)会合を開き、案文作成を通して意思統一を図っている。しかし、或る大手紙記者は「維新内でも意見が分かれている。自民や役所との事前協議を通じて現実路線に理解を示しつつある議員と、維新が掲げた公約等から原理原則を主張する議員の間で意見の相違が有り、最終的に後者の意見に圧倒されている感じだ。梅村氏や阿部氏はどちらかというと前者だが、数で言うと後者の方が多い」と明かす。

 一方、自民の議員達は事前に厚労省等からレクを受けており、維新の主張を崩せる様な関連資料等を受け取って臨んでいる。自民党厚労族の或る秘書は「こう発言して下さいと迄は言わないものの、或る程度厚労省が主張してもらいたい、議員もそう考えているとなると、協議体でも役割分担して発言してもらっている様だ」と明かした。

 両党の議論が平行線と言えど、維新内では副首都構想や憲法改正等に比べ、社会保障制度改革の優先順位は低い。協議体の議論が山場を迎えている頃、党幹部は「現場に任せているが、落ち着く所に落ち着くしかない。原則3割と言っても、今直ぐに実現するのは困難だろう」と漏らしていた。

 その反面、自民内でも「公明が連立離脱し、少数与党で維新と組んでいた頃と異なり、今では衆院で圧倒的な議席を保持している。年末と今では維新に対する重要性は変わってきている」(自民関係者)との見方が出ている。

 最終的に、70歳以上の高齢者の窓口負担については「低所得者等の必要な受診が確保される様、適切に配慮する事を前提として、原則3割となっている現役世代との間で年齢によらない真に公平な応能負担を実現する観点から見直しを行う。その為の改革工程表を令和8年末迄に策定する」という表現に落ち着いた。

 昨年はOTC類似薬の追加負担を勝ち取った維新だが、今回は自民に押し切られた形になった。

 

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