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「製薬マネーと医師」の抜き差しならない関係

「製薬マネーと医師」の抜き差しならない関係
医師とジャーナリストがタッグを組んだ調査

医師と製薬会社との不適切な関係が批判される中、「カネの流れは何を明らかにするのか:探査報道『製薬マネーと医師』」と題したシンポジウムが8月25日、東京・新宿区の早稲田大学で開かれた。シンポでは、ジャーナリストと医師が登壇し、活発な議論が行われた。

 主催はNPO法人ワセダクロニクルとNPO法人医療ガバナンス研究所。ワセダクロニクルは2017↘年に世界探査ジャーナリズムネットワークに加盟。医療ガバナンス研究所と共同で製薬会社の医師への支払い額などをデータベース化し、18年6月から調査報道「製薬マネーと医師」をサイトから発信している。

 シンポジウムでは最初に、医療ガバナンス研究所に所属し、ナビタスクリニック立川(東京・立川市)などで内科医師を務める谷本哲也氏が「なぜ、製薬会社からの医師への資金提供の透明化が必要なのか」をテーマに基調講演を行った。谷本氏は冒頭、講演のポイントとして以下の3点を示した。

●製薬会社は薬の宣伝目的で、講演料などの形で医師へ資金を提供している。しかし、国民皆保険の下、資金の源は国民の税金にある。

●合法的な資金提供でも、医師の判断に影響を与え、不要な処方の増加など、患者や社会に不利益となる可能性がある。

●節度ある資金提供の実現には、実態の透明化・情報公開が必須だが、日本ではまだ不十分。国民が問題意識を持ち、声を上げる必要がある。

 谷本氏は医師が処方を決める際のベースとして、医学教科書、臨床ガイドライン、医学雑誌・論文、周囲の医師の影響、自らの臨床経験、そして製薬会社が提供する情報を挙げた。それぞれ一長一短があるた↖め、医師は総合的に考えて判断するが、現場では白黒つけられない中で、臨床的な判断をしなければならない場面が多くある。正解がない状況で薬を選ぶ際、考慮するのが医療界の“権威”の発言だと指摘した。

副収入2000万円以上の医師も

 製薬会社側にも事情がある。他社を圧倒するような画期的な新薬が出ず、各社の薬も薬効に大きな差がない中、売上を伸ばさなければならない。製薬会社は前述の“権威”、業界で言う「キー・オピニオン・リーダー」(KOL、販売促進に影響力を持つ医師)に自社の薬を勧めてもらうため、講演料やコンサルタント料、原稿料などの形で資金を提供するという構造を示した。

 ワセダクロニクルと医療ガバナンス研究所の共同調査によると、製薬会社(日本製薬工業協会〈製薬協〉加盟71社)から医師約10万人に総額約266億円(2016年)が提供された。1人当たりで単純に割ると、約26万6000円だが、「100万円以上」を受け取った医師は約47

00人で、約5%にすぎない。このうち、「1000万円以上」が96人、「2000万円以上」も6人いた。つまり、一部の医師に製薬会社からの支払いが集中していた。

 内訳は、製薬会社が主催する講演会への講師謝礼が約8割の約223
億円、新薬開発への助言などに対するコンサルタント料が約32億円、製薬会社が発行するパンフレットなど書く原稿の執筆・監修料が約11億円である。

 製薬会社から医師への資金提供の透明化は世界的な流れだ。米国では、新薬の治験で少年が死亡したゲルシンガー事件(1999年)以降、製薬マネーと医師との関係を透明化する動きが加速。オバマ大統領が進めた医療保険改革法の下に「サンシャイン条項」ができた。同条項によって、製薬会社や医療機器会社から医師に対する10㌦以上の支払いは2013年から、医師の個人名とともに情報公開が義務付けられた。

 日本の場合、製薬協はデータベースを作っておらず、製薬各社も公開方法がバラバラだったり、データ利用が禁止されたり、飲食費などの個別データがなかったりするなど、様々な障壁を設けて渋々見せている状況だ。医療機器会社はそもそも情報公開していない。

 谷本氏は「権威の発言だからといって、絶対正しいと単純に信じてはいけない。製薬会社からの資金提供などが分かれば、どのような立場で発言しているかが分かる」と述べた。

 続いてパネルディスカッションが行われ、谷本氏、ワセダクロニクルの取材・報道の総責任者(編集長)の渡辺周氏(元朝日新聞記者)、医療ガバナンス研究所理事長でメールマガジン「MRIC(医療ガバナンス学会)」編集長の上昌広氏が登壇した。

 渡辺氏は製薬マネーをチェックする意義について、「薬の処方権は医師しか持っていないので、それに関わるお金の流れはチェックしなければならない。日本の場合、政治とカネに比べて法整備があまりなされていない。贈収賄で事件化する場合も、国公立大学の医師しか対象にできない」と指摘した。

 医師が製薬会社から謝金を受けることに対して、上氏は「問題はごまかしていること。製薬会社の販売促進で謝金をいくらもらっていると、堂々と言えばいいのに、研究に必要だとか、出せと言ったら嘘を書くとかいうのは、医学部の教育者としてやってはいけない」と述べた。

「薬価算定組織」委員長も1000万円超

 ワセダクロニクルは「製薬マネーと医師」の報道で、薬価を決める中央社会保険医療協議会(中医協)の「薬価算定組織」の委員11人のうち、製薬会社から講師謝礼やコンサルタント料などを得ていた9人の平均受領額は502万円で、委員長の秋下雅弘・東京大学教授(老年病科)ら3人は1000万円を超えていたことを突き止めている。

 金額が最も多かったのは、倉林正彦・群馬大学教授(循環器内科)の1171万円。次いで、秋下・東大教授の1157万円、弦間昭彦・日本医科大学学長(呼吸器内科)の1043万円だった。秋下教授に謝金を支払った製薬会社は第一三共が562万円、武田薬品工業が240

万円、MSDが100万円などだ。なお、歯科の委員2人は謝金を受領していなかったという。

 渡辺氏は「薬価算定組織の実態は表に出ておらず、委員が誰かも分からなかった。薬価を決めている委員が製薬会社から謝金を受けている事実を隠すのは良くない」と憤る。

 谷本氏は「『自分は優秀だから、お金をもらって当然』と思っているのが医者の世界。『お金をくれないなら、薬を使わないぞ』と脅しをかける場合もあるので、製薬会社だけが悪いわけではない」と医師の側の問題点を指摘した。

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