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未来の会

第205回 厚労省ウォッチング
岐路に立つジェネリック産業 終わり無き消耗戦

第205回 厚労省ウォッチング岐路に立つジェネリック産業 終わり無き消耗戦

先発薬(新薬)の特許の切れた後に発売される後発薬の普及率(数量ベース)が2024年10月時点で90・1%と成り、初めて9割を超えた。同月から、後発薬が出ている特許切れの先発薬、長期収載品を望む患者に追加負担を求める制度が始まった事が背景に有る。厚生労働省は主要な医療費削策として後発薬普及の旗を振って来た。只、幹部の口からは「特許切れの薬の市場は何れ頭打ちになる」との危惧が漏れる。

後発薬は特許切れの先発薬と同成分で作られる。薬価が先発薬の50%と算定される等、医療費抑制(24年度の推計で約1・3兆円)に繋がる。政府は29年度末迄に数量ベースの普及率を「全都道府県で80%以上」としていた。

普及率の伸びを後押ししたのが、昨年10月から長期収載品を希望する患者に「選定療養」を適用し、後発薬との差額の4分の1を追加負担として徴収し始めた事だ。とりわけ子供の患者の間で後発薬が急激に広まっている。厚労省は自治体の医療費無料化等で薬代も掛からなかった子供の一定数が、無料のままとなる後発薬に切り替えたのが要因と見ている。

但し、後発薬を取り巻く課題は少なくない。普及には安定供給が不可欠だが、品質不正問題を機に5年近く供給不安が続く。日本製薬団体連合会の今年1月の調査でも後発薬約8000品目中、依然26%の約2000品目が出荷制限・停止状態と成っている。

品質不正問題は改めて後発薬への不信を招いた。先発薬と添加物や製造過程が異なる為、希にアレルギー反応等の副作用を引き起こす事も有る。其の解消を狙い、「オーソライズドジェネリック」(AG)も広まって来ている。先発薬メーカーから許諾を得て製造・販売される後発薬で、原薬から製造方法等まで全て新薬と同じ、というものだ。

とは言え、AGには原薬、添加物、製造方法・場所が先発薬と同等の「オート・ジェネリック」と、原薬の仕入れ先や製造場所が先発薬とは異なるものが有る。オート・ジェネリックは後発薬に義務付けられている、血中濃度等の生物学的同等性(BE)試験が不要なのに対し、他のAGはBE検査を要する。厚労省の担当者は「こちらは普通の後発薬と大差無い。なのに医師や薬剤師でも違いを知らない人がいる」と話す。

AGは先発薬の特許切れ前でも発売出来、新薬市場を浸食する。これ迄は先発薬メーカーが子会社等にAGを出させるのが主流だったが、関連企業の他にも許諾が広がれば先発、発薬メーカーとも大きな影響を受ける。

そうした中、イスラエルの大手製薬企業「テバ」は海外の投資家向けの決算説明会で、日本の後発医薬品事業を25年中に売却する方針を示した。撤退理由は明確にしていないが、選定療養の適用を含めて日本の特許切れ医薬品市場に見切りを付けたとも言われる。

選定療養の適用で長期収載品は先細りが予想される。後発薬は長期収載品のデータを前提に安全性や効能を謳っている。新たに見つかった副作用等も長期収載品を手掛ける先発薬メーカーから報告を受ける例が多い。長期収載品の減少に依って「情報源」を失う事は、後発薬メーカーにもマイナスとなる。

国内市場の苦境を受けて後発薬大手、沢井製薬は17年4月、米国の後発薬メーカーを1155億円で買収した。が、結局は昨年1月に台湾企業に売却し、国内事業一本に回帰した。米国もインド系の後発薬メーカーが犇めき、勝算を見込めなかった様だ。厚労省幹部は「先発薬、後発薬を問わず、右肩上がりの時代は終わり。生き残れるのは真に画期的な新薬を造れる企業で、国としてもそうしたメーカーの育成を後押しするしかない」と話す。

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