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未来の会

医療法改正により明確化されたオンライン診療

医療法改正により明確化されたオンライン診療

都道府県知事への届出対象とし医療格差解消へ向け整備

高齢化に伴う医療ニーズの変化や人口減少を見据え、地域に於いて良質且つ適切な医療を効率的に提供する体制を構築する必要に迫られている。その為、地域医療構想の推進、医師の偏在是正に、オンライン診療の普及や美容医療に係る規制の整備、医療情報の利活用の推進等を目的とする医療法等の一部を改正する法律が昨年12月に成立・公布された。この内オンライン診療に関する規定は今年4月1日に施行された。

 今後ますます高齢化が進む一方、都市部への人口集中も続く。地方では高度な医療機関の整備が難しく、特に産科や小児科等で医師不足が顕著となっている。患者が自由に医療機関を選べない地域も有り、少数の医師に負担が集中している。こうした医療格差を少しでも是正する手段として整備されてきたのがオンライン診療である。

 オンライン診療は、これ迄主として厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に基づいて運用されてきた。指針は、医師と患者の間で行われる遠隔医療について最低限遵守する事項と推奨される事項を定めている。これらを守る事で、医師法第20条が禁じる「無診察治療等」には当たらないと解釈されてきた。今回の改正により、オンライン診療の定義と実施基準が医療法に明記され、指針も法改正に合わせて改訂された。

 オンライン診療は対面診療と適切に組み合わせて行う事が基本である。初診から行う場合は、原則として患者の既往歴や服薬歴を把握している地域医療機関の「かかりつけ医」が担当する。但し、診療情報提供書、健康診断の結果、お薬手帳等から必要な医学的情報を把握出来、医師が安全に実施出来ると判断した場合や、診療前相談を行った上で実施する場合、或いはかかりつけ医がいない場合は、かかりつけ医以外によるオンライン診療も認められる。

有用である反面、様々な課題が存在

 オンライン診療は医療へのアクセスを改善する一方、万能ではない。オンラインでは触診や検査が出来ず、映像や音声等から得られる情報にも限界が有る。症状によっては正確な診断が難しく、対面診療へ切り替える判断が必要となる。画面上では軽症に見えても、検査等を行わなければ重い病気を見逃す事が有る。利便性だけを優先し、必要な対面診療が遅れる事が有ってはならない。オンライン診療に適さない症状や緊急性の高い症状については、対面診療への切り替えや速やかな受診を促さなければならず、医師には、オンラインで診察を続ける事の危険性を見極める能力が求められる。

 又、高齢者やIT機器の操作に不慣れな患者にとっては、端末の操作や予約手続き自体が障壁となる。通信環境の不備やシステム障害への備え、家族や支援者を含めた操作支援の体制も欠かせない。

 医療機関側にはコスト面での課題も有る。診療内容によっては対面診療より診療報酬が低くなる場合が有り、通信システムの導入・維持費、情報管理等の負担も生じる。診療映像や個人情報が漏洩すれば、患者が受ける被害は大きい為、利便性を優先するあまり、安価で安全性の低い通信サービスに依存してはならない。単にオンライン診療の件数を増やすのではなく、対面診療と組み合わせながら安全性と採算性を両立出来る運用体制を構築しなければならない。

 加えて、本人確認と合意形成も必要となってくる。患者の身分証を確認すると共に、オンライン診療の限界、診察を中止する可能性、対面診療へ切り替える場合等を事前に説明しなければならない。医師も顔写真付きの身分証明書で氏名を示し、医籍登録年を伝える等、患者が資格を確認出来る環境を整える必要が有る。ビデオ通話等を利用した汎用サービスを利用する場合は、医師側から接続し、セキュリティー上の危険性を理解した上で患者に必要な説明を行う事が求められる。

 患者が受診する場所については、自宅など医療を受けるのに適した環境が確保され、プライバシーが守られる事が原則となる。改正医療法では、患者がオンライン診療を受ける場所として提供される「オンライン診療受診施設」も新たに位置付けられた。受診場所には、清潔で安全な環境と、外部から隔離された空間を確保する必要が有る。

 更に注意すべきは、オンライン診療が医師不足そのものを解決する制度ではない事である。画面越しに診察出来ても、検査、処置、手術、救急対応を担う地域の医療機関が不要になる訳ではない。オンライン診療の存在を理由に地方の病院や診療所を安易に整理すれば、かえって住民の安全を損なう。あくまで地域医療を補完する手段として位置付けるべきである。

オンライン普及と共に地域医療の更なる維持を

今回の医療法改正では、従来の指針に於ける「最低限遵守する事項」を基本としたオンライン診療の基準が、医療法施行規則に規定された。医療法第14条の3は、厚生労働省令でオンライン診療の適切な実施に関する基準を定める事を規定している。具体的には、病院・診療所に必要な施設、設備及び人員、患者が受診する場所、患者への説明、容態急変時に適切な治療を提供する体制等である。これにより、従来は行政指針として示されていたルールの中核部分が、法令上の遵守事項となった。

 オンライン診療を行う病院・診療所については、その旨が都道府県知事への届出事項に追加された。今年4月1日時点で既に実施していた医療機関には、来年3月31日迄に届け出れば良いとする経過措置が設けられている。

 更に、今回新たに設けられたのがオンライン診療受診施設である。これは、オンライン診療を行う医師が勤務する医療機関等に対し、患者がオンライン診療を受ける為の場所として提供される施設の事で、過疎地の郵便局や公民館等が想定されている。施設の設置者は設置後10日以内に、施設所在地の都道府県知事等へ届け出なければならない。

 オンライン診療を行う医療機関の管理者には、定められた基準を満たす為の措置が求められる。その為オンライン診療受診施設を利用する場合は、管理者は施設が基準を満たしているか確認しなければならない。施設側も清潔、安全、プライバシー、情報セキュリティーの確保等の為の措置を講じる義務を負う。又、設置者については法律上、営利目的の事業者の参入が可能となっている。それだけに、営利目的の設置者が患者を不適切な診療へ誘導しない様、都道府県による監督と情報公開が重要になる。更に、患者の容態急変に備え、対応方針を定め、患者が速やかに対面診療を受けられる体制を確保する必要が有る。離島など速やかな対応が難しい地域では、関係医療機関との事前の合意も求められる。

 法的根拠が明確になった事は大きな前進である。しかし、オンライン診療を広げるだけで医師の偏在や医療過疎が解消する訳ではない。政府は診療所の承継・開業・地域定着支援、派遣医師への手当、勤務・生活環境の改善等を併せて進める必要が有る。外来医師過多区域で無床診療所を開設しようとする者に、原則として開設6カ月前迄の届出を求め、地域外来医療の提供をしない意向を示している場合でも地域外来医療の提供等を要請出来る制度も始まった。要請に応じない開設者については、保険医療機関の指定期間を短縮する仕組みも設けられている。

 オンライン診療は、通院が難しい高齢者や医療機関の少ない地域にとって有力な選択肢となる。但し、それは対面診療と置き換える為の安価な手段であってはならない。地域の医療機関を維持し、必要な時には確実に対面診療へ繋ぐ体制が有ってこそ、その利便性が生きる。制度を整えるだけで安心してはならない。各地域で受診から検査、入院、救急搬送迄の流れを点検し、オンラインと対面の役割分担を住民に分かり易く示す必要が有る。利用状況や問題点を継続的に検証し、制度を見直す姿勢も不可欠だ。

 オンライン診療は単なる医療のDX化ではない。過疎化が進んだ地域であっても、そこに生きる命が有る限り命を守る手段が残る様、官民を挙げた懸命の努力を願いたい。

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