SHUCHU PUBLISHING

病院経営者のための会員制情報紙/集中出版株式会社

未来の会

研究者らが新型コロナ「空気感染」予防策を提言

研究者らが新型コロナ「空気感染」予防策を提言
欧米医学会では 「空気感染が主因」がコンセンサス

新型コロナウイルス感染症を巡っては、希望と懸念を感じる動きがそれぞれあった。希望は、研究者らが声明で出した感染対策。「策が尽きた」との閉塞感を打破する可能性がある。懸念は、大阪市で新型コロナ患者受け入れ病院を運営する医療法人が全国で初めて民事再生法を申請したことだ。医療が逼迫する中、「臨時医療施設」設置の動きが出ているが、肝心のコロナ患者受け入れ病院が倒産するようでは、コロナ患者受け入れに対する医療機関の懸念を招きかねない。

 声明は本堂毅氏(東北大学大学院理学研究科准教授)と平田光司氏(高エネルギー加速器研究機構加速器研究施設ダイアモンドフェロー)らがまとめ、全国の感染症研究者や医師ら30人超が賛同者になっている。「空気感染が主な感染経路」という前提で、「いまだ様々な方法が残されており、それらによる感染拡大の阻止は可能である」と訴えている。

 厚生労働省は新型コロナの感染経路として唾による「飛沫感染」や「接触感染」が一般的としているが、世界保健機関(WHO)や米疾病対策センター(CDC)はエアロゾルの吸引も感染経路としている。また、欧米の医学界でも、空気感染がコロナ感染拡大の主因であるということがコンセンサスになっているという。日本では空気感染に関してほとんど議論されていない中、この声明の意義は大きいのではないだろうか。

 空気感染は感染者の口腔から放出されるウイルスを含んだエアロゾル(0.005ミリ以下)が空間に滞留する量(濃度)に応じて起こる。声明では「エアロゾル滞留濃度を下げることで感染抑止は可能なはず」とし、▽若者に広く使われているウレタンや布のマスクはエアロゾルの吸入阻止に無力だが、不織布マスクは抑制できる▽ドイツでは公共の場等では一定以上の性能を持つマスク着用が罰則付きで義務化され、ウレタンマスクの着用は禁止されたが、日本では制約もなく正式な呼び掛けすらない▽1時間に2回程度の換気は不十分で、空気清浄機などを含めた機械的換気の適切な活用が重要——と指摘した。

 その上で、国や自治体に▽不織布マスク装着の周知と必要な制度的措置▽換気装置や空気清浄機などを正しく活用するための市民へ周知▽中立的組織による感染効果の検証——を求めた。

 企業や飲食店などで飛沫感染防止用のアクリル製パーテーションをよく見かけるが、空気感染が主な感染経路となると、予防に必要な対策も自ずと異なってくる。国や自治体は声明で求められた対策を早急に検討すべきだろう。

 一方、大阪市福島区で新型コロナ患者を受け入れていた松本病院の運営主体、医療法人友愛会が8月26日に大阪地方裁判所に民事再生法の適用を申請した。帝国データバンクによると、コロナ患者受け入れの医療法人の倒産は全国で初めてで、負債総額は約52億円。今後はスポンサーの支援を受け、病院の運営を継続していくという。同病院は地域の中核病院で、大阪府の要請を受け今年1月から新型コロナの軽症と中等症の患者を受け入れ、それによって外来患者が減り経営破綻したと報じられた。

 同病院は申請理由として「過去の設備投資に伴う過大な有利子負債の負担など、法人経営の稚拙さに起因するもの」と、コロナ患者受け入れによる経営悪化を否定した。しかし、速報時の衝撃は大きく、厚労省と東京都が都内医療機関にコロナ患者受け入れ病床の確保などを要請する中、コロナ患者受け入れによる経営悪化を懸念する医療機関も出ている。

 厚労省や都は、正当な理由なく応じなかった場合、医療機関の名称公表などの“脅し”をちらつかせているが、そんなことよりも先にやるべきなのは、コロナ患者を受け入れる医療機関に対し、経営を強固にバックアップするような公的な支援策を示すことではないだろうか。

LEAVE A REPLY

*
*
* (公開されません)

COMMENT ON FACEBOOK

Return Top