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未来の会

第38回 年々厳しくなる厚労省幹部の「再就職先」事情

第38回 年々厳しくなる厚労省幹部の「再就職先」事情
村木厚子・元事務次官

 幹部人事が一段落すると次に話題に上るのが、退職した幹部の再就職先だ。官僚の「天下り」と言えば、高額な退職金を手にし、再就職した有名企業で大した働きもせずに多額の報酬を受け取る——。しかし、最近は文部科学省等「天下り」に関連した不祥事も多く、かつてほどの「厚遇」は期待出来ないようだ。今回は厚労省幹部の再就職事情を探りたい。

 近年、OB達から羨望の的となっているのが、村木厚子・元事務次官(1978年、旧労働省)だ。伊藤忠商事と住友化学の社外取締役の他、SOMPOホールディングスの社外取締役監査委員会委員に加え、津田塾大客員教授や大妻学院理事としても活動。ただ、村木氏は無実の罪で大阪地検特捜部に逮捕され、半年近く拘留された経歴があり、「官僚としての実績と言うより、悲劇のヒロインで、女性活躍の象徴的存在。他の男性官僚と比べる事は出来ない」(厚労官僚)という人物だ。

 村木氏の派手な経歴に比べ、その他の旧労働省出身者はパッとしない。「旧労働省のエース」と呼ばれた岡崎淳一・元厚生労働審議官(80年)は、東京海上日動火災顧問に収まる。同社は苧谷秀信・元中労委事務局長(83年)ら旧労働のみならず、旧厚生も含めて多くのOBを受け入れてきた。

 旧厚生省OBでは、香取照幸・元雇用均等・児童家庭局長(80年)が目立つ。退官後は、在アゼルバイジャン共和国日本国特命全権大使を経て、今年4月から上智大学総合人間科学部教授に就任した。厚労官僚から大使に任命されるのは異例だが、飯島勲・内閣官房参与の力添えがあったとされている。

 香取氏の同期、二川一男・元事務次官も負けていない。東レには同社幹部と意気投合して顧問として迎えられたが、6月からは社外取締役に「出世」した。更に、三井住友海上の顧問も兼ね、「課外活動用」として日本ヘルスケア総合研究所執行役員という肩書きも持つ。蒲原基道・元事務次官(82年)は日本生命特別顧問の他、社会福祉法人「友愛十字会」理事長やNPO「福祉フォーラム・ジャパン」の理事等を務める。武田俊彦・元医政局長(83年)はボストン・コンサルティンググループのシニアアドバイザーとなり、高報酬を手にする「勝ち組」だ。

 「天下り」と一口に言っても、多様なケースがあるのが分かる。現在は省庁が直接再就職を斡旋したり、在職中に本人が就職活動したりするケースは法律で禁じられているため、「自力で開拓する人が多くなってきている」(ベテラン官僚)。ただ、厚労省でも一部で大物OBが再就職先を選定し、本人に斡旋しているケースが残っているという。

 この他、医系技官では三浦公嗣・元老健局長(83年)のように古巣の慶應義塾大に教授として戻ったり、薬系技官では森和彦・前大臣官房審議官(83年)が日本製薬工業協会専務理事に再就職する等関連団体に世話になる例が目立つ。ある旧厚生系のノンキャリは「我々の場合、辞める直近ポストの関連団体の事務局長のような役職に収まる場合が多い」と言う。

 年々厳しさを増す官僚の再就職事情だが、今夏に辞めた「両鈴木」の去就はまだ明らかになっていない。行き先はいかに——。

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