
「都合の良い人間関係」が人生を壊す
病院長は厳しくあれ。若者への忖度・迎合は無用の長物」
最近、日本経済新聞に「指名や選挙 部下が上司を選ぶ」と言う見出しの記事があった。目を疑うようなタイトルに驚いた。本文は、ほぼ若者目線で社会を論じていた。組織とは、社会とは本来、結果を出す者が評価され、責任ある者が指導にあたるべきだ。だが、この記事では“人気投票”で上司を決めると、若者のモチベーションが上がる場合もあると言う。これが令和時代の組織運営というのであれば滑稽だ。
大学にも同様の風潮がある。「単位が取りやすい」「出席に厳しくない」「講義が緩い」——そんな噂のある教授の授業は学生に人気がある。しかし、これは学生に迎合した訳ではない。教授なりの教育方針に基づくものだ。「いかに楽をするか」ばかりを考える学生は存在する。しかし、かつての学生達は社会の厳しさを熟知していた。よって、学生時代は社会人になるまでの束の間の息抜きと捉えていた。しかし、今はどうだ。“優しさ”の名のもとに、あらゆる厳しさを排除し、成長の機会を自ら手放している。
そして、日本全体が“ぬるま湯主義”に染まっている証左がもう一つある。かつて日本が世界を席巻していた1980年代、TVコマーシャルのリゲインの「24時間働けますか」は、日本人の勤労精神を象徴していた。アメリカはそんな日本の企業戦士に恐れを抱き、日本に対し、「完全週休二日制」を導入するよう圧力を掛けた。結果、日本人は“休む楽しさ”を知った。禁断の果実だ。勤労は美徳だったはずが、いつの間にか「カッコ悪い」と言われるようになり、勤労減退は経済減速を招いた。アメリカの策略は的中した。
ここで忘れてはならないのは、そのアメリカのエスタブリッシュメントたちは、自らは深夜まで働き、次々と成果を出し続け、ライバルである日本を突き放したという事実である。口では「労働からの解放」を語りながら、自らは誰よりも働いている。
「自分に都合の良い人とだけ過ごす」「嫌な人からは逃げる」「厳しい上司は敬遠する」——そんな若者達の風潮がまかり通る社会に、未来はあるのか。心地よい関係性の中だけで人は成長出来るのか。断言しよう。出来るはずがない。人は、自らの弱さや限界に直面し、時にぶつかり、苦しみ、挫折しながら成長する。「獅子は我が子を千尋の谷に突き落とす」という言葉があるが、今の日本は谷を浅くし続けている。それは誰かの策略だ。
本当の優しさとは、相手の成長を願い、厳しさをもって接することだ。ぬるま湯のような人間関係に浸りきったままでは、どんなに便利な世の中になっても、日本人の精神は磨耗していくばかりである。「楽しく、都合の良い仲間とだけ過ごす人生」——それが幻想であることに、気づくべきだ。社会とは、衝突と緊張の中でこそ築かれる。逃げる事ばかりを選ぶ者に、未来を託す事など出来ない。
弊誌『集中』の連載にある「私の海外留学見聞録」では、「あの留学時は苦しかった。しかし、その経験が今の自分を作ってくれた」という話が共通している。修羅場は大変だが、後で必ず生きてくる。
厳しい指導を続ける病院長が、日本経済新聞の記事を読んで、誤った方向に流されることなく、逃げ道を探す若者に迎合するような考えに陥らない事を願い、是々非々にした。
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