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未来の会

第91回 厚労省人事ウォッチング
厚労省の失策が影響する次期事務次官レース

第91回 厚労省人事ウォッチング厚労省の失策が影響する次期事務次官レース

 高額療養費制度の見直しが凍結となり、公的年金制度改革法案が期限迄に国会に提出出来ない等、厚生労働省で「失策」が続いている。施策を所管する2人の局長は次期事務次官を狙う逸材の為、「伊原和人事務次官の後任等、夏の幹部人事に影響するのでは」(厚労省職員)との見方が浮上している。幹部人事の行方を占う。

 先ず明確な失策と言えるのは、迷走劇を繰り広げた高額療養費制度の見直しだろう。昨年末の予算編成の段階では70歳未満の人の自己負担限度額を引き上げる方針を纏めていたが、年明けの国会で患者団体にヒアリングしていない点を問題視され、修正に修正を重ねた挙句、最終的に方針そのものが凍結の憂き目に遭った。

 この渦中にいたのが、鹿沼均保険局長だ。1990年に旧厚生省に入省し、菅義偉元首相の秘書官や政策統括官等を務め、省内では日の当たる場所を歩んで来た。少子化対策の財源確保に向けて着手した高額療養費制度の見直しは、与党内からさしたる注文も付かず、年末迄はスムーズに運んでいた。しかし、その後の展開は読み切れず、最後は夏の参院選を前に惨敗を避けたい与党幹部らが「凍結」を主張し、抗し切れなかった。

 一方で、高額療養費制度程ではないものの、難航しているのが公的年金制度改革法案の行方だ。昨年夏の財政検証時点で、年金制度改革であるが故に与党内から警戒され、国民年金の納付期間延長の導入は見送られた。更に、厚生年金の適用拡大に伴う企業規模要件の見直し時期は後退し、マクロ経済スライドの調整期間一致策は導入の可否を5年後の財政検証に先送りさせられた。妥協に妥協を重ねたものの、一応の期限である3月14日迄に法案提出すら出来なかった。首相が質疑する重要広範議案であるにも拘わ↘らずだ。

 間隆一郎年金局長は前任の橋本泰宏氏 (現・内閣官房審議官)から改革の大枠を引き継いだ面も有る為、鹿沼氏に比べて不運と言えるだろう。とは言え、説明能力の高さを買われて年金局長に就任したものの、法案提出に向けて与党幹部を説得出来なかったのは手痛い状況と言える。

 通常国会の閉会直後には夏の幹部人事が断行されるだろう。7月に参院選が控えている為、国会の↖会期延長は考えられず、幹部人事の発令も早めだろう。鹿沼、間両氏は入省同期で次期事務次官の有力候補だ。しかし、高額療養費制度は秋にも再検討結果を公表する予定で、公的年金制度改革法案も国会へ提出出来たとしても、成立は秋の臨時国会にずれ込む可能性が有る。大手紙記者は「この様な状況になれば、両局長とも変え辛い。仮に交代したとしても、事務次官への昇格人事は無いだろう」と読む。

 となると、次期事務次官は誰が担うのか。

 保険局と年金局を指揮する立場で失策の最終責任者であるものの、伊原和人事務次官の留任説が浮上しているという。伊原氏の入省年次は87年で他省庁と比較して若い訳ではないが、「90年の2人に回すには早過ぎる」(他省庁幹部)という声は以前から出ており、今回の「失策」で改めて浮き彫りになった面も有る。90年入省組で「無傷」の村山誠官房長は旧労働省出身で、「何れは久方振りの旧労働省出身の事務次官が就任する事にはなるが、旧厚生分野を中心にもう少し経験が必要だ」(厚労省幹部)との声も根強い。

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