SHUCHU PUBLISHING

病院経営者のための会員制情報紙/集中出版株式会社

未来の会

第138回 国家の危機だからこそ、健全なる批判精神を

第138回 国家の危機だからこそ、健全なる批判精神を

 7都府県を対象に発令された法律に基づく「緊急事態宣言」で、日本は国家の危機を内外に鮮明にした。欧州で相次いだ「ロックダウン=都市封鎖」という強硬策ではないものの、「要請と自粛」を柱にした柔軟路線の裏には、社会の監視という抗し難い圧力がある。

 史上最大の緊急経済対策とセットで、安倍晋三首相は新型コロナウイルス封じ込めへの決意を示したが、「要請と自粛」にはどこか〝国民の皆さん、政府はちゃんとやっているのだから、あなた次第なのよ〟という突き放した感覚と、〝失敗したとしても都府県のせいで、政府のせいではない〟という逃げ口上の匂いも感じる。

お笑い大連立構想と権力闘争の激化

 どんな感染症でも必ず終息の時は来る。大事なのはどう対処し、それが適切であったかを見抜く力を養う事だ。それが、未来に生きてくる。危機情報に振り回されず、政府対応の可否をしっかり見定める健全な批判精神を失ってはいけない。

 「右も左も与党も野党も国難に向かって一時休戦すべきです。一致団結する強力な救国内閣と大連立政党の国政翼賛会を…」

 3月初旬、ツイッターに「大連立」の文字が躍った。発信者は高須クリニックの高須克弥・院長だ。大連立や挙国一致内閣は、国難の際にしばしば、話題になるが、時の政権の「失政隠し」に利用される等の弊害も指摘され、近年は「話のタネ」の域を出ないのがほとんどだ。今回も反応は低調だった。

 国の総力を結集するという意味において、大連立や挙国一致にも一理ある事は確かだ。しかし、最近では「国難であるからこそ、政権の資質や能力を厳しく見定める批判勢力が不可欠だ」との考え方が主流になっている。失政のリスクに備え、代替勢力を担保しておく事の方が大切と思われているのだ。

 基本政策の異なる自民党と立憲民主党などとの連合政権について、自民党長老は「〝船頭多くして船山に登る〟の例え通りなる」と一笑に付し、野党幹部は「世界と共に取り組むコロナの封じ込めと、安倍首相の疑惑解明は別次元の話。ミソもクソも一緒の発想はナンセンス」と大連立を一蹴した。

 実際、政界のうねりは大連立、挙国一致とは異なるベクトルで動き、底流での権力闘争はむしろ強まっていると言っていい。焦点はもちろん、衆院解散の時期と「ポスト安倍」の行方だ。自民党幹部が語る。

 「東京五輪・パラリンピックの延期で、政治日程に1年半の『余白』が生じた。これまでの方程式は通用しなくなった。安倍首相もポスト安倍候補も戦略の練り直しを迫られた。コロナの終息時期とからんだ政局展開は従前よりずっと複雑になり、先が読みにくくなっている」

 五輪延期の決定前、自民党内では五輪の「祝祭ムード」が残る今年秋以降の衆院解散が有力視されていた。

 一方、自民党内の一部には、安倍首相が〝キングメーカー〟として影響力を保持するため、五輪後の任期途中で辞任し、意中の岸田文雄・政調会長への禅譲を目指すとの見立てがあり、この2つが軸になってきた。

 五輪延期により、これらの前提は一変した。自ら延期を決定した安倍首相は現職として五輪に臨む腹づもりとされる。執着してきた憲法改正は目鼻が付かず、北方領土問題も北朝鮮による拉致問題も任期中の解決が望めない現状で、五輪は安倍首相にとって唯一のレガシー(政治的遺産)となるからだ。

 こうして、今年秋の辞任→禅譲路線は消え、安倍首相の下での衆院解散論がクローズアップされるようになった。

 当初は7月の東京都知事選との同日選もささやかれたが、「新型コロナの影響で、しばらく選挙は無理だろう」(自民党選対関係者)と否定的な見方が多い。

 ただし、隣の韓国では総選挙が実施されている上、緊急事態宣言の期限を5月6日に定めた事、史上最大規模の約108兆円の経済対策を打ち出した事を理由に「安倍首相ならやり兼ねない」(自民党若手)との憶測も消えていない。

えっ、また師走解散って本当?

 安倍首相の自民党総裁任期は来年9月末。衆院議員任期は同10月21日で満了となる。安倍首相が衆院解散に踏み切らなければ、自民党総裁選と衆院選が短期間に連続する異例の事態になる。このため、自民党内では「解散時期は今年末と来年の五輪後の二者択一ではないか」との見方が増えている。

 自民党中堅はコロナ終息が前提と前置きしながら、「五輪後だと追い込まれた感じが強くなるから、可能性が高いのは年末解散じゃないか。安倍首相は年の瀬選挙に強いから」と師走選挙を本命視する。

 この他、来年1月の通常国会冒頭解散説、2021年度予算成立直後の来年3月解散説などが取り沙汰されているが、来年7月22日は東京都議の任期満了に当たり、都議選を重要視する公明党等が近い時期の衆院選に難色を示すのは必至で、困難視する向きが多い。

 安倍首相が年末解散に踏み切った場合、その勝敗がポスト安倍にどのような影響をもたらすのかという〝頭の体操〟も盛んだ。「衆院選大勝なら安倍4選、順当勝ちで、首相退任時の支持率が高ければ岸田政調会長、逆に低ければ石破茂・元幹事長。敗北の場合は混沌」との予測が支持されているようだ。

 安倍首相には衆院を解散しない選択肢もある。この場合、安倍首相が来年夏の五輪後に辞任し、新総裁は首相就任直後に事実上の任期満了選挙に臨むスケジュールになる。

 「国会議員票では安倍首相ら主流派が推す岸田政調会長が有利だが、『選挙の顔選び』という色合いが強まれば『次期首相にふさわしい人』の各種調査で常に上位の石破元幹事長を推す声も強まるだろう。ややこしくなるな」

 自民党長老は少し考えてから付け加えた。

 「やっぱりコロナ次第なんだろうな。感染の第1波が終息したとして、その後の経済復興がうまくいくかどうか。ウイルスは15日で変異すると言うじゃないか。第2波が来るのか、来ないのか。不確定要素が多過ぎる。政局も変異し続けるのかもしれないな」

 永田町にファンの多い競馬に例えるなら、ポスト安倍レースは本命・岸田政調会長、対抗・石破元幹事長、不良馬場で安倍首相を含めて穴馬多数といったところかもしれない。 

LEAVE A REPLY

*
*
* (公開されません)

COMMENT ON FACEBOOK

Return Top
Translate »