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コロナ長者、東亜産業は今日も〝感度良好〟 

コロナ長者、東亜産業は今日も〝感度良好〟 
謎の新商品投入に格安小売店の全国拡大

ここまで来ると、あっぱれである。首から下げるだけの『ウイルスシャットアウト』なる「空間除菌」商品を販売し、消費者庁から「根拠無し」と景品表示法違反に問われた東亜産業(東京都千代田区)が、今度は「吸入するだけで抗体力が付く」という謎の新商品『吸入型抗体』を売り出した。世界が新型コロナウイルスによるパンデミックに見舞われて3年。私達の暮らしが脅かされ生活様式にも変化が現れる中、コロナ禍を味方に付け、強かに生きる同社からは、コロナ禍を生き抜く術が詰まっている……かも知れない。

 「コロナ禍初期、首に下げるだけで空間が除菌出来るという触れ込みの商品がヒットしました。科学リテラシーの高い人の間では、人体に無害な空間でウイルスや細菌を除去出来る筈が無いとして『馬鹿発見器』と揶揄されていましたが、通勤中や職場で首に空間除菌製品を下げた人を見た事がある人は多いのではないでしょうか」(東京都の公務員)

 この空間除菌製品を販売していた会社の1つが、東亜産業である。同社は自社のサイトとネット通販サイト「楽天市場」に「二酸化塩素配合の除去・除菌成分が周囲に浮遊するウイルスや菌を除去します」「ウイルス対策 塩素成分で空間の除菌」「幅広く・様々な環境に最適! 学校 オフィス 病院 電車」等と謳い、800円でこの商品を販売。半径1メートルの空間のウイルス除去や除菌が出来る、亜塩素酸ナトリウムがウイルスを不活化すると効果を説明していた。消費者庁は東亜産業に、こうした表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めた。しかし、同社から出て来た資料は根拠を示すものでなかった為、2020年8月、「合理的な根拠の無い表示」として景品表示法違反(優良誤認)に当たるとして、再発防止等を求める措置命令を出した。

批判もどこ吹く風、コロナ関連商品続々

 「消費者庁は、コロナ禍で所謂『空間除菌』を謳って商品を販売する事業者に目を光らせていた。有名なところでは『クレベリン』の大幸薬品にも同じく優良誤認表示で措置命令を行い、同社は激しく反発して話題となった。最終的には大幸薬品が全面的に敗れたが、同社は表示方法を変えながらクレベリンの販売自体は続けている」(ジャーナリスト)

 東亜産業も又、消費者庁の措置命令に対して独自の見解を示した。「優良誤認表示」と指摘された説明文を削除して、『NEWウイルスシャットアウト』と商品をリニューアル。「亜塩素酸ナトリウム配合」との表記は有るが、「ウイルスを不活化する」等の説明は省かれ、「全世界で話題の大ヒット商品再登場!」「首にかけるだけのウイルスシャットアウト」とギリギリの表現で同種製品の販売を続けているのである。

 景表法違反が大きく報じられた事で大幸薬品の売り上げは大きく落ち込んだというが、東亜産業が凄いのはここからだ。コロナ禍でPCR検査の需要が高まったのを機に、21年1月から(同社サイトによる)PCR検査センター事業に参入。22年8月には、自社の『新型コロナウイルス抗原検査キット』140万個を全国の自治体に無償配布したのである。

 ところが、この抗原検査キットもPCR検査も、医療機関で陽性と診断された陽性者が検査しても陽性にならないとの声が多数挙がり、効果が疑問視される代物。「いわゆる国の承認を受けた検査キットと異なり、性能が確認されていない『研究用』の検査キットであり、精度は当てにならない。検査結果を鵜呑みに出来ない事は医療者なら常識です。研究用キットで検査した結果、陰性だと信じた感染者は日常生活を送ってしまう。研究用の検査キットを野放しにしていて良いのか」と都内の内科医は苦言を呈する。

 尤も、こうした批判も織り込み済み、どこ吹く風なのだろう。東亜産業は22年夏に欧米を中心にサル痘が流行し日本でも患者が出たのを横目に、唾液でサル痘ウイルスの有無を調べるというPCR検査キットを発売。「PCRや抗原検査の感度は低そうだが、流行りものに対しての感度は敏感。この先も新たな感染症が騒がれる度に、効果の薄い検査キットを発売するのだろう」と医療ジャーナリストはため息を付く。全世界が新型コロナの流行への対応に苦慮する中、東亜産業は流行を追い風に商売拡大を図る「コロナ長者」なのである。

東亜産業・前社長の素顔とは

東亜産業とは如何なる会社なのか。こうした疑問に応えたのが、週刊新潮である。新潮社の報道によると、東亜産業を創業した渡邊龍志社長(当時)は中国出身で、日本語学校の学生だった1992年、空き巣を働いて逮捕される等、これ迄に3回の逮捕歴が有る。その度に中国へ強制送還されるも日本に舞い戻って来ているという。 

 「窃盗、中国残留孤児2世を詐称した公正証書原本不実記載同行使、痩身効果を謳って飲料を販売した薬事法違反、と幅広く〝悪事〟に手を染めた渡邊氏だが、消費者庁の措置命令を受けた後、同社の社長を退任した。しかし、経営への影響は持ち続けていると言われている」(全国紙記者)

 社長は変わっても、〝感度良好〟なところは変わらず、「アフターコロナ」への備えも着々と進めている。同社が今、力を入れているのが、生活雑貨や加工食品を半額以下の安価で販売する「半額専門店」を謳った小売店「TOA mart(トーアマート)」だ。23年中に全国500店舗の達成を掲げる。

 21年10月にオープンした(同社サイトによる)という東京・秋葉原の「TOA mart」1号店の前身はなんと、同社が運営する「PCR総合検査センター」。PCR検査センターから格安小売店に変貌するとは、時代の最先端を見ている様だ。「世界的な物価高を背景に格安店の需要は高く、特に地方では客足も順調と聞く。立地の良い場所に在った飲食店や小売店がコロナ禍で空き店舗になった例も多く、そうした空き店舗を安く手に入れている様だ」と全国紙記者は話す。

 その一方で、未だ続くコロナ禍へのケアにも余念が無い。22年11月に投入した同社の新商品は、「吸入するだけで抗体力が付く」という謎の『吸入型抗体』(2178円)。中国で開発された「吸入型ワクチン」の研究技術を基に開発されたそうで、卵黄抗体IgYや牛抗体IgG等が含まれるタンパク質を霧化させ吸入する仕組みだという。

 企業からのプレスリリースを配信する「PR TIMES」では、「本製品のモニターテストでは20人中19人の人から抗体が検出されている事が自社調べで判明した」と〝効果〟を謳うが、同じ「PR TIMES」が朝日新聞社サイトに配信した同記事では何故か、「モニターテストでは20人中全ての人から抗体が検出されている」と大事な数値が異なっているのも趣深い。

 都内の内科医は苦笑しながら言う。「ウイルス等の異物が体内に入り込んだ時に、その異物を排除する働きをするのが抗体です。その吸入型抗体とやらで抗体が体内に入るとしても、何に対して働くのかが分からない抗体に意味は無い。新型コロナウイルスに対する抗体を吸入するというならまだ分かりますが……」
 前出の週刊新潮の報道では、加熱式たばこのカートリッジを巡るトラブルも報じられた同社。増税を前に、格安カートリッジに目を付けたのか。次なる同社の新商品も気になるところである。

問題の東亜産業の抗原検査スティック

 

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