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ウエルシアホールディングス

ウエルシアホールディングス
長期裁判訴、元役員らの逮捕 不祥事業界トップ

 「20年ぶりの首位交代」と呼ばれている。9月にイオン子会社のドラッグストア、CFSコーポレーションを吸収合併するウエルシアホールディングス(HD)である。同社とCFSの合併で売上高は単純計算で5600億円になり、長らく業界トップだったマツモトキヨシの4855億円(2015年3月期)を抜き、ドラッグストア業界トップになる。積極的な出店攻勢と合併で成長してきたウエルシアHDはイオンが29%の株式を持つ大株主だが、イオン傘下のドラッグストア2社を吸収合併する代わりにイオンの株式公開買い付け(TOB)を受け入れ、イオンが50.3%の株式を持つ子会社になった。その流れの集大成がCFSの吸収合併だ。

 ウエルシアHDは昨年来、大きな変化が続いている。昨年9月、ウエルシアグループの中核企業だったウエルシア関東を存続会社にして、高田薬局、ウエルシア関西、ウエルシア京都を統合、「ウエルシア薬局」に社名変更。すっきりしたドラッグストア体制を構築した。昨年10月にはイオン傘下のシミズ薬品とタキヤを合併する一方、イオンがウエルシアHD株をTOBで買い増しして子会社化すると発表。今年3月に両社を子会社化した。イオンにとっては関係会社にすぎなかった大手ドラッグストアのウエルシアHDを念願の子会社化に成功したことになる。続いて、イオンの子会社のCFSを株式交換方式で吸収合併することを昨年10月に発表した。合併は今年9月1日だが、この合併でウエルシアHDはマツキヨを抜いて売上トップのドラッグストアになる。

 事業再編の最中に起きたのが度重なる不祥事だ。ウエルシアHDの子会社ウエルシア薬局の元取締役で、静岡市長選で落選した高田都子候補陣営が公選法違反事件を起こした。高田氏の実兄で選対本部長だったウエルシアHD副会長・ウエルシア薬局取締役だった高田隆右氏が5月に逮捕された。

前副会長が絶頂期に任、逮捕  ウエルシアHDはもともと故鈴木孝之・名誉会長が経営する埼玉県の薬局が源流で、現会長の池野隆光氏の薬局と合併。さらに高田薬局と合併し、茨城県の寺島薬局(旧ジャスダック上場)をTOBで買収と、次々に中小ドラッグストアを合併し業界6位になった。ウエルシアHDはイオンが結成したドラッグストアの勉強会「イオン・ウエルシアストアーズ」(現ハピコム)の中心メンバーでもあったが、イオンがいくら株買い増しを要求しても鈴木氏は拒否。イオンに30%以上の株式を持たせなかった。隆右氏は「鈴木より俺の方が保有株は多い」といっても鈴木氏には逆らえず、ナンバーツーにとどまっていた。その鈴木氏が昨年、病気で亡くなり、副会長の隆右氏はウエルシアHDの実質ナンバーワンになり、絶頂期を謳歌する寸前に逮捕され、同社から去るしかなかった。ドラッグストア業界では「マツキヨを裏切り、ウエルシアでの実権を握ることばかり考えていた報い」という人もいる。

 もう一つの不祥事は旧寺島薬局(現ウエルシア介護サービス)買収直後に解任した元社長、元副社長と元常勤監査役から起こされた不当解任による損害賠償訴訟問題。寺島薬局買収騒動はオーナーの寺島孝雄氏が鈴木氏にTOBを持ち掛け、市場価格の3倍近い異常な高値で売り抜け、さらに寺島夫人の実家をはじめ多くのインサイダー取引があった。株価操縦も疑われ、TOB組成そのものが問題視されている。寺島一族はこのTOBにより法外ともいえる数十億円の巨利を得ながら、経営の中核であった社長、副社長、常勤監査役を同時に解任するという異常な事態が発生した。

元監査不当裁判で  3人は「不当解任」を訴え、元社長と元副社長はさいたま地裁に、元常勤監査役は水戸地裁土浦支部にそれぞれ旧寺島薬局を相手取り損害賠償請求訴訟を起こす騒ぎに発展。二つの裁判は6年も続いているが、水戸地裁土浦支部は5月に元常勤監査役に勝訴の判決を言い渡した。主張を却下されたウエルシア側は東京高裁に控訴した。

 通例、民事判決を上訴しても判決を逆転させるのは容易でない。ここでの問題は、安倍政権が国際市場に通用する企業統治の健全性向上のため、会社法を改正し社外取締役2人制度を導入するなど法改定を検討中に、上場企業の常勤監査役を不当に解任したという判決が出た点だ。監査役は企業の健全性維持の要で、身分は任期5年など企業からの独立性を保持させるため法的に守られている。上場企業の監査役を不当解任したという判決が出たことは、現在の取締役の構成を変える程度の会社法改正では済まない、金融証券市場、上場企業の統治に問題を投げ掛けることになる。新興企業であり、信義なき企業連合体ともいえるウエルシアHDは、企業が社会的存在であること、コンプライアンス(法令順守)意識を持って企業統治、企業行動を取るべきだ。

 同社はドラッグストアの成長が行き詰まりを見せ始めたとき、調剤室を設けて調剤部門に進出。政府の方針に合わせて深夜24時まで営業する店舗を増やし、「かかりつけ薬局」を目指した。調剤併設店は全店舗987店(15年2月末)中687店舗に達している。加えて、調剤額にポイントを付与するサービスを最初に始めた。厚生労働省に問題がないか問い合わせたことといい、当初の自社ポイントをツタヤ系のTポイントに切り替え、ポイント交換の手間を省いたことといい、抜け目のなさを示した。ポイント付与サービスは調剤に進出したドラッグストア各社が見習い、処方箋獲得の有力な武器になった。ウエルシアHDの処方箋枚数は月間43万枚に上り、総売上高の24%を占めるまでに成長した。

 しかし、24時間調剤店でコストが上がることはもちろんだが、規制改革会議や経済財政諮問会議で院外調剤費が高過ぎるとの指摘がある。財政危機の状況下、社会の高齢化に伴い増大必至の社会保障費の抑制に懸命な政府が、財政支出が収入源となる調剤事業にこれまでのような利益を与えるはずもなく、調剤費の削減が推し進められよう。となると、ウエルシアHDは調剤収入の比重が高いほど中期的にマイナスの打撃を受けることになる。このあたりの社会、経済、財政の先行きを踏まえた政策、戦略は同社から何も公表されておらず、ここでも新興企業で業量拡大、目先利益しか考えない体質が表れている。

 同社が吸収するCFSも、服薬指導料の不正請求という不祥事を起こしている。17万件の不正請求をしたくすりの福太郎と親会社ツルハは、その後の調査で約40万件の請求があったこと、患者や国にそのお金を返却することを発表した。一方、7万件の不正請求をしたCFS、親会社イオン、ウエルシアHDからはその対処に関して何の発表もなく、社会意識や法意識の欠如を露呈している。

 それだけではない。同社は売上ではマツキヨを上回るが、サンドラッグやマツキヨのような豊富なプライベートブランドを持ち合わせていないため、営業利益、最終利益ではマツキヨを下回る。社内もマツキヨほどの結束力がない。マツキヨは「マツキヨブーム」を生み出し、ドラッグストアを世の中に認知させたが、ウエルシアHDには社会に影響を与えるような行動がない。

され野会長の経営手  イオンは念願のウエルシアHDを子会社化させることに成功した。岡田元也社長は総合スーパー、ショッピングセンター、食品スーパー、金融に次ぐ第5の柱を手にしたと喜んでいる。しかし、ドラッグストアはスーパーから日用品や雑貨の客を奪って成長してきた業態だ。弱点は薬と日用品の売上の伸び悩みである。イオンによる子会社化でウエルシアHDが食品のノウハウを手に入れれば、イオンは総合スーパーや食品スーパーから客を奪われる事態を招くことになりかねない。唯一、イオンにとってのプラス要因は、イオン銀行がセブン銀行に比べATM設置数で劣勢だったが、ウエルシアHDの約1000店舗にATMを置けることくらいだ。

 ウエルシアHDの池野会長には幸運が続いている。池野氏は常に実力者の鈴木氏の陰に隠れた存在だった。だが、鈴木氏が亡くなり、副会長の高田隆右氏も辞任。池野氏にとっては相次いで重石がなくなり、天下が巡ってきた。しかも、親会社になったイオンでは昨夏、元執行役の平林秀博氏がダイエー株のTOBの際、インサイダー取引事件を起こして辞任。平林氏はイオンで唯一、ドラッグストアの事情が分かる人物で、ウエルシアHDの取締役も兼任していた。平林氏の辞任後、イオンにはドラッグストア事情に精通したお目付け役がいない。岡田社長以下の幹部はグループのドラッグストアを合併させて売上を伸ばすことしか念頭にない。

 しかし、池野氏は元来が小規模ドラッグのオーナーで、故鈴木氏の引きでウエルシアのナンバー2に就き、高田事件でトップになっただけで、社会性とか企業統治とは縁遠い新興業態ドラッグ企業の人物。しかもドラッグ各社連合体の企業統治・経営となると大イオンでさえできなかったことであり、いわんや池野氏が肥大化したウエルシアHDのかじ取りができるかどうかは疑問だ。

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