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「骨太の方針」社会保障制度改革に繋がる見直し案

「骨太の方針」社会保障制度改革に繋がる見直し案
医療・介護・年金分野における検討課題の中身

 6月にまとまった経済財政運営の指針となる「骨太の方針2018」では、基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)を黒字化する目標を従来より5年遅い2025年度に設定し、政権の財政健全化に取り組む後ろ向きな姿勢を明確にさせた。将来的に増大が見込まれる社会保障分野でも、抑制の「目安」について具体的な目標値の記載は見送った。

 PBは、必要な政策経費を税収などで賄えているかを示す指標で、財政健全化には早期のPB黒字化が求められる。これまでは20年度の黒字化を目指していたが、昨年10月の衆院選で安倍晋三首相が財政再建に充てる予定だった消費税の使途を、幼児教育保育の無償化に変更したことが大きく影響した。

 15年の骨太方針では、社会保障費の自然増を16〜18年度の3年間で1・5兆円程度に抑える「目安」を設けていた。医療や介護保険の自己負担増やサービスの見直しなどで、毎年約5000億円の目安を達成してきた。今回は来春の統一地方選や来夏の参院選を控え、自民党を中心に負担増に繋がる具体的な数値目標に反対する意見が多かった。

 19年度からの3年間は高齢化の伸びが鈍化するため自然増も低くなる。厚労省は19年度の概算要求段階での自然増を6000億円と、18年度より300億円低く見積もっている。目安の水準は5000億円から下がる可能性もあり、財務、厚労両省で年末の予算編成で折衝することになる。ただ、5000億円から大幅に下がる見込みはなく、ある厚労省幹部は「1000億円程度の圧縮なら消費増税に伴う薬価改定などで捻出できるメドは付いている。負担増の議論は当面ない」と話す。

 骨太方針には、大幅な負担増は避けられたが、医療、介護、年金の制度改革に繋がる見直し案は盛り込まれた。医療分野では、医療・介護サービスの自己負担割合が現役世代並みの3割となる高齢者の拡大を検討する。医療保険では、70歳以上の夫婦で世帯年収が520万円以上だと3割負担になるが、給与所得者の平均年収は420万円で、「現役世代とのバランスを取るべきだ」との意見が財務省を中心に根強くあり、今後、見直す可能性がある。

 介護分野では、長年の懸案だったケアプラン(介護計画)の有料化を検討する方針だ。ケアプランは要介護認定を受けた高齢者が介護サービスを利用する際にサービスの種類や利用回数を定める。財務省は「有料化すれば利用者側からケアプランの質についてチェックが働く」と求めていた。定率か定額の負担かは今後の社会保障審議会介護保険部会で議論され、来年末までに結論を得る見通しだ。

 公的年金で見直しの対象になるのは、一定の収入がある高齢者の年金額を減らす「在職老齢年金制度」だ。60〜64歳は賃金と年金の合計が月28万円超、65歳以上だと46万円超が対象で、賃金が高くなるほど年金の減額幅も大きくなる。14年度時点で対象者は126万人に上る。年金の減額幅が大きくなれば、働く意欲を削ぎかねないと、自民党から見直しを求める声が上がっており、来年末までに社会保障審議会年金部会で方向性の結論を得る。ただ、いずれも改革の中身としては小粒で、財政健全化に大きく寄与するものではない。

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