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未来の会

第108回「笑いから健康へ」を国民運動に

第108回「笑いから健康へ」を国民運動に

 昨今、日常生活において「笑い」が健康に及ぼす影響が注目されている。笑うことが、特に生活習慣病や認知症の改善に役立つことが多くの研究によって報告されており、今後さらに検証がなされていくはずである。

 この「笑いと健康」に関して早くから関心を抱き、多方面から考察し続けてきたのが、2006年に設立された「笑いと健康学会」である。その第12回研究大会が10月1日、東京都内で催された。

 冒頭、学会会長の澤田隆治氏が登壇、挨拶した。澤田会長はテレビマンとして数多くのお笑い番組を制作し、お笑いブームを仕掛けてきた、まさに「笑い」のプロフェッショナルである。笑いの「力」は身をもって感じており、特に自らの糖尿病体験も踏まえ、笑いと健康との関係を探っていきたいという。そして、この学会報告が「来るべき超高齢化社会への参考になれば」と抱負を語った。

 初めの講演は、東京女子医科大学名誉教授で、海老名総合病院糖尿病センター長の大森安恵氏による「川柳からみた糖尿病の臨床」。

 糖尿病とはインスリンの作用不足による慢性の高血糖状態であり、網膜症、腎症などの合併症を引き起こす。高血糖状態が長く続くと心筋梗塞、脳梗塞、認知症の発症率が高まっていくと警鐘を鳴らした。また、糖尿病は決して現代病ではなく、平安時代の文献に糖尿病とみられる症状があったと指摘した。

 同学会では以前、笑いが血糖値を下げる効果があると報告されているが(伊藤俊・相模原赤十字病院内科部長)、例えば川柳などは、老いや病を客観視することで自らの症状を認識、改善に役立つという観点から、大森氏は笑いを誘う、いくつかの川柳を紹介した。

 「酒好きの 邪魔ばかりする 血糖値」

 「A1c 誤魔化しきかぬ 盗み食い」

 A1cとはヘモグロビンA1cのことで、この数値が高いと高血糖と判断される。

 続いて、獨協医科大学看護学部在宅看護学領域教授の六角僚子氏が「認知症者に対する笑いのアプローチ〜多世代間交流の創作活動を通して〜」をテーマに登壇した。

世代間の笑顔の交流が認知症に効果

 六角氏はNPO法人認知症ケア研究所代表理事も務めており、同研究所が運営するデイサービスセンター「お多福」(茨城県水戸市)の高齢者と隣接保育園児との交流における「笑い」の効用を報告した。

 お多福では、園児達とデイサービスに通ってくるお年寄りとの交流が毎日1時間ほど行われている。こうしたデイサービスセンターで過ごすアルツハイマー病の高齢者10人と、保育園児との交流がないデイサービスセンターに通うアルツハイマー病の高齢者10人を比較すると、世代間交流している高齢者の方が生活の質が維持向上出来ていることが分かってきたという。六角氏は「その理由の一つが笑顔ではないか」と話す。

 「子供との交流で目に付くのは、笑いが絶えないことです。散歩でも、職員と歩く時はすたすた先に行ってしまう高齢者が、子供と歩くと後ろから見守るようにゆっくりと歩く。表情さえ違ってきます」

漫才師や落語家も登場して会場爆笑

 お多福では職員達が劇団を作り、認知症をテーマとした寸劇をいろいろな場で上演している。その内容を映像で紹介し、一般来場者も含めた参加者は笑いながら、認知症の症状を知ることが出来た。

 この日はゲストとして夫婦漫才の・ゆめ子さんも登場し、総選挙などを俎上に載せた掛け合いで会場を沸かせた。2人は同学会が16年から始めた「笑い療法士」に認定されている。

 続いて、医学博士にして落語家という立川らく朝師匠による「健康落語」。近未来を舞台に、遺伝子検査でいろいろなことが分かっていくという「真珠の誘惑」という噺だ。真珠貝の遺伝子が混じっていると知らされた患者が、胆石になれば体内に真珠が出来る。それが高く売れると聞いて、暴飲暴食を続けて石を作ろうとするのだが……。会場は爆笑。健康度もアップしたようである。

 最後に、学会の常任理事であり、メイ・ウシヤマ学園理事長・ハリウッド大学院大学学長でもある山中祥弘氏が閉会の挨拶に立った。

 「美容ボランティアで、よく老人ホームに行きます。美容の施術をすると、認知症の方も普通の会話が出来るようになる。美容によって、誰もが笑顔になるからでしょう」

 そして、「笑いから健康へ」が国民的運動になることを望んでいる、と締めくくった。

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