
フジテレビ「調査報告書」の中立性は保たれているのか?
「第三者調査委員会の名の下で行われる茶番」
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2025年3月28日、フジテレビは社内の一部番組制作における不適切な演出やハラスメント疑惑に関連し、第三者調査委員会の調査報告書を公表した。東京都港区の本社で記者会見を開き、同委員会の委員長である弁護士・渡辺真理氏(プロアクト法律事務所・以下プロアクト)が報告書の要旨を説明した。同席したのは、同じくプロアクトの弁護士・池永朝昭氏、弁護士・渡邉宙志氏だった。会場に用意された400席はほぼ満席状態だった。
表面的には「透明性の確保」や「信頼回復」に向けたステップのように映るが、調査の実態とその背景を追うと、いくつかの懸念点が浮かび上がる。
先ず、この調査委員会は2024年12月にフジテレビの依頼により設置された。報告書作成および調査費用もすべて同社が負担している。表向きは「外部の有識者、専門家による独立かつ中立的な調査」とされているが、その独立性や公正性には、早くも疑問の声が上がっている。
この調査報告書を作成したプロアクトの実績を調べると、弁護士の池永朝昭氏は「公認不正検査士」の肩書きを持ち、ニューヨーク州弁護士の資格を持つ。肩書きはとても立派だ。渡邉宙志氏も「公認内部監査人」や「公認不正検査士」の資格を持つ。アメリカ発の資格を保持し肩書きは何れも立派だが、ワシントン在住の弁護士は「これらの資格保有者は、通常、企業の不正を告発する立場であり、企業側の依頼で調査を行うケースは少ない」と語る。更に調査を進めると、プロアクトが過去にも“依頼者寄り”と批判される報告書を作成してきた前歴がある事が判明した。某上場会社からの依頼を受けた報告書では、トップの責任を回避する内容が大半を占め、不利な証言が存在していたにも拘らず報告書には一切記載されていなかったという。今回も元フジテレビジョンの社長、会長を歴任した日枝久氏の責任には殆ど言及せず、中居正広氏と某局長への責任追求にフォーカスされている。前述の調査報告書と同様、依頼者即ちクライアンとなるフジテレビには大甘な報告書を作りあげた。
プロアクトの過去を知る報道関係者からは、「今回のフジテレビの調査報告書も、過去と同様に“依頼者に都合の良い結果”ありきで作られているのではないか」と懐疑的な声が上がっている。記者会見で渡辺弁護士は「調査委員会はフジテレビの影響を一切受けていない」と強調し、「制作現場における不適切なコミュニケーションは一部確認されたが、違法行為や組織的隠蔽は確認されなかった」と報告。だが、この発表に納得出来ないという意見も少なくない。
特に問題視されているのは、番組『週刊ナビニュース』(仮名)の元制作スタッフが告発した「プロデューサーによる過剰なパワーハラスメント」や、「出演者への情報操作要求」に関する告発が、報告書では“事実確認が出来なかった”として簡単に片づけられていた点である。複数の関係者が証言しており、一部は実名で記録にも残っていた事実を踏まえると、調査の精度そのものにも疑問が残ると言える。
また、調査委員会による関係者への聞き取りは「任意」で行われ、対象も調査対象者側に偏っていたとの指摘もある。このような手法では、真相解明には到底至らないと指摘させて頂く。
「第三者調査」という言葉は、あたかも中立性を保証するかのような正義の響きがある。しかし、実際には依頼者が費用を出し、調査範囲や方向性に影響を与えうる構造である以上、その“第三者性”は極めて脆弱だ。
報道機関として本来あるべき姿は、まず“自らの姿勢を客観的に点検する勇気”である。今回の記者会見と報告書が、その第一歩になり得たかどうかは、今後の対応次第だろう。しかしながら、フジテレビにはこの問題以外にも、格闘技「RIZIN」に関する問題が存在している。この問題にもプロアクトは触れる事は無かった。第三者調査委員会は「クライアントの意を最優先する委員会」と別名を付けたくなる今回の記者会見だった。
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