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未来の会

コロナと戦う医師が次々と「名誉棄損」訴訟……

コロナと戦う医師が次々と「名誉棄損」訴訟……
中傷投稿の抑制に繋がるか?

感染症法上で5類となっても、流行は第9波入りとなってしまった新型コロナ。医療者の負担が減らない中、最近、目立っているのがこの3年半、第一線で患者を診察し、感染予防を呼び掛けて来た医師が、その妨げとも言える誹謗中傷を行って来た人達に対して法的措置を取る事例だ。果たして法的措置で第2、第3の被害を防ぐ事が出来るだろうか。

 「パンデミックに立ち向かう医療従事者への侮辱行為に毅然と戦うために復活です」

 今年6月、そんな挨拶文と共にツイッターのアカウントを本格始動させたのは、埼玉医科大学の岡秀昭・教授だ。

 「感染症対策に詳しく、コロナ禍初期からテレビや新聞等でコメントをしたり、ツイッター等で積極的に発信をしたりしていました。ところが、今年に入ってアカウントを急に削除してしまったのです」(全国紙記者)

 アカウント削除の直前に、ある〝炎上騒ぎ〟が有った、とこの記者は指摘する。「岡氏はSNSで新型コロナに感染した事を明かしたのですが、直前に海外に家族旅行していた事、新型コロナワクチンを何回も接種していた事、感染症予防を呼び掛けていた事等から、一気に批判の声が高まったのです」(同)

 コロナ禍に「自粛」を呼び掛けていた医療従事者が、プライベートで海外に旅行し、その後に感染した事で、「医療従事者に自粛を強いられた」と理不尽に怒りを燃やす〝ネット民〟の格好の餌食となってしまった様だ。ワクチンを打っていたのに感染した事を反ワクチン派に揶揄され、マスクをしていない写真には、逆にマスク着用を呼び掛けるツイッターユーザーが噛み付いた。

 中でも特に口汚く罵ったのが、ライターの中川淳一郎氏だ。4月1日にはツイッターに「岡秀昭に哀愁を感じるわ。日々、Yahoo!に日々投稿しまくる暇そうな姿を見せ続けた。コロナで行けなかったから、と子供の卒業記念でシンガポール。金持ちアピールに最適なマリーナベイサンズで結婚20周年の妻との記念撮影を子供に撮ってもらう。コロナ感染でオレらからはボコボコでコロナ脳からは内ゲバ」「今回の岡秀昭の逃亡、素晴らしい。マスク常にしてワクチンもフル(5回?)打ってコロナ感染した、と迂闊なことをなぜ書く?これまでの言動との整合性を取るべく陽性を明かさなけりゃヤツの敵からのボコボコと内ゲバにならなかったのに。ただ一言いうわ。ざまーみろ。お前は総括にあたり貴重なケースだ」(本文ママ)等と投稿。「ネットニュースの編集長として知られていた中川氏ですが、近年はアルコール関連で問題を起こす事も多く、ツイッターでも意見が対立する相手と罵り合いをしてばかり。とは言え、7万人近いフォロワーが居て影響力は有りますからね。中川氏のツイートに勢い付いて中傷をエスカレートさせた人達も多いでしょう。岡氏の心労はお察しします」と前出の記者は同情する。

 騒ぎが引き金となったのか、一旦はツイッターのアカウントを消した岡氏だが、6月に新しいアカウントを本格稼働させ、経緯を説明した。

中傷投稿を許せず、医師達が動き出す

 岡氏はコロナ禍の多忙に加え、SNSでの誹謗中傷によるストレスも祟り、2021年に難病のベーチェット病を発症。治療の為免疫を抑制せざるを得なくなり、コロナを始め感染症の重症化リスクが高い状態にあった。

 「一度アカウントを削除したのはもはや情報を提供しても、侮辱行為を繰り返し変わらない人たちばかりになり、意義を見失い具合悪いなかでばかばかしくなったためでした」(6月12日のツイート)。「海外に行ったのは、ベーチェットの発作がひどく、温かいところでの療養が目的だった。航空券は貯めたマイルでエコノミー、チャイナタウンのエコノミーホテルなのにワクチンビジネスで不当に儲けた報酬で家族全員でビジネスクラスでベイサンズに泊まったと印象操作され家族写真を拡散された」(フェイスブック)

 「ゴキブリ」「殺人鬼」「殺人計画に加担した」「反社の構成員」「大量殺人に加担した」「殺し屋」等の中傷投稿は許しません、と宣言した岡氏は、これらの中傷を行った約20のアカウントに開示請求を行う等、法的措置を始めるという。

 法的措置の動きを進めているのは、岡氏だけでは無い。医師で小説家の知念実希人氏、「手を洗う救急医Taka」として多くのフォロワーを持つ木下喬弘氏、国立国際医療研究センターを経て大阪大学教授の忽那賢志氏らも、誹謗中傷の相手に開示請求等を行った事が分かっている。「忽那氏は医師向けサイト『m3.com』の中で、『忽那賢志のコロナ戦記』という連載をしており、その中で弁護士に依頼し、SNSで誹謗中傷の書き込みをした50人に法的措置を取ったと記しています」(前出の記者)

 この中で忽那氏は「私は私とワクチン接種に対する考え方が異なる方を批判しているわけではなく、私を誹謗中傷する人たちと戦う決意をした、というお話です」とわざわざ記している。岡氏が中傷投稿に対して開示請求をするとしたのと同じ理由だ。ところが、世の中にはこうした「法的措置」の理由や目的を理解出来ない、理解しようとしない相手が居るのも事実だ。

法的措置の効果は?

「忽那賢志氏とこびナビ木下喬弘氏から連名で名誉棄損で民事訴訟されました。組織的なスラップ訴訟(言論封じ)だと考えます」「知念実希人氏から提訴されましたので、予告通り訴え返しました。彼も多くの私への中傷を投稿して来ました」

 ウェブサイトでそう訴え、有志のカンパを募っているのは、兵庫県宝塚市の眼科クリニック「みやざわクリニック」の宮澤大輔・院長だ。宮澤氏は新型コロナワクチンの小児接種に反対の立場で、ツイッターで議論を戦わせて来た。宮澤氏は「知念氏・忽那氏・木下氏とは小児の新型コロナワクチンの是非に関して、医学的議論がしたかった」と述べているが、「医学的議論に終始していれば、名誉棄損訴訟は起こされなかっただろう」と名誉棄損訴訟に詳しい弁護士は解説する。

 宮澤氏自身がネットに上げている知念氏の訴状によると、知念氏側が「名誉棄損」に当たるとした宮澤氏の投稿は主に、「峰もTakaも知念もフォロワーが多くて有名なだけで脳みそ雑魚いんだよ料理しがいか無いの」「知念もTakaもおつむが知れてるから叩いて叩きまくったら段々みじめさが滲み出て来たね」等、医学的議論とは無関係の部分である。

 「名誉棄損訴訟は、医学的見解が違う者同士が双方の主張を繰り広げる場では無い。裁判所は証拠として出された文章が相手の名誉を傷付ける内容かどうかを判断する」(前出の弁護士)

 もっとも、宮澤氏は本名で自身の身元を明かした上でツイッターをやっている為いきなり提訴される事になったが、ネット上には匿名の、身元を明かさない数多のユーザーによる中傷も多い。これらのユーザーに訴訟を起こすには、先ず事業者に発信者情報の開示をして貰えるよう裁判所に請求する必要が有る。「裁判所が開示請求を認める時点で、該当のツイートに名誉棄損等の権利侵害が有る可能性が極めて高い」(同)という。

 にも拘らず、忽那氏の弁護士から自身のツイートが名誉棄損に当たるとして謝罪と和解金を求める書類を受け取ったユーザーの1人は、「全員提訴できるわけもなし 無視でOKだそうです」と放っておこうと呼び掛けるツイートをして、逆に大多数から心配される始末。「無視をした結果、訴訟となれば、敗訴して賠償金を支払う可能性が高い。高い勉強料と思って、二度と中傷はしないと学んでくれれば良いが」とある医療関係者は期待するが、その願いが届くか心許無い状況なのである。

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