
医師の偏在問題と僻地医療の新たなアプローチ
「地方の医療崩壊の拡大を防ぐために」
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今後、日本の医師の偏在問題は更に深刻化する事が容易に予想される。これは医療制度全体に大きな課題をもたらすだけでなく、市町村の存続にも大きな影響を及ぼす。医師が都市部に集中する事は、自然な現象であり、都市部には高度な医療設備や専門的診療科が整い、生活環境や家族の教育環境でも優位性があるため医師が都市部を選ぶのは当然だ。そこに医師の責任はない。
一方、医師不足の地域では住民の健康が損なわれ、緊急時の対応に支障が生じるなど深刻な問題が発生している。医師には「職業選択の自由」が保障されており、働く場所を選ぶ権利がある。政府や自治体が「地方に医師を派遣すべき」と求めるだけでは、医師の権利を尊重していないと受け取られ、かえって反発を招く。この背景を踏まえ、医師の職業選択の自由と地域医療を充実させるためのバランスをどう取るかが重要な課題となる。
医師の偏在を解消する為には、各自治体が医療環境の整備や給与面での優遇措置、住居や教育環境の提供、福利厚生の充実など、医師にとって魅力的な労働環境を整え、医師募集をする事が重要だ。さらに、国レベルでの協力や医療制度の改革も必要だ。例えば、僻地医療に従事した医師に対して、専門医資格の取得に有利なポイントを付与する、又は、先端医療の知識を学ぶ機会を提供するなど、キャリア形成の面でのメリットを提供する事も必要だろう。医師不足問題を声高に訴えても、医師不足に伴う過重労働や職場環境の整備不足など、依然として多くの課題が存在している限り、根本的な解決には至らない。このような環境下では、折角、地方に赴任した医師が長く勤める事が難しく、結果として医師の定着率が低くなるという悪循環を招きかねない。これだけは避けたい。今のままでは、国が取り組む僻地医療の真剣度が低いとの指摘を受けても反論の余地はない。
ここで、このような現状に対して、効果的な解決策を「是々非々」誌面で提案したい。寒村に医療施設を維持するのではなく、患者搬送インフラとして高速道路やドクターヘリなどのインフラを整え、近隣都市へ患者を迅速に搬送する体制を構築することだ。東京からの「時間的距離」で作る日本地図の発想だ。
具体的には、主要な病院と寒村を結ぶ救急搬送ルートを確保し、24時間体制でのドクターヘリの運用や、高速道路上の緊急用停車スペースの整備を進める事で、医療機関の立地に依存する事なく、重篤な患者への迅速な対応が可能となる。日常の医療にも、このインフラを活用し、僻地と病院を結ぶ循環バスを導入する事で、寒村における医療提供の課題を大きく改善出来ると同時に、僻地医療の維持負担も軽減出来る。並行して遠隔医療を取り入れる事で、僻地にいながらにして高度な大学病院の医療を受診する事が可能になる。近い将来無医村が当たり前の時代は必ず来る。しかし、無医村であろうと高度な医療へのアクセス出来るインフラが整っていれば、何の心配もない。地方自治体の首長も無医村を恥じる必要はなくなる。
医師の偏在問題は単なる医療資源の分配の問題に留まらず、地域社会全体の存続と発展に関わる重要な課題だ。医師の職業選択の自由を尊重しつつ、都市部と地方のバランスを保ちながら、全国どこでも質の高い医療を受けられる体制を構築する事は、子や孫の世代に必要不可欠な取り組みと言える。医療機関、自治体、そして社会全体が一体となった現実的な取り組みが待たれる。
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