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未来の会

同居女性に暴力で逮捕……

同居女性に暴力で逮捕……
若年女性を薬漬けにした「リタリン」医師

 また、あの男か——逮捕の報道に、以前の事件を知る者は呆れ、被害を未遂で防げた者は胸をなで下ろしたと言う。

 東京・新宿の歌舞伎町で精神科クリニック「東京クリニック」を開業していた医師の伊沢純容疑者(51歳)が3月、傷害の疑いで逮捕された。「伊沢容疑者から殴られた、と同居する女性から被害届が出ていた。捜査の過程で警視庁が伊沢容疑者の自宅を捜索した所、覚醒剤0・28gも見付かったが、伊沢容疑者は『自分の物では無い』と否認している」(全国紙記者)

 被害者の女性は伊沢容疑者のクリニックに通っていた20代の患者。捜査関係者によると、伊沢容疑者は精神的に不安定な彼女に、「睡眠薬をあげるから、おいで」等と気を引いて自宅に誘い、交際をスタートさせたという。

 前出の記者は、「警視庁には複数の女性から同様のトラブルの相談が寄せられている。余罪は相当有りそうだ」と語る。インターネットのSNSには、「伊沢容疑者のクリニックに行った所、『何か有った時の為に』とLINE交換を迫られた」「不眠の症状で行ったら、1日7種類19錠の薬を処方された。翌日、保険証で調べたのか、自宅を訪問された」等の患者と思われる人物からの書き込みが多数見付かる。

 「歌舞伎町という土地柄も有り、東京クリニックには派手で綺麗な女性が多く通っていた。本来はやっている時間に閉まっている事も有った様で、クリニックが入る雑居ビルに、女性達がたむろしているのを見掛けた」と関係者は明かす。

医師らしからぬ伊沢容疑者の素顔とは

 クリニックのホームページによると、伊沢容疑者は日本医科大卒。医師としてクリニックで診療するだけでなく、「エステサロン、ネイルサロン、フォトスタジオ、広告代理店、デリバティブ投資会社、アイドル系芸能事務所などにテナントを貸しています」と自己紹介していた。サイトでは、処方が多い順なのか、効果効能からの判断なのかは謎だが、「独自の調査の抗うつ薬ランキング」「抗不安薬・睡眠薬ランキング」も掲載。ブログでは度々テクノ系の音楽を紹介する等、薬物依存と親和性の高い内容も散見される。

 「伊沢容疑者はメンタルに問題を抱える女性達の間で、『じゅんじゅん』という愛称で知られていた。患者が欲しがる強い薬を簡単に処方してくれる事から、一部の患者からは神様の様に崇められていた」(全国紙記者)。その結果、患者の中には、東京クリニックで強い薬を大量に処方された事をきっかけに薬物依存となり覚醒剤に手を出したり、オーバードーズ(薬物の過剰摂取)で死亡したりした人も居たという。

 「じゅんじゅん」と患者からもてはやされる一方で、自身やクリニックへの批判に対しては、過剰に反応する一面も。医療機関の評判を書き込む口コミサイトでクリニックを批判する様な内容の書き込みに対しては、時に投稿者の住所や名前、疾患名、処方薬等を堂々とばらして反論する異常な面を見せていた。

閉院と医業停止を経て診療を再開したが……

 若い女性患者に手を出したり、手を上げたり、薬漬けにしたり、と悪評に事欠かない伊沢容疑者だが、実はこの「東京クリニック」は一度、閉院に追い込まれていた。

 「伊沢容疑者は1998年に医師免許を取得し、2003年に東京・西麻布でクリニックを開業した。翌年には歌舞伎町に移して診療を始めたが、07年9月に、依存性の高い向精神薬『リタリン』を大量に処方していた疑いで東京都の立ち入り検査を受けた。警視庁は伊沢容疑者が不在だったにも拘わらず、リタリンの処方箋が出ていたとして、医師免許の無いスタッフに処方箋を書かせた医師法違反(無資格医業)で立件。伊沢容疑者は罰金50万円の有罪判決を受け、東京クリニックも閉院となった」(全国紙記者)

 医師は有罪判決を受けると、厚生労働省の医道審議会(医道審)に諮られ、行政処分が検討される事になる。ところが、伊沢容疑者はリタリン事件の前に、診察室で女性患者を殴った傷害罪で有罪が確定し、07年に医業停止2年の行政処分を受けていたのだ。その業務停止処分中に今度はリタリン事件が発覚し、更に08年には交際していた元患者の女性に復縁を迫ったストーカー規制法違反容疑でも逮捕されている。

 リタリンでの医師法違反事件は最高裁まで争った。結局、14年に伊沢容疑者に下されたのは、業務停止3カ月と言う大甘な処分だけだった。この事件は社会にも大きな影響を与え、「リタリン」等の依存性の強い薬が大きく規制される事になった。

 こうして一時は医業停止となった伊沢容疑者だが、19年には「東京クリニック」を再開し、またも精神科の診療を始めた。クリニックのホームページによると、オンラインでの診療も行っていた様だが、口コミサイトでは「突然、オンライン診療を止められた」等の苦情も多くあった。一方で、「症状に合った薬を処方してくれた」等と処方に関する〝高評価〟も目立つ。

 「伊沢容疑者のやり口は、不安定な若い女性に薬を大量に処方する事で依存に追い込むと同時に、薬をエサに、交際を迫ったりわいせつな行為に及んだりする卑劣な手口。処方と引き換えに胸や太腿等体を触られたり、伊沢容疑者の性器を触らされたりしたという訴えも多い」(前出の記者)。雑誌『FLASH』の取材では〝伊沢容疑者の患者で元交際相手が〟交際中に受けた壮絶なドメスティックバイオレンスについて証言している。薬を大量に処方する医師としての顔以外に、交際相手には粗暴な面を見せていた様だ。

患者を患者と思わぬ医師を放っては置けない

これ迄に複数回の逮捕歴が有り、2回の医業停止処分を受けた伊沢容疑者だが、またも「東京クリニック」が再開され、同じ様な事件が起きる恐れは無いのだろうか。厚労省担当記者は「先ずは警視庁に寄せられている被害届や相談の内、どのくらいが立件されるかによって刑事罰が変わって来る。前科前歴が有ると判決も重くなる傾向に有り、判決が重いと医道審の処分も重くなる。傷害罪で免許取消はあまり聞かないが、医道審は医療に絡んだ犯罪を重く見る傾向に有り、今回は被害者が患者である点や薬物を利用した点が悪質と取られる可能性も有る」と解説する。

 精神科医療に詳しい専門家は、「精神科では患者と医師の関係が難しく、トラブルも起き易い。熱心に診療する事が、逆に患者の依存心を生む事も有る。不安定な患者もおり、医療者側の言葉や行動が引き金となって症状が悪化したり自死したりする事も有る。ただ、そうした問題と今回の伊沢容疑者の行動は全く別物だ」と憤る。関東地方でクリニックを営む精神科医も「薬は患者の症状を改善させる為に使うもので、依存を強める大量な処方はもっての外だ」と話す。

 3度「東京クリニック」が開業されるかは不透明だが、同院で大量処方を受けて体がぼろぼろになったと言う女性は、「二度と医者をやるな!」と吐き捨てたのであった。

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