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未来の会

【「集中」の是々非々 52 】

【「集中」の是々非々 52 】

【日本の臓器移植のお寒い現状】

「臓器移植待機の中で死を待つ人がいる」
1997年に「臓器移植法」が施行されてから27年目を迎える。移植が進まなかった中で大きな進展が期待されたが、臓器移植を待ち望む患者の方々からは失望が聞こえる。臓器移植件数は71の国地域の中で63番目(2023年時)だ。世界の先端医療技術を持つと自負する日本が63番目では、日本の医学医療の信用失墜にも繋がる。世界からも大きく取り残された臓器移植。一体、阻むものは何のか?
生前、公益社団法人日本臓器移植ネットワーク理事長だった門田守人先生とこの件で話す機会を得た。門田先生は、「期待を持って登録をしている患者さんが待機中で亡くなる事が断腸の思いだ」と語っていた。この時に、国民が正しく臓器移植の内容を知らない事が一番の原因では無いかと門田先生へ伝えたが、その後に起きたNPO法人理事による「海外臓器移植あっせん」での事件を見ると国民ならずとも医療機関も十分理解出来ていない事が裁判の中で指摘されていた。厚生労働省はこの判決で医療機関への周知徹底を計る必要を感じたのだろう。全国の基幹病院へ臓器提供事案のアンケートを取り始めた。
臓器移植法を読むと臓器移植が可能なケースを2つ定めている。

① 「脳死下の臓器提供」になっているか?即ち2回の脳死判定を受け、死亡が確定しているか?
②「心臓が停止した死後の臓器移植」だ。

並行して家族などの健康体からの提供があるが、問題は脳死判定にある事は間違い無い。遠い昔の札幌医科大学の事件を未だに引き摺っているのかと驚く。
現在の日本の臓器移植は待った無しの状況にある。
臓器移植希望者の登録数は、16,000人(日本臓器移植ネットワーク 2023年)を超えるが、年間で臓器移植が行われる件数はその3%にも満たない約400名 だ。理由は臓器移植提供者数が少ないに尽きる。
海外に比較すると極端に少ない。
日本人が募金を集め、米国に移植に行くニュースを良く見る。多くのメディアも美談的な論調で報じているが、一転、米国では「お金でアメリカ人の命を買いに来た」と言う真逆の論調がある事は報じない。今、WHOは自国内での臓器移植を完結する事を求めている。2008年の国際移植学会では「イスタンブール宣言」を発し、世界共通の認識として「臓器移植は自国内でまかなうべし」とした。
門田先生は、「アメリカや韓国のように、脳死状態の患者が出た場合に、医療機関が臓器あっせん機関へ届け出る制度を義務付けると提供者数が増加する」と話していた。日本人の死生観だと逃げるのではなく、臓器移植を学ぶ必要がある。多くの人が臓器移植の知識を付ける事で、臓器移植数の増加に繋がり、海外から非難をされる事も無くないだろう。人は物事を知ると変われる。義務教育で臓器移植について教える事で日本を救う道が広がる。

 

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2025年9月10日
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