SHUCHU PUBLISHING

病院経営者のための会員制情報紙/集中出版株式会社

未来の会

第22回 〝鈴木色〟が色濃く反映された幹部人事

第22回 〝鈴木色〟が色濃く反映された幹部人事

 2019年夏の厚生労働省幹部人事が7月2日に閣議了解され、同9日に発令された。中央省庁の障害者雇用水増し問題や統計不正問題で揺れた厚労省は、一連の問題の責任を取る形で旧労働省出身の幹部が「一掃」された一方、旧厚生省出身者は鈴木俊彦・事務次官(1983年)が留任するなど「無傷」で済んだ。鈴木氏の評価が高い職員が要所に登用されており、今回は「鈴木色」の強い人事となった。

 昨年夏の段階で次期社会保障改革に向けて、鈴木氏の留任は本命とみられていた。就任後、統計不正問題など省内で不祥事が相次ぎ、全省的な対応が遅れ留任の芽は萎んだかに見えた。しかし、問題発覚後は官邸に足繁く通い、対外的には「旧労働省の不祥事」(厚生系幹部)という整理が付いた結果、留任を勝ち取った。

 旧労働省出身者の幹部は軒並み刷新された。宮川晃・厚生労働審議官(83年)は退任し、定塚由美子・官房長(84年)は人材開発統括官に「降格」の憂き目に遭った。次官級となる宮川氏の後任には、定塚氏よりも入省年次が若い土屋喜久・職業安定局長(85年)が抜擢され、省内では驚きをもって迎えられた。

 旧厚生系では、随所に鈴木色の人事が伺える。政策統括官にはお気に入りの伊原和人・大臣官房審議官(87年)が登用され、鈴木氏と社会保障改革を二人三脚で進めるとみられる。官房長は土生栄二・総括審議官(86年)を登用し、官房総務課長は間隆一郎氏(90年)を留任させることで、官房ラインは厚生系で固めた。また、統計不正問題で官邸とのつなぎ役を担った鹿沼均・保険局総務課長(90年)を会計課長に登用した。

 局長級では、診療報酬改定や医療保険制度の見直しで注目される保険局長には、手堅い仕事ぶりが評価される濱谷浩樹・子ども家庭局長(85年)を据え、後任に保険局長時代に鈴木氏に仕えた渡辺由美子・大臣官房審議官(88年)を抜擢し、地域医療構想の実現に向け仕事が残る吉田学・医政局長は(84年)は留任させた。

 一方、鈴木氏の同期の樽見英樹・保険局長は、医薬・生活衛生局長に「左遷」された。この人事について、ある大手紙記者は「妊婦加算が見直しにまで発展したのは樽見氏の根回し不足だと、鈴木氏は見ていた。元々同期で仲が悪かったこともあり、見せしめのような人事にしたのでは」と推察する。もう一人の同期である木下賢志・年金局長は、次官級の内閣官房地方創生総括官に転じた。

 次期事務次官レースは、吉田氏、濱谷氏が中心になるとみられる。ある労働系幹部は「当面、旧労働省出身者が事務次官になることはないだろう」と断言する。

 医系技官人事では、鈴木康裕・医務技監(84年)は留任し、健康局長には宮嵜雅則・生活衛生・食品安全審議官(87年)が就任し、医務技監候補となった。診療報酬改定を担う森光敬子・医療課長(92年)は留任した。薬系技官では、医薬品医療機器等法改正案が継続審議となった影響で、森和彦・大臣官房審議官(83年)の留任が決まった。

 今回の人事は、鈴木氏の意向が色濃く反映された形になった。「鈴木氏の保身を考えた人事だ」。マスコミの間ではこのような評価が大勢を占めているようだ。

LEAVE A REPLY

*
*
* (公開されません)

COMMENT ON FACEBOOK

Return Top